我が名はすいすい!紅魔族唯一のアクシズ教徒ッ! 作:ブレイアッ
冒険者の始まりの街、アクセル。
その門を前に青年が一人。
「ここから、私の伝説が始まるのだ!」
黒い髪に赤い瞳、首筋にバーコード。黒を基調として赤い模様が入った服に身を包み、腰には剣を下げている。
彼はこれからの冒険に期待に胸膨らませ、意気揚々と門をくぐっていった。
彼の名乗りを聞いた門番は逃げ出した。
一週間後。
「誰もパーティーに入れてくれない……」
彼は冒険者ギルドのテーブルに突っ伏して涙を流していた。
「何故だ……何故自己紹介しただけで皆逃げていくのだ……ッ!
近接も遠距離も幅広く対応可能な上に上級魔法も操る魔法剣士、剣技でパーティーの前衛で主力こなせて上級魔法でのサポートも出来る引く手あまたな超有能物件なのにぃ! んなぁぜだッ!」
なんて嘆いても仕方がない。ふらふらと立ち上がり、ダメ元でパーティー募集の掲示板を眺める。
「剣士募集……あ、ここは昨日逃げられたパーティーか。魔法職募集……ここは泣いて謝られたパーティーか、はは、見る目のない奴らだったぜ……」
キラリと光るのは涙か汗か。
「ん?」
ふと目についたパーティー募集の貼り紙。そういやここは行ってなかったなとマジマジと読む。
「アークプリーストのいるパーティー……ああ、たまにギルドで見かける女性を粘液まみれにさせ、女性のパンツを剥ぎ取る男がいるパーティーだったか。たしかパーティーリーダーの名前は……クズマだったか、カスマだったか」
ギルドにいた冒険者に聞いてみるとアークプリースト、アークウィザード、クルセイダーといった上級職の美少女美女がいる中、リーダーは唯一の男で最弱職の冒険者らしい。
なるほどハーレムか、よし殺そう。じゃない、パーティーに入れてもらえないか聞いてみよう。
これがダメなら一生ソロか。嫌だなぁ。
なんて事を思いながらギルドの職員に聞き、パーティーリーダーの所在を聞くと、ちょうど酒場の片隅にそのパーティーの全員がいるという。
指差された先にはなるほど、遠目に見ても美人揃いだ。あの怒鳴り散らかしている男が羨ましけしからん。夜道でざっくりやってしまおうか。
「失礼、パーティー募集の貼り紙を見て来たのだが、まだ募集はしているだろうか?」
「あー……えーっと、一応、してます」
なんかコミュ障発動させてるし、視線がなんか冷たい。なんだこのイケメンって顔だ。
「良ければ君達のパーティーに入れてもらえないだろうか? ジョブは魔法剣士、上級魔法も使えるし、剣技にも自信はある。前衛でも後衛でも何でもござれだ」
「おお! それは助かる! 正直うちは前衛も後衛もダメダメだからな!」
「カズマカズマ!」
「カズマです」
「魔法なら私という最強の爆裂魔法使いがいるじゃないですか!」
「めぐみん、おめーはそれしか使えない上に一発撃ったら終わりだろーが!」
「くっ!」
「待てカズマ!」
「はいカズマです」
「前衛なら私というクルセイダーがいるじゃないか!」
「ダクネス、おめーは攻撃がまったく当たらないだろーがこのへっぽこクルセイダー!」
「んっ」
「カズマさんカズマさん」
「はいはいカズマです」
「私、この人とっても良いと思うの。ねっ、このパーティーに入って貰いましょう!」
「うーん、たしかに断る理由も無いし、そうだな。うちに入ってもらうか!
そういう訳で、これからよろしく頼む。俺は冒険者の佐藤和真」
「私はアークプリーストにして水の女神、アクアよ!」
「アクア様!?」
「あー、気にしないでくれ。そういう夢を見た頭の可愛そうな子なんだ」
「ちょっと何よー!」
アクアとカズマがわいわいしている間にめぐみんが立ち上がる
「我が名はめぐみん! アークウィザードにして最強の魔法、爆裂魔法を操りし者!」
「めぐみんの後というのはちょっとやりにくいな。私はダクネス。エリス教のクルセイダーだ」
「『クリエイト・ウォーター』!」
「ひゃぶぶ!?」
青年がダクネスの顔面に水をぶっかけた。
「ちょっと何やってんだお前!?」
「はっ、つい体が勝手に! でも仕方がない! 相手がエリス教徒なのだから!」
(ん?)
カズマの脳裏に嫌な予感が走る。
「自己紹介がまだだったな。ふふ、久しぶりに我が故郷の名乗りを聞いて体が疼くぞ……!」
(んん?)
「我が名はすいすい! 紅魔族随一の剣術の使い手にして紅魔族唯一のアクシズ教徒ッ!」
「「え゛っ」」
ダクネスとめぐみんが青ざめる。
アクアが目を輝かせる。
カズマは頭を抱えた。
紅魔族。
曰く、一族すべてがアークウィザードになれる程の魔法の才能を持ち、魔王軍も恐れる存在。
アクシズ教徒。
曰く、水の女神アクアを信仰する者達。そのすべてが狂信者であり、殺しても死なないゴキブリ以上のしぶとさを持ち、魔王軍よりも厄介かつ魔王軍も裸足で逃げ出す集団。
カズマの目の前にいる青年はその両方を悪魔合体させた悪魔より厄介な存在であった。
「既に言質は取った。よろしく頼むぞ、サトウカズマ!」
上級魔法を操り、近接もこなせる魔法剣士。そんな人材が何故余っているのか、何故問題児だらけのうちのパーティーにやって来たのか。何てことは無い。彼もまた、厄介者だったのだ。
「何で……何でうちのパーティーには問題児ばっかり集まるんだああああッ!?」
カズマの悲痛な叫びがギルドに響いた。
つづく?