【4コマ小説】死んだVtuberと異世界と。   作:ケータリング

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バタークッキー400グラム食べたら死にそうになりました。


-4点 主人公として自己紹介するタイミングがない

 黄金色の結界が崩れていく。大地が浮き上がる。

 元の島へと戻ってきたようだけど、様子がおかしい。

 巨大な頭が海の向こうからせり出してきて、大きな唸り声をあげた。亀?

 どうやら島全体が一匹の海亀だったようだ。やばいな。

 またスマホが振動する。

 封印は安全に解除されました。使い魔として契約できます。契約しますか。“はい”/“いいえ”。“はい”を選択。

 

「また勝手に何をやっているんですか」

「ごめん、つい」

「気をつけてくださいね」

 ゲームの説明は読み飛ばしちゃうタイプなんだ。実況するときは読むけど。

 どうやら、祠によってこの亀は封印されていて、封印の番人が突破されたのでこの亀は自由になりました、ということだ。そもそも何で封印されていたんだろう。危険な肉食獣だったりするのだろうか。

 海亀が僕の方へ頭を向けて、一声上げる。

 

「契約してくれたのかな?」

「そうみたいですね……」

「なんか実写版ガメラみたい」

「実写版じゃないガメラとは?」

 プラティは僕を抱えたまま、ゆっくりと海亀の背中に降りる。背中には木々が生えたままだけれど、砂浜だったものは海の中へと流れ落ちていく。

 海亀は何かコミュニケーションを取ろうとしているのか、僕の方を向いて声を上げています。しかし何を伝えたいのかが分からない。スマホを向けても、海亀の言葉を理解できる便利な翻訳機能はないようです。

 

「あー、なるほど。マスター……この子は、どこに行きたいのかを聞いているみたいです」

「プラティ、海亀の言葉が分かるのか?」

「いや分かりませんけど……」

「おい」

「……けど。ニュアンスで分かります。誠心誠意心を通わせようとすることが大切なのですよ」

「元々、僕は感情の機微には疎いんだ。マーメイドになって、そういう特殊能力も手に入れたのか? まあいい。行先を聞いているのか。そうだなあ、人の居る場所を知っていたらそこへ向かって」

 海亀は通じているのかいないのか、こくりと一つ頷くとゆっくりと動き出した。どこへ向かうのかはわからないけど、僕よりはこの亀の方が海のことをよく知っているはず。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「名前を付けましょう」

「何の?」

 海亀に乗って移動している最中、プラティが突然に発した言葉に耳を傾ける。今は海亀の首に近い、少し高くなっている剥き出しの甲羅に座っていた。何と言ってもこの大海亀が揺れるたびに、背中から土が零れ落ちていくのでここ以外は危険だ。頭の上が見晴らし良さそうだけど、見ている間にも大きく揺れている。

 

「この海亀の名前です」

「名前、いる?」

 なんとなく海亀の顔の方を見るけれど、特に反応はない。

 

「封印されていたんだから元々名前があるかもしれないじゃん。アクーパーラ*1とか」

「そんなたいそうな名前はついてないと思います。どうなんですか?」

 プラティが海亀に話しかけると、海亀はぶふうと息を吐いた。この反応はどうなの?

 

「知らないみたいです」

 そっか。

 

「名前を付けても多分呼ぶことないしなあ。会話しないし。それよりも名前の話で気がついたんだけど、この世界に同郷の人っていないよね?」

「そう? ……まあそうですね。それがどうしかたんですか?」

「いや、僕もニックネームみたいなものをつけた方がいいのかと思って。その方が目立たないでしょ? この世界では」

「目立ちたくないんですか? 配信者やってた人とは思えませんね……」

「思ったより危険な世界みたいだから。それにほら」

 スマホに表示されているよく分からないアプリケーションのアカウント。その設定画面に表示されている言語は、僕には読めなかった。設定には特別な言語、というよりこの世界の言語が必要なのだろうか。自分の名前を入力できない。

 

「マスター? ……確かに名前は必要ですね。どうしましょうか」

「僕は読めないから、プラティが決めて。僕の名前を一番呼ぶことになるのはプラティかもしれないし」

「マスターはマスターですが。“ヴァリアタス”というのはどうでしょうか」

「一瞬で決めたな。もしかして、前から考えていたの? 名前の意味はどう?」

「ただ直訳しただけです」

「奇跡だな。それなら以降はそれで。僕はヴァリアタスを名乗ろう」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 海亀の上でスマホを見ていて、一つ考えが思い浮かぶ。

「そうだ。プラティ、スマホから武器も買えるんだけど、何がいいかな」

「誰の武器ですか」

「僕の」

 プラティは自由自在に魔法が使えるんだし、必要ないと思う。

「どんな武器ですか」

「銃とか、爆弾とか?」

「必要ないです」

「そう? でも自衛できるくらいには」

「ないです。マスターが私の動きに目だけでもついてこられるのなら持っていた方がいいですが、現状ではただの的です。武器を持っていた方が狙われやすくなるのでやめておいた方がいいと思います。今のマスターはVtuberでもないのにAKMなんて必要ありません」

「そっか」

 結構言われた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「暇だな。釣りでもする? 道具もないけど買えるし」

 無駄遣い。

 海をぼんやりと眺めていること数十分。あまりにも変化のない景色なのでプラティへと話しかける。プラティは僕が話を振るタイミングが分かっていたようだが、案外プラティの方から話しかけようとしていたのかも。だって中身は僕だし。

 

「こんなでかい亀が泳いでいる所に近づいてくる魚がいると思います?」

「いないのか、残念」

 本当に暇なんだもの。スマホゲームはここでもできるみたいだけど、潮風が気になって手袋をつけてみたばかりだ。指先が反応しない。

 

「何かが近づいてきます」

「鳥か?」

「よく分かりましたね。どうやらこちらを狙っているようです。注意を」

 言ってみただけだが、空から何かが近づいているらしい。全く見えないけれど。

 プラティの手足に光の縞模様が形成され、その手にはトライデントを構えていた。

 海亀がふと動きを止め、ある方向を向いたので僕もその視線を追う。

 

 何かが見えた、と感じた次の瞬間には真正面に巨大な影。プラティがそれを迎撃したのか、いつの間にかトライデントで影の動きを押しとどめていた。激しい衝撃が海を荒らす。“耐衝撃”の効力によって僕はその場に踏みとどまったけれど、風は切り裂くような鋭さで吹き抜けた。影はぎりぎりと音を立てると上空へと舞い戻る。スマホに何か反応があるけれど、手袋が取れない。あ、取れた。思わず空中を撮影してその姿を切り取る。

 

 影の全体の形が小さく映っていた。まだらな色の翼を持つ猛禽のような怪物だ。翼の端から端まで4メートル半といったところだろう。左右の目玉がぎょろぎょろと別の方向を向いていて、どこを見ているのか分からないが不気味だ。そして、その姿をした怪物の影は、3羽もある。

 

――千鋲子(ハイフィンピンテール)

 プラティの全身から光が発生し、それが針のように尖った弾丸として無数に撃ち出されたようだ。怪物たちは旋回飛行でするすると躱し、それでも命中するものは翼で迎撃した。かなりの強度があるようだ。

 しかしプラティはまだまだ余裕があった。

 

――刺突攻(ピアッシング)

 突然空中に現れたプラティが、同じく空中にいる鳥の内の一羽を、背後から串刺しにする。甲高い音を立てて鳥の皮膚が若干の抵抗を見せるけれど、それも一瞬のことでトライデントによって突き破られた。プラティは怪物の背中を蹴ってその場をすぐに離脱する。

 

 他の二羽が翼を羽ばたかせると、刃のように研ぎ澄まされた風がプラティを追い立てるように走り抜けた。プラティは空中で瞬間移動を発生させ、風が当たらない位置へと退避する。プラティの影を追って、怪物たちが一瞬制止する。

 

 そのとき海亀が動いた。かぱりと口を開いたかと思うと、緑色の光線が放射され、二匹の鳥を一瞬にして薙ぎ払う。焼け焦げた鳥たちは海へと墜落していった。お前、そんなことができたのか。

*1:
世界を支える亀




異世界転生や転移する人の元々の名前を覚えられないです。
覚えられないということは始めからなくてもいいのではないでしょうか。
名前が重要なポイントとなる作品は稀ですし。
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