日番谷(偽)でFGO 作:あたらんて
一歩踏み出す 二度と戻れぬ
三千世界の 血の海へ
――ユーハバッハ
俺が召喚されてから、2年程が過ぎた。
その間、トリスメギストスなんていう機械が入ってきたりあのマシュがマスター候補となりそのままAチームの首席に至るなんてこともあったりした。
ただ、色々あった中で一際大きかったのが疑似地球環境モデル・カルデアスから火が消えたことだ。
あの時のオルガマリーのヒステリーはいつもに増してひどかった。
ただ励まして慰めた後1週間は俺の傍を離れようとせず、とても可愛かった。
まあそれは置いといて、カルデアスから火が消えるということはどういうことを表すのか。
それを説明するにはまずカルデアスが何かというところから始まる。
カルデアスとは、ざっくり言えば地球のコピーである。そして、このカルデアスは様々な年代の地球をコピーできる。ただ人間では観測できないため表層の光のみを専用の観測レンズ・シバによって読み取っている。
そして今まで、カルデアスは100年先を観測し続けていた。
そのカルデアスが光を灯している限り、都市に人が暮らし、文明が継続していることを示している。
その光が今から半年前、消えた。調べた結果、2016年をもって人類が絶滅することが証明されてしまった。
当然必死に原因を探した。未来は過去より生まれる。過去の地球を観測したのだ。すると、2004年、日本のある地方都市に今までは無かった観測できない領域を見つけたのだ。
それをカルデアは空間特異点Fと名付け、レイシフト―過去へと移動し、人類絶滅を回避しようとしたのだ。
ただ、このレイシフトは適性が必要なものだった。そのため世界各国から合計48名の人員を集めた。
そしてもうすぐ俺のマスター、オルガマリーが集められた新人たちへの現在の状況の説明会を行おうとしているところであった。
オルガマリーには俺も傍で聞いてくれと言われている。そろそろ向かうとしよう。
そう考えて、俺は
「……遅刻したかな」
開始まで10分を切った説明会に霊体化して中に入ることを検討しながら歩いていると、フラフラとかなり危なそうな感じで歩いている赤髪の女の子を見つけた。
「…おい。大丈夫か?」
「むにゃ…ううー」
「って、お前!?」
遂に意識が途切れたのか倒れ掛かってきた。
霊圧は安定しているため問題はないと思うが…。
俺が対応に困っていると、時たまマシュと一緒にいるのを見かけたことがある不思議な生物―マシュいわくフォウ―と、その後ろからマシュがやってきた。
「フォウ、フォーウ!」
フォウが女の子に飛びついて頬を舐めている。
「待ってください、フォウさん…って、日番谷さん?それは…犯罪、というものでは?いえ、確かにサーヴァントに法律が適用されるのかと言われればそれも疑問ではありますが…」
「いや、違うからな!?妙な誤解を…」
「ん…。なにかに頬を、舐められて…?」
抱きかかえていた女の子が目を覚める。
「ひゃあああああ!!??イケメンだああああああ!!!!」
「うおおおおお!!??急に叫ぶなあああああ!!!!」
「いやあ、これは失礼しました。どうも眠っちゃってたみたいでして…」
そう言って赤髪の女の子―藤丸立香と名乗った―は照れ臭そうに頬を掻いた。
「こんなところで寝ようとするなんて…不思議ですね。先輩は硬い床でないと眠れない性質なのですか?」
「うん。畳じゃないとちょっとね」
「ジャパニーズカーペットですね。噂には聞いていました。なるほど…」
何を言っているのだろうか。無垢であるが故の弊害である。
「フォウ!キュー、キャーウ!」
「これは失念していました。あなたの紹介がまだでしたね、フォウさん。
こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権生物です。私はフォウさんにここまで誘導されたのです」
「フォウ。ンキュ、フォーウ!」
そう最後に一鳴きして、フォウはどこかへ去っていった。
本当にあれは何の動物なのだろうか…。霊圧を読み取ってみて驚いた生物の一体だ。
可愛い見た目をして馬鹿みたいに霊圧を溜め込んでいる。量だけで見るなら今のところあの生物がダントツだ。
「見たことない生き物だね」
「はい、わたし以外で懐いた人を見たのは初めてです。おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウのお世話係の誕生です」
そんなことを言っていると、誰かが近づいてきた。
「ああ、そこにいたのかマシュ。だめだぞ、断りもなく移動するのはよくないと…おや?日番谷くんに…今日から配属された新人さんだね。
私はレフ・ライノール。ここで働かせてもらっている技師の一人だ。
君の名前は?」
レフだ。この2年間何度も世話になった。保証しよう、コイツは良い奴だ。
「藤丸立香です!」
「ふむ。招集された48人の最後の一人か。歓迎しよう。それで、ここで何を?」
「いや、何。コイツがここでフラフラ歩いてたと思ったら急に倒れて眠りだしたんだよ」
「はい。それで、日番谷さんが犯罪行為に手を出してしまわれて…」
「いや、だから誤解だからな!?」
「ふむ。その件については後で詳しく聞くとして…」
「おい!?」
誠に遺憾である。
「眠った、とは…ああ、さては入館時にシミュレートを受けたね?
霊子ダイブは慣れてないと脳にくる。表層意識が覚醒しないままここまで歩いてきたんだろう。
万が一を考えて医務室まで送ってあげたいところだが…。
すまないね、もう少しの我慢だ。5分後に所長の説明会が始まる。挨拶のようなものだ」
「オルガマリー…所長は些細なミスも許容できないタイプだからな。遅刻でもしたらかなり睨まれるぞ。…5分じゃもう無理だと思うが」
「この通路を真っすぐ行った先の中央管制室で行われます。レフ教授、私も着いていっていいですか?」
「うん?まあ隅っこで立ってるくらいなら大丈夫だろうけど…なんでだい?」
「途中で先輩がまた熟睡されると困りますから…」
「いや、流石に私ももう寝ないと思うけど…」
怪しいな。
「ふむ…君をひとりにすると所長に叱られるからなあ…私も同席するか」
「なんだ、それなら俺もオルガマリーに呼ばれてるから皆で行くことになるな」
「よし、じゃあ急いで行こっか。ところで…何でこの子は私を先輩と呼ぶの?」
藤丸が疑問を挟む。
「それは…藤丸さんは、今まで出会ってきた人の中でいちばん人間らしいです。まったく脅威を感じません。敵対する理由が皆無です」
「なるほど!カルデアの人間は曲者揃いだからね!」
「人間らしい…ねえ…。そういうモンか」
そんなことを話しながら管制室へ進んでいった。
…このカルデアは広過ぎる。もう間に合わないだろう。何事も過ぎれば欠点となるものだ。
管制室に着くと、、やはりもう集合時刻は過ぎていた。
オルガマリーに睨まれた。手を振った。そっぽを向かれた。かわいい。
そのまま藤丸は最前列へ、マシュとレフと俺は隅っこで話を聞いていた。
……もう既に知っている話を聞いていると、眠くなってくる。
まあただ、久々に威厳のあるオルガマリーの姿を見るというのもいいものだ。きっと内心ではみんな従ってくれるか不安なのだろう。かわいい。
…ん?藤丸、寝てないか?
あ、平手打ち喰らった。最前列で寝るなんて度胸あるなあ…。
またそれからしばらくして、今度は別件で藤丸が怒られている。
もう話がどうでもよさ過ぎてずっとオルガマリーの顔を眺めてて聞いてなかった。
…どうやら訓練をするために追い出されることになったらしい。南無三。
まあこのあとレイシフトするのはAチームだけだし妥当っちゃあ妥当な指示だ。
ただこれからのレイシフトにオルガマリーは何故か適正がなく参加できないらしいから俺は保険としてカルデアに待機だから俺も暇だ。ピンチになったときにカルデアから魔力供給を受けて動く、という感じだ。
俺も訓練に参加してこようかな…。
またしばらくして、遂にレイシフトが始まることになった。
集められた48人がコフィンの中へと入り始める。
「アラ、日番谷くん。これでしばらくお別れね。ピンチの時は頼むわよ?」
「ああ。任せとけ」
そんな風に何人かに声をかけているとオルガマリーの声が響く。
「それでは1分後にレイシフトを開始します。候補者たちは速やかにコフィンの中へ入りなさい。
いいですか。これは人類の未来を取り戻す大切な任務です。絶対に失敗は許されません。心してかかりなさい。それではカウントダウンを始めます」
どうも遂に始まるらしい。なんとなくそんなに関係してない自分はいない方が良い様な気がして霊体化しながらカウントダウンを聞いていたとき、それは起こった。
部屋の中心から走る閃光。それから遅れて熱風と爆音が襲ってきて―――
「な…何がっ!起きたんだよっ!!」
霊体化をすぐさま解き、オルガマリーの元へ走る。
「…ぁ……せい、ばー…?」
「オルガマリーッ!!!!」
不味い。一目でわかる。致命傷だ。俺の回道の腕じゃあ治せない。
「日番谷…」
オルガマリーが喋りだす。
「わたし…あなた、に…あえ、て…よかっ…」
そこでオルガマリーの言葉は止まった。
「あ…そん、な…」
どうして、こんなことが…?あの爆弾の威力は凄まじいものだった。俺も霊体化していなければやられていただろう。俺でさえそうなら普通の人なんて…いや、絶望している場合じゃない。まだ息はある。俺は斬魄刀を抜き解号を省略して始解しオルガマリーを凍結させる。
これでひとまず息は保つはずだ。
辺りを見渡すと、どこも酷い様だった。とりあえず、コフィンには緊急時の凍結機能がある筈だ。本人の承諾が本来必要だが起動させなければいけないと思って立ち上がると無機質な音声が響いた。
「システム レイシフト最終段階に移行します。
座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木」
唖然とした。まさかこの状況でレイシフトが行われるのか…!?
するとすぐに、カルデアスが燃え盛った。
「カルデアスの状態が変化しました。近未来百年までの地球において
人類の痕跡は発見できません
人類の生存は確認できません
人類の未来は保証できません」
追い打ちのような言葉に絶望感が広がる。
「レイシフト 定員に 達していません。
該当マスターを検索中・・・発見しました。
適応番号48 藤丸 立香 を マスターとして 再設定 します」
その言葉を受けて辺りを見渡すとマシュと藤丸がいた。
気が動転して二人の霊圧にも気づいていなかった。
「アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始します。
レイシフト開始まで あと3」
藤丸は死にかけのマシュの手を握っている。
「2」
それはなんだか、ひどく尊くて、
「1」
ひどく羨ましい光景のように、思われた。
その光景を最後に、意識は途絶えた。
一つ補足として「原作と今作のオルガマリーの違い」について説明しておきます。
オルガマリーは今作ではレフではなく主人公を頼っています。そのためレフからのヘイトは集めていません。よって、足元に爆弾を設置されることは回避しています。
そのため原作では遺体も残っていませんでしたが今作では辛うじて体を残せた訳ですね。とはいえ冷凍された状態なのでオルガマリーは今仮死状態。死んでます。主人公が何もしていなかったらそのまま死んでました。
体が残っているかないかが原作との差ですね。
それと前書きと後書きを全話変更しました。これからこの方式でやって行こうと思います。