日番谷(偽)でFGO 作:あたらんて
愆つは、人
殺すは、魔
――アヨン
次なる戦場
藤丸立香は、夢を見る。
召喚陣を囲むのは黒い鎧に身を包む白肌の女に、どこか冒涜的な姿をしている男。
「――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ」
女が詠唱をしている。
「誓いを此処に。
我は常世総ての悪を敷く者」
――?少し、違和感を覚えた。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
自分の知っている詠唱とは違うもので光と共に5騎のサーヴァントが呼び出される。
彼らはやはり尋常ではない風格を醸し出している。そして、その主人であろう女からは彼らを超える力を感じる。
ああ、なのにどうして、彼らよりも彼女の方がずっと恐ろしくあるべきなのに――どこか、憐れに感じた。
夢はまだ、続く。
「ふう…ありがとうな、アーサー。もうそろそろブリーフィングの時間だ」
「フム…もうそんな時間か。やはり貴様は強いな。押し切れると思ったところで上手く躱され逆転される。また今度訓練を頼みたいものだ」
そう言葉を交わすのは俺とアーサー。今は朝だが睡眠の必要ないサーヴァントにとって夜は暇なのでこうしてシミュレーションルームで訓練を行っていた。
そして今から遂に次なる特異点の攻略に向けたブリーフィングが始まる。目的地に向かう途中、アーサーが口を開く。
「ところでお前がこの前作っていた『かき氷』…というやつ。また食いたくなったのだが…」
「ああ。あれか…」
この前藤丸が歓迎会とか言って呼び出したサーヴァント――アーサーとキルケー――に対してパーティーを開いたのだ。
その中で俺が作れるものといったら氷なので知識の中からかき氷を引き出して作ってみたのだが…案外気に入ったらしい。
それより俺はあのキルケーが作ったキュケオーンとかいう粥の方が気に入ったのだが…その旨を伝えるとキルケーはえらい嬉しそうにしていた。
「いいぜ。この作戦が終わったらいくらでも作ってやるよ」
「ああ。それは嬉しい…ただ、あの頭が痛くなるのはどうにかならんものか…」
「そりゃあもうセットってモンだ。諦めろ…って、着いたぞ」
そんなことを言っている内に目的地に辿り着いた。ロマニ、オルガマリー、ダ・ヴィンチ、キルケーが待っていた。
「おはよう、日番谷君、アーサー王。あとは藤丸君とマシュだけだね」
「おはよう、ヒツガヤ!なあ、聞いてくれよ。マスターがキュケオーンをもう要らないって言うんだ!」
「そうなのか?あんなに美味しいのに…」
「セイバーがおかしいのよ!私今日もうさっき1杯食べたのよ!?アナタよく毎日何杯も食べれるわね…」
美味しいものは何杯でもイケると思うんだが…そんなことを思いながらオルガマリーが手を付けてないキュケオーンを食べ始める。
「あ、アーサーはこれいるか?」
あの歓迎会でアーサーが見た目を遥かに超える大喰らいだということはわかった。
「いや、そのどこか健康的な味はあまり好みに合わなくてな…」
「そっか…」
ロマニとダ・ヴィンチにも目を向けると、首を振られた。
どうもこれが好きなのはこの場では俺だけらしい…藤丸とマシュはどうだろうか?マシュは全ての料理を少しずつ食べていたし、藤丸は俺のかき氷を一気に食って早々にダウンしてそれ以降あまり食事には手を付けていなかった。
まだわからないな…。
「おはようございまーす!」
「おはようございます、皆さん。マシュ・キリエライトただいま参りました」
「おはよう、藤丸君。よく眠れたかな?それではブリーフィングを開始しよう」
そう言って始まったロマニの説明を纏めると…これから向かう特異点には聖杯が関わっているとのこと。特異点の調査と同時にこの聖杯に関しても調べるということ。
そしてまず始めに行うことは霊脈に召喚サークルを設置することだ。これを行わないとせっかく召喚した2騎以降のサーヴァントも意味をなさない。とはいえ魔力供給の問題からあまり簡単に呼べるものでもないのだが…。まあカルデアの電力を用いた魔力供給を使うなら次のことを考えなければなんとかなる。
とりあえず今は初めに連れて行くのは1騎のみ、サークルを設置次第2騎以降を呼ぶということにする。
「あー、そして紹介するよ。彼…いや、彼女…いや…ええい、ともかくそこにいるのは我がカルデアの技術部のトップ、レオナルド氏だ。この人は――」
「はい、ここからは私から。カルデア技術局特別名誉顧問のレオナルドとは仮の名前。
私こそルネサンスに誉れ高い万能の発明家、ダ・ヴィンチその人だ!」
「え…?おかしいです。だって、そ、その…」
うん、やっぱり皆混乱している。ダ・ヴィンチは男だもんな。そして俺も混乱してきた。何かうやむやにしてきたけどやっぱりおかしいよな…?
「――私は美を追求する。そして私の理想の美とはモナ・リザだ――ほら?」
なにを言っているのかよくわからなかったがそうらしい。
まあともかくこのダ・ヴィンチはオルガマリーとも藤丸とも契約を結んでいないため、バックアップが主な仕事となる。
そんな話をすると、ダ・ヴィンチは立ち去って行った。
「よし、じゃあもうすぐにレイシフトを始める。今回は安全に行える筈だ。所長も…よくわかんないんですけど、行えるんですよね?」
「ええ。実験も行いました。死神という存在になり、体も新しくしたことで私の基盤そのものが変わったようです。今の私はレイシフト適性を得ています」
「そうですか、それなら良いんですが…。ではこれからレイシフトの準備を開始します。藤丸君が連れていくサーヴァントはマシュの盾をサークルの基盤にするから確定として…所長は、まあわかっていますが…」
「ええ。当然セイバーを連れて行くわ。どうせすぐにどちらも呼べるようになる以上、緊急時の戦闘力が高い方を連れて行くに決まっているわ」
「ああ。ここは大魔女の力を見せてあげたいところだが…まあ私は後輩だ。そこのところは弁えよう」
別にキルケーでも構わないと思うが…まあオルガマリーが俺を選ぶのはわかっていることだ。
「それじゃあコフィンに入ってくれ。レイシフトを開始しよう」
「アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始 します。
レイシフト開始まで あと3、2、1…
全工程 完了。
グランドオーダー 実証を 開始 します。」
そして波が来て意識が攫われる。この感覚は、慣れそうにない。
まず最初に周りを確認した。オルガマリーは傍で寝ている。藤丸とマシュは――見つからない。どうもはぐれたようだ。まあカルデアとの通信が繋がればすぐに合流できるだろう。
そして次に目に入って来たのは空に浮かぶ光の輪だった。そこで初めて恐怖と戸惑いを覚える。おかしい。
わかっている。頭では理解している。これは――かつて、崩玉と融合した藍染の力を誰も理解できなかったように、斬月と融合した一護の力を藍染が理解できなかったように。
あの輪が、今の俺とは比べもののならない位の力を有しているというだけだ。
その事実に戦慄していると、一つの霊圧がこちらへ寄ってくるのを感じた。
「あら――あなたは、本来のサーヴァントですか、それともおかしい方のサーヴァントですか?あなたは一体、誰でしょうか?」
着物に身を包んだ角を生やした少女が歩いてきた。
「カルデアから来たセイバー、日番谷冬獅郎だ。…話がしたい。アンタが…敵か味方かも含めてな」
「ええ。私は本来のバーサーカー、清姫ですが…どうもお互いに事情の説明から必要なようですね」
「あらまあ、そんなことが…」
どうも、結構大変なことになっているらしい。あの有名な聖女ジャンヌ・ダルクが蘇ってワイバーンを操りフランスを、火の海と変えているとのこと。そしてその彼女に召喚されたサーヴァントは狂化をかけられており、他の――本来のサーヴァントと戦っているらしい。
「それじゃあ俺たちに協力してくれるか?こちらもフランスを守るために全力を尽くそう」
「ええ。それでは約束をしましょう?」
そう言って小指を差し出してきた。なんかこの少女、先程からどんどんと距離が近づいて来ているような…。
「ああ。指切りか?」
「ええ。ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたらはーりせんぼんのーます…。
それでは約束は絶対なので以降わたくしに嘘をついた場合、針を千本呑んでもらいます。
よろしいですね?それではよろしくお願いします、あなた様」
…かなりの不思議ちゃんのようだ。