日番谷(偽)でFGO 作:あたらんて
誇りを一つ捨てるたび
我等は獣に一歩近付く
心を一つ殺すたび
我等は獣から一歩遠退く
――更木剣八
――さて。これから何をすべきか、という話だ。
「…。ロマニと通信が繋がったわ」
起きたオルガマリーに一通りの説明を終えると、丁度良いタイミングでロマニから通信が来た。
『あっ、やっと繋がった!藤丸君たちも無事レイシフトできているよ。
そっちの状況は?』
「こっちでは一人のサーヴァントと接触して、とりあえず味方になってくれた。この特異点の現状も把握できた」
『なるほど、じゃあ情報交換といこうか』
藤丸たちは俺たちとかなり離れていて、ジャンヌ・ダルクと接触したらしい。
いきなりラスボス戦かと思えばどうも事情があるようで、今フランスを攻めているのは偽物のジャンヌ・ダルクらしく、そいつが俺たちの倒すべき敵というわけだ。
そんな感じの情報交換でロマニとの通信は一旦切れた。
「戦力を集めなければいけないのですね。それならわたくし、一つ心当たりがあります」
「そうなのか?」
「ええ。そんなに時間も経っていないことですが、ゲオルギウス、と名乗る方と出会いました。西の方に向かっていったのですが…」
「ゲオルギウス…聖ジョージの名で有名な聖人ね。我々に協力してくれる
ことでしょう。藤丸たちとは離れますが…どうしましょうか」
オルガマリーが悩んでいる。
「…いえ。今は合流を優先させます。その後聖ジョージの所へ向かい、仲間になってくれるよう頼みましょう」
ロマニに合流する旨を伝え、とりあえず外も暗いので野宿の場所を探そうということになった。
「しかし、本当に魔物がたくさんいるな…これで何匹目だ?」
「あなた様はお強いのですね」
「清姫だってマスターと仮契約を結んでからみるみる調子が良くなったじゃないか。もう何匹も焼き殺している」
最初にこの少女が火を吹いたときはとても驚いた。
「まあ…すみません、はしたない姿をお見せしました…」
「いや、戦力が増えるのはとてもありがたいのだが…よし。じゃあここで野宿にしよう」
そうしてオルガマリーを寝かせて俺は辺りを見張っていた。
「あら…あなた様は、お眠りにならないのですね…残念です…」
清姫の言葉の意味はよくわからなかったが、サーヴァントに睡眠が必要なくて助かった気がした。
次の日。また東に向かって歩いていると、なんだかかなり大きな声が響いてきた。
「…あちらの町からね。ちょっと寄ってみましょうか」
そこにいたのは、これまた角を生やした可愛らしい少女だった。
「何っ、なの、よ!!あの醜い私は!」
「あら…何だか紛い物がゴチャゴチャと騒いでいますね」
「…………は?」
なんか清姫が初っ端から喧嘩を売っていった。
「醜い私も何も元から醜いのではよくわかりませんわ。とりあえずその醜いどころでないその口を閉じて頂いて?」
「……このエリマキトカゲが、上等じゃない。その喧嘩、買ってあげるわ―――!!!」
そう言ってその少女は清姫に槍を向けて突っ込んでくる。
「きゃあ!助けてください、あなた様!」
「えっ」
「えっ」
「えっ…縛道の六十一 六杖光牢」
鬼道によって少女はその場に縫いとめられる。
「はああああああああああああ!!??」
「ねえ、今どんな気持ちですか?これが愛の力というものですよ?」
「このストーカーがよくそんなことを言えたものね…」
「あら、血液拷問フェチのド変態に言われたくありませんね。どうせ貴方のことです。アレしながらナニしてたんでしょう…?」
「アレって何よ!?ナニって何よ!?わ、訳のわからないこと言わないで頂戴!!」
「……え?エリザベート、貴方まさか――」
「ああああああああああああああああ!!!!!」
どうも知り合いのようだ。動けない少女に対して煽り散らかしている。
「まあ、その辺にしておいて…お前は俺たちの敵じゃあないんだな?」
「ええ…悪かったわね。あの女以外に攻撃するつもりはないわ」
俺たち(一人除いて)への敵意は無いみたいなので縛道を解く。
「じゃあ自己紹介からだな。俺は日番谷冬獅郎、そしてこっちがマスターのオルガマリーだ。俺たちはカルデアというところから…」
ざっと自分たちの状況について説明した。
「なるほど。アタシはエリザベート・バートリー。まあ色んな事情があって…その敵さんの中に一人倒さなきゃいけないやつがいるわ。敵の敵は味方っていうし、アナタたちと一緒に行動してあげるわ」
順調に戦力が増えていくことに喜んでいると、複数の霊圧がこちらに来るのを感じた。
『ちょっと良いかい!?そっちに先程までこちらで戦っていたサーヴァントが向かっている!数は4騎だ!』
「あら…こんにちは、皆さん。そして、さよならね」
黒い鎧に身を包んだ女が現れた。
「…!ちょっと、いきなり親玉とか聞いてないわよ!セイバー、相手は今までのシャドウサーヴァントなんかとは違うわ。数で負けてる以上撤退よ!」
「アハハハハ!撤退なんてさせると思って?ワイバーン、退路を塞ぎなさい!」
完全に彼女の支配下にあるのか、続々とワイバーンが集まってくる。
「…ちょっと、アイツ。アタシじゃない…」
エリザベートの狙いがいるようだ。でも、今は戦う時じゃない。
「エリザベート、今はダメだ。まともに戦えない。一旦退路を切り開いて逃げるぞ。俺が殿を務める」
「…っ。わかったわ。隙を作りなさい。アタシの宝具でワイバーンなんか蹴散らしてやるわ」
「相手は連携なんか取れていない集団です。こちらが動きを合わせればなんとかなるでしょう」
「よし。防御することを考えろ、マスター援護頼んだ!」
「ああもうっ、何でこんないきなりピンチに…!」
まず無言で氷輪丸の能力を発動させ、近くのワイバーンを一掃し、とりあえずの安全圏を作る。
最初に突っ込んできたのは、槍を持つ中年の男だ。武器を合わせると他に手が回らなくなる。氷を使って近寄らせないように立ち回る。
横から切り込んでくるのは中性的な顔立ちの剣士。エリザベートと槍を合わせているので少し氷を回して援護をする。
エリザベート曰く醜いアタシは、手に持つ杖のようなものから光弾を発射してくる。これは清姫の炎と俺の氷でガードする。
最後の一人、ジャンヌ・ダルクはこちらのことを舐めているのかあまり積極的には戦闘に参加していない。たまに放たれる炎を同じく清姫の炎で相殺する。
膠着状態に、持ち込めた。どうも相手のサーヴァントは全体的にやる気が無いように見える。話によると狂化を付与されて無理やり戦わせられているのだからそれもそうか。
ただし、こちらには不利な状況で膠着している。時間がかかればかかるほどワイバーンは増えていくし、防戦で膠着しているのは良くない。
令呪を切るか…?
そんなことも考え始めたとき、清姫が言葉を発する。
「エリザベートっ、いきますわよ!準備なさい!」
清姫の霊圧が爆発的に高まっていく――これは、宝具――!?
「転身火生三昧!!」
その宝具は思いのみで幻想種の頂点、竜種へと至るもの――その炎は全てを焦がし、その身はワイバーンなぞとは比べものにならない力を有する――!!
「っ、まず…」
ジャンヌ・ダルクが焦ったように声をあげる。
竜と化した清姫は近接戦を行っていた敵を全て吹き飛ばす。
「ナイスよ清姫!それじゃ行くわよー!
その隙を突き、エリザベートも宝具を解放する。かつて彼女が君臨した城が顕現し、エリザベートが大きく息を吸う。
「Ahhhhhh――――――――――!!!!!!!!!!!」
その声はその場にいたあらゆる敵を吹き飛ばす。消し飛ばされたワイバーンによって退路が生まれる。
「が、あっ…!」
「よし、今だ。逃げるぞ!縛道の二十一 赤煙遁!」
煙幕を発生させる。そしてマスターとエリザベートを担ぎ、瞬歩で逃げる。清姫は竜になっていられる時間の内だけ自分で逃げてもらう。
どうもあのジャンヌダルクはルーラーとしての力で普通のサーヴァントよりもサーヴァントを探知できる範囲が広いそうだ。今は全力で逃げる。
今回の特異点はもっと戦力を集めないと一筋縄ではいかなそうだ…。