暁の水平線に勝利を刻めるか   作:ジャーマンポテトin納豆

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第83話

 

 

南洋諸島奪還の為の作戦、る号作戦の発動が決定されて3ヶ月が立つ。

既に誘導爆弾の量産体制も整い、前線部隊から順次配備と訓練が進められている。

もう2週間すれば訓練が終了し、備蓄に全力を注ぐことが出来る。

 

今も備蓄は進めているが、各前線飛行場には40機分の全力出撃5回分程度しか誘導爆弾の備蓄は無い。

大きな効果を発揮する為には、命中精度の低さを補うしかない。

その為には数を撃たねばならないから、これでは到底足りない。

 

既に南洋諸島の敵飛行場から出撃してくる重爆と熾烈な航空戦が展開されている。

被害も小さくは無く、連日数十機程度が撃墜されて搭乗員達が二式大艇の救助を待つことになっている。

 

ここまで被害が拡大している理由は敵の重爆に護衛戦闘機が就いている事が理由だ。

重爆だけが相手ならば震電にしろ陣風にしろ、迎撃による大きな効果を期待出来るが、そこに護衛戦闘機が加わるとなれば話は変わってくる。

ではどこからこの護衛戦闘機が出てきているのか、という話だ。

 

まず前提として、南洋諸島からだと敵味方問わず例え最も近い飛行場までだとしても航続距離は足りない。

敵の軽空母か、或いは正規空母2乃至3隻を基幹とした艦隊が行動している兆候がある。

恐らくはその艦隊から護衛戦闘機を出して、爆撃機に就けているのだろう。

これが思いのほか、我々を苦しめているのだ。

 

なんせ重爆だけでも100機、200機だとかのレベルであるのに護衛に就いている戦闘機の数がまた同じぐらいの数なのだ。

確かに全ての震電や陣風の数を合わせれば戦闘機の数ではこちらが勝っているだろうが、そうもいかない。

各飛行場に分散しているから、同時攻撃は難しい。

 

飛行場や物資を大量に備蓄してある倉庫などの被害は馬鹿に出来ない。

爆弾が1発倉庫に直撃するだけでも計画の微修正などは免れられないのだからな。

幸いにも継戦能力に大きな打撃は出ていないのが救いであるが、それも運が良いだけの話で、いつまで続くか分からない。

 

それ以外にも悩みの種はある。

ここ最近になってインド洋方面での敵の動きが活発になり始めたことだ。

敵の艦隊もそれなりの規模が活動しているらしく、通信量も増大している。

地上部隊の移動なども活発になっているらしく、警戒大、としている。

どうやら中東やアフリカからインドやビルマ、マレー半島に航空機を中心とした戦力を大規模に送り込んでいるらしい。

 

地上部隊の動向も探った結果、どうやら一定以上の増援を受けていると言う事は分かった。

とは言えその増援が防衛用兵力なのか、或いは攻勢目的の為に集められたものなのかは判然としない。

と言うのも輸送船の数を照らし合わせてみると、インド方面やビルマ、東南アジア方面の通信量が攻勢を目的としているには少ないからだ。

その地点に所在する部隊の数や規模が増えれば増えるほど、通信量が増える傾向にある。

 

それと比べて、どうも通信量は確かに増えているが、とは言え攻勢を企図している、とも断言出来ない程度の増量なのだ。

だからこちらも断定出来ないでいる。

 

増援されている地上部隊も確かに厄介だが、特に厄介なのはアンダマン・ニコバル諸島の敵飛行場と、そこに展開する敵機だろう。

なんせB‐29が進出し始めてからはスマトラ島全域が爆撃の被害に晒されているのだ。

ただでさえ大陸方面、マレー半島からの規模は大きくないとは言え時折攻撃に晒されていたのに、そこにアンダマン・ニコバル諸島の敵が加わったのだから溜まったものでは無い。

旧ベトナムなどの沿岸部からも通商破壊の為に敵機が南シナ海に現れ始めているのだ、早急な対策が必要となるのは間違いない。

 

今はまだ目立った損害も出ていないが、それが何時まで続くか分からない。

我々は敵に2正面作戦を強要されつつあるのが今の現状である。

 

しかもインド洋にはスリランカ、モルディブ、ディエゴ・ガルシア島を根拠地として4個ほどの空母や戦艦を3隻づつぐらいを含む有力な艦隊が展開しつつあるとの情報もある。

規模を考えると、スマトラ島や大小スンダ列島近海に展開しての通商破壊か、或いは飛行場や駐屯地への攻撃だろう。

どうやらチェンナイ辺りにも艦隊が既に展開しているらしいが、正確な規模などは分からない。

現在は展開する基地航空隊だけでも対処出来ているが、その内戦力増強に迫られるだろうから、スラウェシ島やニューカレドニア島などの前線よりも後方となる辺りから引き抜く事を検討しておかねばならないかもしれない。

 

本土でも陸軍航空隊の錬成や編成は進んでいるが、それだけで足りるかは分からない。

取り急ぎ既に増援要請が届いているし、1個飛行戦隊づつをカリマンタン島、スマトラ島に増配する手配をしておこう。

パラワン島とリアウ諸島がシーレーン防衛の要衝でもあるし、次点での優先配備先だな。

 

取り急ぎ、南洋諸島を奪還し終えたらば大陸東南アジア方面に対する根本的な対処を考える必要があるだろう。

連山による空襲か、艦隊を出して敵艦隊ごと纏めて撃滅してしまうかのどちらかになる。

戦線の無闇矢鱈な拡大は望ましくないから、奪還まではしないだろう。

あくまでも今現在の我々の主戦線は太平洋だから、インド洋にまで奪還地域を広げられるほどの余裕は無い。

 

だったらさっさと太平洋地域の奪還に全力を注いで、それから取り掛かればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「物資の備蓄状況は?」

 

「各地に最低要求量の備蓄は達成しています」

 

「当初の想定よりも少ないな。やはり敵潜の活動が活発化しているか」

 

「はい。輸送船の被害は南方地域全域の奪還を果たす前に近くなっていますね」

 

霧島がクリップボードから報告書を何枚か取り出し、執務机に並べてくれる。

そこに書かれている数字は半年前の輸送船の被害と今現在の被害を比べたものや、物資の備蓄状況を各物資事に詳細に書き記したものだ。

 

霧島は腕っぷしもさることながら、書類仕事や事務仕事も卒なく熟すから有難い。

 

「どれぐらいの敵潜が展開していると想定される?」

 

「ニューギニア、ソロモン、フィジー・サモア方面にそれぞれ最低でも3個潜水艦隊、現実的なところを見ると5個潜水艦隊は居るものと想定されます」

 

「随分な数だな、ローテーションも考えればもう2個潜水艦隊は後方にあるだろうな」

 

「戦術は群狼作戦を基準にしていますね。一度輸送船団が発見されて電波を発されれば、数十隻の敵潜に囲まれることに」

 

「こちらはどれぐらいの撃沈戦果を挙げている?」

 

「今月は14隻、先月は11隻でした」

 

「こちらの被害に比べてあまり成果らしい成果は挙げられていないか……」

 

「戦力の問題もあって潜水艦狩りを行えませんから仕方が無いでしょう。護衛艦隊の各空母からの対潜哨戒とそれと連携した水上艦艇による対潜戦闘しか出来ませんから」

 

霧島と会話し、腕を組んで考える。

対潜兵装自体は新式のものを優先して護衛艦隊に配備しているから、単純な装備と練度における対潜攻撃能力は高い。

だがどれだけ練度や装備で優れていても護衛艦隊に属する艦艇がカバーしきれる範囲を超える数で襲われれば一溜りも無いのは明らかだ。

 

 

元々投入戦力が少ない事から集積しなければならない物資量も今までの作戦に比べて少なく済むことが今回の作戦の唯一の良い所ではあった。

 

しかし敵は潜水艦隊を大規模に投入して、こちらの物資集積だけでなく特にオーストラリア以東に対する補給線へも攻撃をしている。

護衛艦隊は頑張ってくれているが、各地への補給量に加えて作戦用の物資の輸送は正直間に合っていないと評価せざるを得ない。

 

この備蓄量ならば、作戦を発動することは可能だが、あくまでも想定外の事態、例えば戦闘の長期化などが怒らなかった場合にのみ作戦を完遂することができるという程度の量だ。

だから何か問題が発生すれば作戦を遂行することが出来なくなるのだ。

 

「霧島、もし第1機動艦隊から護衛艦隊に戦力を出すとなったら、どれぐらいの戦力を出せる?」

 

「……空母1隻か2隻に護衛の巡洋艦を2~3隻、2個駆逐隊が限界でしょう。それ以上は予想される1機艦の戦闘行動そのものに影響が出てしまいます」

 

「作戦発動日時に影響はあるか?」

 

「まだ1か月は猶予がありますから、損傷さえ受けなければ2度の船団護衛ならば整備を考えても影響はありません。博打ではありますが」

 

確かに霧島の言う通りだろう。

 

もし敵潜の魚雷を食らったら修理に1か月は掛かる。

そうなれば修理が完了するまで作戦参加は見送りになってしまうだろう。

 

 

 

 

「グラーフとプリンツ・オイゲン、足柄、由良を呼んでくれ」

 

「了解しました」

 

俺は船団護衛に1機艦から戦力を出すことに決めた。

 

 

「Admiral、グラーフ以下3名招集に応じ参じた。用件は?」

 

「君らには船団護衛任務に加わってもらう」

 

「私達が、ですか?」

 

「あぁ、護衛艦隊の手が足りないのと、輸送船団にかなりの被害が出ている。それを補う為に君らの力を借りたい」

 

「ふむ、了解した。しかし我々だけか?」

 

「いや、2個駆逐隊を随伴させる」

 

「了解した。他には何かあるだろうか?」

 

「敵情の情報も伝えておく」

 

敵の主な編成や規模を伝えておく。

駆逐艦8隻は浦風、初雪 浦波、夏雲、村雨、時雨、綾波、朧を選抜した。

 

次回の船団護衛任務から参加し、次々回の船団護衛までを参加期限とする。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

12名が船団護衛任務に加わり、一定以上の成果を出している。

どうやら80機近い艦載機を載せられる正規空母と晴嵐を3機づつ搭載する重巡が数隻加わるだけでも全く違うらしい。

 

グラーフツェッペリンは改装によって搭載機数が83機にまで増えているから、その分活動の幅が広がる。

 

グラーフ・ツェッペリン

陣風38機 流星38機 彩雲7機

 

晴嵐は空母を除く艦艇の主力搭載水上機となっている。

速力もフロートを付けた状態で537km/h、フロートが無ければ611km/hにまで達するほどの最高速度に最大爆装量が1.5tにもなるペイロードの優秀さもある。

専ら対潜警戒、対潜攻撃、索敵任務か観測任務に従事し、夜間砲雷撃戦時に照明弾を搭載し、投下するぐらいだからペイロードの量はそこまで発揮されている訳では無い。

 

とは言えその優秀さは際立っており、空戦を除けばほぼ全ての任務に従事出来る事と、操縦性や整備性の向上、生産性を考慮した設計で搭乗員達には好評だ。

水上機基地に配備されている機体は水上機基地の規模によって分かれるが、二式大艇か晴嵐のどちらかである。

 

「戦闘詳報です」

 

「ご苦労……、輸送船の被害は3隻に抑えられたか。上々だな」

 

「はい、これならば必要備蓄量を確保出来ます」

 

「次の船団護衛任務が終わり次第、護衛艦隊は即座に入渠、点検整備を済ませて出撃準備を整えられる手筈を整えておいてくれ。帰港から作戦開始まで2週間しかない」

 

「了解しました」

 

榛名に諸々の必要書類を渡して工廠や補給関係の方に準備を整えておくように向かわせる。

これで何か重大な問題が無ければ、護衛艦隊は作戦参加に問題を抱えなくて済む。

 

陸軍の方は準備が整っているし、あとは出撃を待つばかりである。

陸戦隊の方も含めて

既に各地で待機済みだ。

 

カロリン諸島、トラック諸島、ポーンペイ島に対する作戦に参加予定の兵力はニューギニアで待機中。

マーシャル諸島、ウェーク島への部隊はソロモン諸島で。

ギルバート諸島に対する部隊はフィジーとサモアで待機している。

 

1機艦が先んじて出撃し、敵艦隊が出てくればそれらを排除して制海権と制空権が確保されれば、各地から上陸部隊が出撃、渡洋して上陸する流れとなる。

 

 

 

 

 

それから護衛艦隊が輸送任務を果たし、必要な物資を各地に備蓄することが出来てから2週間後の真夜中。

2400丁度に1機艦が瀬戸内海から出撃し始めた。

 

第1、第2護衛艦隊の両方は1機艦の後方で敵地への上陸戦を行う海軍陸戦隊を載せた200号型輸送艦や神州丸などを筆頭とした強襲揚陸艦を守りながら進んでいる。

各地に送り込まれる海軍陸戦隊はその兵力こそ海岸保の確保を主目的としていることから、1個連隊や場合によっても2個連隊程度であるが、その実、歩兵だけでなく各種兵科を含んでいるから1個連隊辺りの実際の兵力は5000名程の強力な兵力を有している。

 

しかも各種上陸戦と言う敵前に対しての殴り込みと言う一番苛烈な戦闘を想定しての訓練を積んでいる陸海軍双方の陸上戦力の中でも一際特殊な立ち位置の部隊だから、その練度や士気などは比べるべくもないほどに高い。

 

 

戦車600t

 

戦車用燃料 10t

 

弾薬 10t

 

糧食 20t

 

真水 12t

 

その他軍需品 12t

 

第200号型輸送艦が運べる物資の量は以上の通りで、戦車だけでなく戦車を積載しなければ歩兵を載せることも出来る。

 

第200号型輸送艦は、1隻で12両と戦車乗員60名を載せられる。

艦内は主に機関室、格納庫、弾火薬庫、倉庫、居住区、艦橋、前部甲板、後部甲板に分けられる。

格納庫は上下2段に分かれており、艦内に戦車を全て格納出来るようになっている。

甲板には対空機銃と対空機関砲、それに物資を積み下ろしする為のクレーン1基、40mm4連装機関砲を前後甲板に1基づつ、25mm3連装機銃を環境の左右に片舷2基づつ、同単装機銃を片舷1基づつ、20mm4連装機関砲を片舷2基となる。

他には対潜ソナーと対戦爆雷投射基を2基備えている。

 

 

 

1個戦車大隊 第200号型輸送艦5隻

 

パンター戦車1中隊12両×3中隊 36両 

Ⅴ号弾薬運搬車    12両

自走式迫撃砲     15門

迫撃砲指揮車      3両

 

兵員 約360名

 

 

1個歩兵連隊 輸送船2輸送艦5隻

 

装甲兵員輸送車  40両

自走式迫撃砲   10両

重迫撃砲     10門

軽迫撃砲     50門

トラック     20両

ジープ      30両

オートバイ    12両

ケッテンクラート 12両

兵員 約3000名

 

 

1個砲兵大隊 輸送艦5隻

 

フンメル自走榴弾砲1中隊12両×3中隊 36両 252名

 

砲兵観測小隊   50名

オートバイ    12両

ケッテンクラート 12両

Ⅴ号弾薬運搬車  10両

人員 約400名

 

 

1個対空戦車大隊 輸送艦7隻

 

88mm自走対空砲 12両

ヴィルベルヴィント 12両

オストヴィント   12両

クーゲルブリッツ  12両

Ⅴ号弾薬運搬車   15両

人員 約500名

 

 

1個整備大隊 輸送艦4隻

 

整備機材多数

約300名

 

 

1個工兵中隊 輸送艦10隻

 

Ⅴ号架橋戦車  4両

Ⅴ号開削機   4両

Ⅴ号引揚機   4両

ベルゲパンター 15両

ブルドーザー  10両

トラック    20両

工兵      約200名

約350名

 

 

1個輜重小隊 輸送船3隻

各種物資多数

物資運搬用特大発動艇 20艇

特大発動艇操縦要員(予備員込) 25名

機銃員(25mm機銃2艇を装備の為)40名

輜重隊本部50名

 

計135名

 

 

 

 

陸戦隊の基本兵力はこの通りである。

以前よりも兵力が膨らんでいるが、陸軍の連隊も同じような編成でここに自走対戦車砲中隊が加わる。

 

新しく配備されているⅤ号自走迫撃砲と迫撃砲指揮車は、Ⅴ号戦車の車体に12cm迫撃砲を載せたものと、迫撃砲の射撃観測装置を載せたものだ。

単純に戦車を支援する為の火力として、他の迫撃砲などだと人力で運んだり、或いは牽引であるとかで運ばねばならない。

牽引式でも良いのだが、足場が悪い状態だと戦車と行動を共にし辛いし、かと言って全く砲兵頼りの支援砲撃だと柔軟性が薄い。

 

だったら余っているパンター戦車の車体に必要なものを載せてしまえ、と言う事で開発されたのが2種の車両である。

 

実は3か月前に、パンター戦車の砲塔を作っている工場が幾つか空襲で吹き飛ばされて更地になってしまったのだ。

作られるはずであった戦車の為に、車体を量産していた各工場には、砲塔が無くてどうしようもないパンター戦車の車体があちこちの倉庫に300両分ほどが放置されていたところ、それをどうするかとなって、結果的にⅤ号自走式迫撃砲と迫撃砲指揮車が開発されるに至った。

 

開発期間はまさかの2週間。

製造自体は砲塔部分をベルゲパンターのように切り取って、そこに迫撃砲と砲弾を載せれば良いだけの話だったから、扱い易いように幾らか工夫を凝らしただけで、急造品ではあるが実際はかなりの威力と効果を発揮している。

 

 

 

 

これだけの兵力を移動させるのに、合計で41隻もの輸送船と輸送艦が必要になる。

輸送艦の数が多いのは基本的に輸送艦で運んだ方がそのまま上陸させられるからだ。

 

輸送船からだと、まず甲板に上げて上陸用舟艇に載せ替えて、海に降ろして、そして漸く乗員が乗れると言う面倒で、しかも波で安定しないと言う危険な状況下でやらねばならない。

その手間や危険性を考えると輸送艦の数を揃えてそのまま海岸に突っ込んだ方が楽で安全なのだ。

 

輸送船は専ら各種物資の輸送や歩兵などの兵士を運ぶ。

輸送船と言ってももっと詳しく言うならば、兵員輸送船と言うもので居住性ある程度の居住性などを考慮して設計、建造されている。

運べる人数は各人の装具類や武器、上陸時に持って行かねばならない弾薬や爆薬、航海中に必要な水食料類なども積まねばならなく、被弾や被雷時の避難等を考え1隻辺り1300名程度となる。

狭い船内に押し込むのは衛生的にも安全面としても宜しくないので、ギリギリの人数がこの約1200名と言う数になる。

 

それでも2隻用意すれば歩兵を2600名は運べるのだから十分だ。

 

 

瀬戸内海から1週間、フィリピン、パラオを経由してカロリン諸島の攻略に取り掛かった。

陸戦隊の上陸時に若干の抵抗があったものの、損害らしい損害も無く海岸保が確保されるとニューギニアに待機していた陸軍部隊が次々と各地で上陸を開始した。

どうやら敵は地上兵力を幾らか残してその殆どを撤退させたらしく、特に問題らしい問題も起きずに2週間ほどで完了となった。

 

続いて攻略に取り掛かったのはトラック諸島とポーンペイ島だった。

こちらには兵力を集中させて、各島に堅固な防御陣地を築いていた。

 

陸戦隊の上陸前から、海岸に向かう大発や輸送艦の周りに水柱が立つぐらいの抵抗があり、上陸の際も損害が出た。

艦砲射撃と航空機での支援ですぐにその砲火は沈黙したがどうやら、早まった敵の攻撃らしく、思えば確かに組織的に攻撃をしたかと言われると疑問の残る攻撃であったから納得が行く。

それでも陸戦隊が海岸保を確保し、陸軍が内陸に進もうとするとかなりの抵抗があり、掃討戦が終わるころにはトラック諸島とポーンペイ島合わせて戦死者613名、戦傷者1062名となった。

 

続いてマーシャル諸島の奪還が進められ、こちらは順調に問題無く完了となった。

 

 

 

最後にギルバート諸島の奪還に取り掛かったが、こちらでは海戦が勃発した。

海戦と言っても敵基地航空隊と潜水艦による攻撃だった。

脅威度は中々に高く、敵機が注意を引き付けている間に敵潜水艦隊が陣形内に侵入、攻撃が行われリシュリュー、ビスマルク、榛名、武蔵の4隻が魚雷を1~2本食らって中破するに至った。

それでも艦載機による対潜爆弾の投下や駆逐艦などによる潜水艦狩りが始まり10隻ほどの撃沈が確認され、残りの敵潜は逃げて行った。

 

 

 

双眼鏡で覗くと、陸戦隊の皆が次々と浜辺に雪崩れ込む様に上陸していく。

装備は鉄帽と小銃、予備弾倉を入れた弾倉入れ、水筒、携帯猿臂、救急治療用のセットが纏められたポーチのみを付けているだけだ。

 

陸戦隊はその性質上、上陸戦時はなるべく軽装であることが望まれる。

自身が乗っている大発が沈んだり、などと言う場合によっては海を泳がねばならない必要性も出てくるしなにより海岸での戦闘は遮蔽物が少なく素早く動ける事が何よりも重要だからだ。

そこに色々と詰め込んだ背嚢などは邪魔以外の何物でも無い。

 

だから可能な限り歩兵は軽装であるのだ。

 

「敵の抵抗は殆どありません」

 

「ギルバート諸島は小さく平坦な島ばかりですから、艦砲射撃と爆撃で殆ど片が付いたのでしょう」

 

「まぁ、犠牲が少なく済むのならそれに越したことは無い」

 

「仰る通りです」

 

ギルバート諸島の奪還を終え、各地に防衛用の駐屯部隊と陸軍航空隊や水上機を配備して艦隊は本土へと帰還する。

損傷艦は速やかに入渠し、陸戦隊は兵員の補充や訓練となる。

 

 

 

 

 

 

 

さて、しかしこれで一息吐ける訳では無い。

 

寧ろ重大とも言える問題が幾つかある。

 

1:インド洋方面での敵の動きが活発になっていること。

 

2:ハワイ方面で大きな動きがあること。

 

3:北米大陸から発されたと思われる微弱も微弱、探知出来たことが不思議なぐらい弱弱しい電波を探知したこと。

 

4:ユーラシア大陸方面での敵の動きが活発化しマリアナ諸島だけでなく、大陸からも爆撃機が襲来し始めたこと。

 

以上の4つが主な重大問題となる。

 

この大きな問題を短期間に解決する為には今まで以上の、圧倒的とでも言えるほどの労力と犠牲が必要となってしまう。

先ず第一にその労力と犠牲に見合う何かを得られるのか、現実的に遂行可能な作戦の立案が可能であるかどうかと言う観点で見れば、インド洋方面での何かしらの作戦か、或いはハワイ諸島の奪還作戦であろう。

 

北米大陸の件は太平洋全域の安全が確保されない限りは距離があり過ぎてどうやっても、我々に打てる手立ては無いのだ。

ユーラシア大陸に関しても、飛来してくるのが内陸部からだからそこまで進まねばならないがそんな力は無い。

それどころか今のように陸軍戦力を恒常的に失い続けなければならなくなり、補充なども困難になるであろうことは軍上層部だけでなく、末端の兵卒ですら誰もが承知の上だ。

更々その様な気は毛頭無いと断言するが、もし大陸への攻勢をしようとしたら、俺であっても大反発を食らうのは間違い無い。

 

 

戦線の無駄な拡大は防ぐべき、補給の維持や現状投入可能戦力、と言う事を考えればインド洋方面への作戦は控えるべきで、必然とハワイ諸島の奪還作戦が現実的なところであろう。

しかしここで懸念点が一つ。

 

我々はマリアナ諸島を全く奪還出来ていないのである。

俺を含めて、陸海軍がマリアナ諸島への奪還作戦を発動するのに忍び越し、渋っているのには明確なワケがある。

 

と言うのも、マリアナ諸島は幾つもの大きな島があり、そこには大きな飛行場が多数存在する。

B‐29は勿論の事、戦闘機や攻撃機が少なくとも1000機近くは存在していると見積もられ、敵艦隊の規模も空母10隻、戦艦10~15隻と大きい。

航空戦力だけでB‐29が常に500~600機配備され、単発機が1000機前後、空母の艦載機が最大で800機。

全て合わせればどうやっても2500機は下らない。

 

これだけでも十分に厄介極まりないのに、各島々には15万を上回るであろう守備隊が存在している。

しかもその島々は堅牢な要塞化されており、こちらは予備兵力含めて60万は用意せねばならないと言う試算すらあるほどだ。

 

 

航空偵察でも分かるぐらい野戦重砲や戦艦クラスの要塞砲、高射砲、高射機関砲、対空機銃もたっぷり配備されているし武器弾薬や水食料燃料、医薬品などの備蓄も十分、堅固な守りに包まれているだろう。

装甲に守られているだろう要塞砲などは戦艦の砲撃や爆撃でも破壊することは叶うまい。

 

こんなバケモノを相手にしなければならないとなれば、事を急いでは無駄な犠牲を出すのは確実であろうから、奪還するまでに1年程度は確実と見ておかねばならない。

以前、マリアナ諸島奪還を検討する為に要塞と上陸した部隊での対抗演習を行った事があるが、艦砲射撃の段階で要塞内に格納された重砲などは一切無傷であったし、それによって上陸した部隊が壊滅すると言う結果が出た。

 

このマリアナ諸島を奪還し、更にミッドウェー諸島を奪還しない限り我々がハワイ諸島に歩を進めることはどうしても叶わないのだ。

ミッドウェーを飛び越しても良いのだが、そうなると我々は側背を突かれる危険性があるし、何より前哨基地無しでハワイ奪還を成功させなければならなくなる。

ミッドウェーの敵航空戦力は無視出来る規模ではないし、索敵哨戒線も広くハワイの北西側を広くカバーしていることもあるし、潜水艦ぐらいなら停泊出来る程度の環礁でもある。

 

これを無視して一足飛びにハワイ、となるならばハワイ駐留の敵艦隊やハワイを守る守備隊、それらが立て籠もる要塞と合わせてかなりのリスクを背負わねばならなくなる。

今の我々に果たしてそれだけのリスクを背負って尚、勝てる力があるかは疑問だ。

 

今我々が考えるべくは、マリアナ諸島攻略は現実的なものであるか、インド洋方面は艦隊を出さなければならないのか、この2つをよく考えなければならない。

ユーラシア大陸と北米大陸に関しては手出しが出来ないので、爆撃には震電による迎撃で対応するしかない。

 

 

 

 

 

 

「さて、諸君集まって貰ったのはマリアナ諸島作戦の検討、インド洋方面への対応を考える為だ。中代大将や陛下からは決定は委ねる旨を頂いている」

 

陸海軍の戦術、戦略レベルの人間を30人ほど集めての会議だ。

 

「陸軍としては、敵のマリアナ諸島における要塞の無力化が現実的で無いのならば、反対です」

 

「海軍としても要塞砲と撃ち合わねばならない必要上、不利なのはこちらですから、無力化する手段が確定的でない限り作戦を実行するのは反対です」

 

「敵要塞の無力化さえ行えれば良い、と言う事でしょうか?」

 

「え、えぇ、その通りです」

 

「安直ではありますが、島全域に煙幕を張ってしまうと言うのはどうでしょうか?」

 

「煙幕を張る?」

 

「えぇ、艦砲射撃や空爆で煙弾を叩き込むのです。そうすれば少なくとも直接照準射撃は不可能ですし、煙幕の中にアルミ箔を混ぜれば対地砲撃にも電探の活用が出来なくなります」

 

「なるほどな……」

 

確かにそれならば、射撃電探の開発が双方ともに遅れている地上戦ならばこちらが有利になる。

 

「それではこちらも電探射撃が出来なくなるが?」

 

「そこは今まで通り直接照準射撃でやれば良いかと。島の地形は航空偵察や潜水艦による偵察である程度判明していますし、自ずと敵砲の配置位置も判明する筈です」

 

「……陸軍はこれをどう思うか」

 

「我々としては、海軍側が実行可能である、と言うのならば……」

 

「技研本部、戦艦級の煙弾の開発は可能か?」

 

「可能です」

 

「それならば、結論は決まったな」

 

技研本部から出向してきている技術者に聞くと、頷く。

実際問題、煙弾の開発が達成出来なければ第一歩にすら立てない。

 

取り合えずそれはクリア出来そうであるから、一安心だ。

 

マリアナ諸島への奪還作戦の実行が決定され、それに向けて準備を進めることとなった。

 

 

内心で実行可能な作戦が立てられつつあることに安心していると一人が手を上げる。

彼は砲術畑を歩み続けて来た東間大佐である。

砲撃のスペシャリストとでも言うべきで、電探射撃から航空機による弾着観測射撃、直接照準射撃、対空射撃に至るまで全ての射撃の指揮を執らせれば抜群と言う人物だ。

 

「提督、提案があります」

 

「どうした?」

 

「戦艦用の煙弾は不要と考えます」

 

「ほう、それはどうしてだ?」

 

「戦艦の主砲射撃速度はどれだけ頑張っても1分間に2発か3発撃てれば良い方です。これでは効果的に煙弾で遮る事が出来ません」

 

「ではどうする?」

 

「巡洋艦、駆逐艦、それと航空機を主体として煙幕を張るのです。そうすれば最も攻撃力のある戦艦の主砲を対地攻撃に使えます」

 

「兎に角数を撃ち込んで、視界を継続的に奪おうと言う事か」

 

「はい。一番の打撃力をその分攻撃に全て割り振れますし、その方が効果的かと考えます」

 

「……良し、それで行こう。だが最初の煙弾は戦艦に撃ち込んでもらう必要がある。あんな要塞に巡洋艦はおろか駆逐艦達を近付けるわけには行かん」

 

「分かりました」

 

「技研は早速戦艦用の煙弾の開発に取り掛かってくれるか」

 

「了解しました」

 

これより次々とより具体的に、現実的に作戦が練られることとなる。

 

 

 

 








ジャーマンポテトin納豆
@potatoes_naato
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