USSエンタープライズ号より宇宙戦艦ヤマトへ 作:コバヤシマル
ーUSSヴォイジャーー
最新鋭の科学調査艦として就役。初任務の途上で管理者と呼ばれる異星人の手によって、元の位置から75,000光年の彼方(デルタ宇宙域)に跳ばされてしまい、帰還まで70年かかる旅にでる。
ー宇宙艦隊司令部ー
「お久しぶりです、提督。5年振りでしたか」
声をかけられた提督は呆れながら振り返った。
「…ああ、そうだなレッジ。それと何だその他人行儀な態度は。私達は同期だろう」
「提督ここは公の場所ですよ。上官を敬うのは当然でしょう」
(どの口がそれを言うか…)
レジナルド・バークレー大佐。若き頃USSエンタープライズの危機を救い、USSヴォイジャーの帰還に寄与するなど多大な貢献を果たした。…が、それと同等の失態を繰り返し、周りから宇宙艦隊一の問題児と見られている。
彼が大佐であることに対して、
「あれがなければ将官に昇進していたのに」
という同情か、
「あれだけ問題を起こして大佐に成れたのか」
という驚きの2つに評価は別れている。どちらにしてもバークレーが歩けば棒に……何かが起きるという認識だ。
「…分かった、レジナルド・バークレー大佐」
因みに提督とバークレーは宇宙艦隊アカデミーの同期で、彼に対する評価は、
(あいつを宇宙艦隊に縛りつけておかないと、どこで何をしでかすか分かったもんじゃない)
と、なっている。
「それで?私は何故司令部に呼び戻されたんだ?例の件なら報告書は提出して聴取も受けた。もう話せることはないぞ、バークレー大佐」
「ええ、もちろんです。分かっていますよ提督!むしろ逆です!今回提督に来ていただいたのは私の話を聞いてもらう為です」
バークレーは異様にテンションが高かった。
(ハァ…覚えがあるぞ、こいつのテンションが高いときは何か興味があるものに出会ったときだ)
提督は久しぶりに会った同期のことをよく覚えていた。特にデルタ宇宙域からヴォイジャーを帰還させる計画に携わっていたときのバークレーは今の様に興奮状態で、その勢いで当時の上官の命令に逆らった行動をとったこともある。
(今度は私が犠牲になるのか)
バークレーに会って僅か数分で諦めの境地に至った。
「それでは提督。どうぞこちらへ」
2人は地下に降りるエレベーターに乗り込む。
(宇宙艦隊司令部にいるはずなのに地獄に向かっている気がする)
バークレーと共に司令部の地下に向かう提督の頭の中は警戒警報が鳴り響いていた。
「…バークレー大佐、先程話があるということだったが、どういう話なんだ」
「気になります?そうですよね」
エレベーターを降りるとバークレーは辺りに人がいないことを確かめると小声で話始めた。
「提督はヴォイジャーの軌跡を覚えていますね?」
(ああ、あのときのお前はヴォイジャーのクルーかっ!という位のめり込んでたからな)
当時のバークレーがホログラムで再現したヴォイジャーに入り浸り、またホログラム依存症が再発したかと心配したものだ。
「それでですね、あの旅でヴォイジャーが関わったものの中には機密指定を承けたものがいくつかあるんです」
「まぁ、そうだろうな」
ヴォイジャーがデルタ宇宙域に飛ばされてから、アルファ宇宙域に帰還するまで6年以上かかった。想定よりかなり早く帰還できたとはいえ、道中様々な出会い、発見、壁にぶつかったこともあるだろう。
大きな声では言えないが時には連邦の理念をねじ曲げたこともあるはずだ。
「だが、ヴォイジャーの話とあの一件に何の関係がある?」
「それは保管庫にある物を見ていただいてからお話します」
(ある物?ボーグに関係が?)
そう考えていると、バークレーが数ある地下保管庫の一室の前で足を止めた。
「提督、あなたにその機密指定の1つを解除します。これは宇宙艦隊上層部の命令です」
目の前の保管庫にいったい何があるのか。
(どうやら本当に地獄に来てしまったようだ…)
「コンピュータ、保管庫E-02のロックを解除、レジナルド・バークレー大佐、認証コード○○○○○○」
〈レジナルド・バークレー大佐、承認。モウ1人ノ認証コードヲ述ベテ下サイ〉
コンピュータがそう言うとバークレーは提督に振り返った。
「さあどうぞ提督!」
満面の笑みを浮かべるバークレーに、
(こいつは地獄の門にいる悪魔だ!)
提督は心の中で腐れ縁の同期に新しい評価を加えつつ、覚悟を決めた。
デルタ宇宙域 ~過去~
デルタ宇宙域からアルファ宇宙域への帰還を目指すUSSヴォイジャーのキャスリン・ジェインウェイ艦長は、ボーグ領域を通過する為に一時的に彼等と同盟を結び、生命体8472(ボーグのつけた名称)と敵対した。
しかし、この敵対行為によって生命体8472は惑星連邦を脅威と判断。連邦及び宇宙艦隊を調査する為にわざわざ宇宙艦隊施設を再現した宇宙ステーションを建設し、潜入工作員の養成を行っていた。
最も、あまりに精巧に作りすぎたせいで、偶々近くを飛んでいたヴォイジャーが宇宙艦隊のシグナルを受信し、この宇宙ステーションを発見してしまうという事態に陥った。
その後、双方が手の内を見せることで武力衝突を回避し、お互いの交流を図っていた。
「ジェインウェイ艦長、君達との交流は実に有意義だった」
「私もです、Mr.ブースビー」
Mr.ブースビー。宇宙艦隊施設で働く庭師で、本来ならデルタ宇宙域にいるはずがない。彼の正体は生命体8472であり、高度な遺伝子変異技術で実在する地球人に化けていた。
「それにしても見せたいものとは何でしょう?この施設は隅々まで見学させていただきましたが」
「あぁ、確かに。だが、司令部には地下の保管庫があるだろう」
(まさかあの場所まで再現したの!?)
艦隊司令部の地下保管庫。ジェインウェイも訪れたことは何度かあるが、はっきり言って、あの地獄に向かうような感覚は今も慣れない。
それに、全体構造を把握している者がいるのか?と思うほど広い。
「ン?…ハハハ!その顔は、あの場所まで再現したのかと驚いている顔だ。違うかね?」
「いえ、全くその通りです。驚きました」
自分の頬が赤くなるのを感じた。
「うんうん、私も地球人というものを理解してきたようだ」
ブースビーは陽気に笑う。
(出来ればそこは理解してほしくなかったわ)
「フフフ、では保管庫に行こうジェインウェイ艦長」
ジェインウェイの心情を知ってか知らずか、ブースビーは先に行ってしまう。
(穏やかな散歩だと思ったのに)
彼女は散歩から僅か数分で最悪の気分になる。
「さあ、こちらへ艦長」
ジェインウェイがブースビーに追いつき、2人でエレベーターに乗り込む。
(やっぱり慣れないわ、この感覚)
そう思いながら、彼に質問する。
「…それで、結局のところ何を見せたいのでしょうか」
「まぁまぁ、そう慌てなさんな」
目的の階に着いたのでエレベーターを降りるとブースビーは話始めた。
「我々が君達惑星連邦を脅威と判断した理由、実はボーグと君達が同盟を結んだ事以外にもう1つある」
「もう1つ?」
彼の立てた人差し指を見ながら聞き返した。
「あぁ、そのもう1つを君に見てもらいたい」
そう言うと足を止めた。
「うん、ここだ。コンピュータ、保管庫E-02のロックを解除しろ」
〈スキャン完了、ロックヲ解除シマス〉
「さあ、どうぞ艦長!」
微笑むブースビーに、
(この人、本当は地獄に誘い込む悪魔じゃないの)
そう思いながらも覚悟を決めて中に足を踏み入れた。
スター・トレック
ーレジナルド・バークレーー
スター・トレック界の問題児。
宇宙艦隊士官であるにも関わらず、転送恐怖症・ホログラム依存症等、精神的に弱気な部分があったが、USSエンタープライズで直属の上官であるジョーディ・ラ=フォージ少佐やカウンセラーのディアナ・トロイの助けである程度改善された。
しかし、ホログラムへの依存は中々治らなかった。