日番谷(偽)でFGO   作:あたらんて

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王は駆ける


影を振り切り
鎧を鳴らし
骨を蹴散らし
血肉を啜り
軋みを上げる
心を潰し


独り踏み入る
遥か彼方へ


――グリムジョー・ジャガージャック


決戦

 

――さて。楽しかったティータイムも終わり、とうとう大聖杯も目前となったわけだが。

 

 

「これが大聖杯…超弩級の魔術炉心じゃない…」

 

 

オルガマリーが凄まじい霊力を保有している聖杯に唖然としている。俺もハッキリ言って滅茶苦茶驚いている。周囲の霊圧知覚が疎かになるほど霊力が溢れ出しているのだ。

ただ…

 

 

「おしゃべりはそこまでだ。奴さんがこっちを見てるぜ」

 

 

そう言ったキャスターの目線の先にはその聖杯の霊力をそのまま吸い上げているかのような莫大な霊圧を出し続ける女剣士の姿があった。真黒の鎧と真白の肌が対照的だ。

多少違うものの姿に覚えがある。シミュレーションで一度戦った。

 

 

「コイツがアーサー王か…」

 

 

「―――――」

 

 

『そうだ。何かが変質しているようだけど、彼女はブリテンの王、アーサーだ。

伝説とは性別が違うけど、何か理由があって男装をしていたんだろう。王には男じゃないとなれないからね。多分宮廷魔術師の悪知恵だろう。マーリンはほんと趣味が悪い』

 

 

まるで実際に知っているかのような口ぶりでロマニが喋る。

 

 

「え…?あ、ホントです。女性なんですね、あの方。男性だと思いました」

 

 

…?いくら人生経験の少ないなマシュとはいえ流石にあれを男性だとは思わないだろう。

融合した英霊の影響か……?

 

 

「―――ほう。面白いサーヴァントがいるな」

 

 

急に漆黒の剣士は口を開いた。

 

 

「なぬ!?テメエ、喋れたのか!?」

 

 

キャスターが驚きの声をあげる。今までも一度も喋ったことが無かったのだろうか…

 

 

「ああ。何を語っても見られている故、黙っていた。

しかし――面白い。その宝具は面白い。構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう!」

 

 

そう言ってマシュに向けてアーサーは剣を構える。

 

 

「来ます――マスター!」

 

 

「うん、戦おう!」

 

 

突っ込んできたアーサーの動きは確かに昔戦ったものであった。

しかし、あの時とはパワーもスピードも段違いである。

受け止めようとしたマシュが一瞬で吹き飛ばされる。

咄嗟に剣を合わせるが、まだバーサーカーとの戦いにおける傷も回復しておらず、パワーで負けているため一瞬で押し切られる。

 

 

「チッ…霜天に座せ 氷輪丸!」

 

 

使(・)わ(・)さ(・)れ(・)た(・)。

体に傷がある以上力は温存できればできるだけ良いのだが…

 

 

「オレのことも忘れんなよっ!」

 

 

キャスターが杖でアーサーに立ち向かうと同時、俺に強化のルーンをかけてくれる。

俺も氷輪丸の能力でアーサーに攻撃する。

 

 

「群鳥氷柱!!」

 

 

無数の氷柱がアーサー目がけて飛んでいく。

 

 

「フンッ!」

 

 

しかしそれも霊圧を纏った剣でまとめて切り裂かれる。

ただ後ろから復帰したマシュが突進する。

 

 

「てやあっ!」

 

 

アーサーはキャスターを跳ね除けると同時、後ろに振り返りマシュに猛攻を仕掛ける。

しかし今度はマシュもしっかりと踏ん張ってその猛攻を凌ぐ。

そして俺もアーサーへ近接戦を仕掛けに行く。アーサーは咄嗟に氷輪丸をその聖剣で防ぐが、二人を相手に1本の剣では務まらない。

不利と見たか一度俺たちから距離を取ろうとする。

 

 

しかし、そこはまさにキャスターの射線である。

 

 

「焼き尽くせ、木々の巨人――灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!!」

 

 

かつてマシュに放った時は手加減していたのだろう。あの時とは比較にならぬほど強力になった巨人の一撃がアーサーを襲う―――!

 

 

「やった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「約束された(エクスカリバー)…」

 

 

笑っていた。あの巨人を目の前にして漆黒の剣士は笑っていた。それと同時にキャスターの巨人以上の霊圧の高まりを感じる――あの大聖杯からアーサーへと霊力が流れていく――!!

 

 

「マシュ!」

 

 

マシュの名前を叫ぶ。間に合うか――

 

 

「勝利の剣(モルガン)―――――!!!!!」

 

 

「宝具、展開しますっ!」

 

 

馬鹿げた威力の一撃が闇に染まった聖剣から放たれる。その一撃は周りの光を呑みながら、周囲を破壊しながらマシュの盾目掛けて突き進んでゆく。

それに対してマシュは仮の名前の宝具で立ち向かう。

 

 

「人理の礎(ロード・カルデアス)――!!!」

 

 

展開された障壁に漆黒の一撃が喰らいつく。

 

 

「くっ……ああっ…!」

 

 

マシュは今にも吹き飛ばされそうになる。しかしその背に、もう一人立ち上がる。

 

 

「マシュ、頑張って――!」

 

 

「せん、ぱい――」

 

 

たったその言葉だけで、後ろに立って背を支えるだけで、マシュの体に力が漲る。

しかし、大聖杯から霊力の供給を受けているアーサーの一撃に終わりはない。このままでは、というところで藤丸が決定的な一打を入れる。

 

 

「令呪を以って命ずる――マシュ、防いで!」

 

 

「――!はい、せんぱい――!!!」

 

 

藤丸の右手の甲の令呪が光り、一画消えて展開された障壁がより一層輝きを増す。

そして段々と聖剣の一撃を押しのけていき――遂には弾き返した。

 

 

「なっ!バカな…!」

 

 

アーサーは呆然としている。

 

 

「――隙だらけだぜ」

 

 

氷輪丸をその鎧へ深く差し込む。

 

 

「竜霰架」

 

 

敵の身を中心とし、十字架を形作りながら氷結していく。

 

 

「クッ…この程度……!!」

 

 

「マスターッ!」

 

 

「ええ!令呪を以って命じます!とどめを刺しなさい、セイバー!」

 

 

力が湧き出てくる。氷を破りだしたアーサーへ向かって最後の一撃を加える――!

 

 

「おおおおお―――っ!!!」

 

 

「私たちも!マシュ、キャスターお願い――!」

 

 

「はい!てやああ――っ!!!」

 

 

「行くぜえ!オラよおっ!!」

 

 

3者の一撃が一点に襲い掛かる。

 

 

「ガ、ハ―――ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙が晴れるたそこには、鎧が砕かれ、血を流して消滅しかけているアーサー王がいた。

 

 

「――フ。手加減したつもりは無かったが――敗北してしまったな。

結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは同じ末路を迎えるという事か」

 

 

「あ?どういう意味だそりゃあ。テメエ、何を知っていやがる?」

 

 

キャスターの言葉に内心同意する。一体、何を知っている――?

 

 

「いずれ貴方も知るとも、アイルランドの光の御子よ。

グランドオーダー――聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだという事をな」

 

 

そう言ってアーサーは消滅した。

 

 

「オイ、それはどういう――って、ここで強制帰還かよ!?」

 

 

キャスターの体も消え始める。特異点が消えつつあるのか。

 

 

「チッ、納得いかねえがしょうがねえ!嬢ちゃん、あとは任せたぜ!

次があんなら、そん時はランサーとして喚んでくれ!」

 

 

「うん、またねー!」

 

 

そしてキャスターも消えていった。

 

 

 

 

「…セイバー、キャスター共に消滅を確認しました。わたしたちの勝利…でしょうか?」

 

 

『うん、よくやってくれたよ。所長もさぞ喜んで…って、所長?』

 

 

「……冠位指定(グランドオーダー)……その呼称をどこで…」

 

 

何か呟いている。

 

 

「どうかしたか?」

 

 

「え……?あ、そうね、みんなよくやったわ。不明な点は多いですが、ミッションは終了とします。

まずあの水晶体――聖杯を回収しましょうか」

 

 

「はい、至急回収――な!?」

 

 

マシュが声を上げると同時、唐突に見知った霊圧が現れた。これは――!

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。見込みがない子供だからと、善意で見逃した私の失態だ。そしてまさか君が来るとも思っていなかったよ」

 

 

「レフ…!?」

 

 

『レフ――!?レフ教授だって!?』

 

 

「うん?その声はロマニ君かな?君も生き残ってしまったのか」

 

 

通信先のロマニの生存に興味を示す。これは――これでは――

 

 

「すぐに管制室に来てほしいと言ったのに、私の指示を聞かなかったんだね。まったく――」

 

 

そこで言葉を切ると、レフは今まで見たこともないほど嫌悪感に満ちた表情を浮かべた。

 

 

「どいつもこいつも統制のとれてないクズばかりで吐き気が止まらないな」

 

 

「――!マスター、下がってください。あれは、私たちの知っているレフ教授ではありません!」

 

 

「レフ、あなた、どういうこと――?」

 

 

「やあオルガ。元気そうでなによりだ。君も元気そうでなによりだ」

 

 

一転、またいつものように朗らかな笑顔で話し始める。――しかし違う。目の奥が笑っていない。

 

 

「え、ええ…。たくさん予想外のことが起きたけれど…」

 

 

オルガマリーもそれを感じ取っているのか一歩後ろへ下がる。

 

 

「そうだね。本当に予想外のことばかりで頭にくる。

その中で最も予想外なのが君だよ、オルガ。わざわざあの後殺したというのに」

 

 

「―――、え?……レ、レフ?あの、それ、どういう、意味?」

 

 

「まず最初に誤算だったのが仮死状態でも精神体のみでレイシフトが行われるということ。トリスメギストスがご丁寧にも仕事をしてくれたおかげだね。そこで私は少し焦った。何せ日番谷君は実力をちゃんと測った訳ではないが、強力なサーヴァントであることは知っていたからね」

 

 

何を――、何を言っている――?

 

 

「そしてわざわざ凍結された君を私は二度手間だったが殺したんだ。これで繋がりは切れて特異点のキミは消滅するかと思ったが…どうもそうはいかないようだ。キミは生前レイシフトの適性が無かっただろう?どうも肉体を失うことで適性を得るようだ。肉体があったままでは転移できないようだね。だからカルデアにも戻れない。戻った時点で君のその意識は消滅する」

 

 

「え…?消滅って、ちょっと、それ、どういうこと……?」

 

 

「そうだとも。だがそれではあまりにも哀れだ。生涯をカルデアに捧げた君のために、せめて今のカルデアがどうなっているか見せてあげよう」

 

 

そう言うとレフの後ろに真っ赤になったカルデアスが現れた。

 

 

「君のために時空を繋げてあげたよ。聖杯の力だね」

 

 

「そん…な、真っ赤に…」

 

 

オルガマリーが絶望した表情でカルデアスを見つめる。

 

 

「さあ、よく見たまえアニムスフィアの末裔。あれがお前たちの愚行の末路だ。さあ、最期に君の望みを叶えてあげよう」

 

 

そう言うと、オルガマリーの体がに宙浮き始めた。

 

 

「君の宝物に触れるといい。私からの慈悲だ」

 

 

「ちょ―――なに言ってるの、レフ?や、止めて。お願い。だってカルデアスよ?高密度の情報体よ?次元が異なる領域、なのよ?」

 

 

「そうだね。ブラックホールか太陽か――まあどちらにせよ、人間が触れればそこは地獄だ。生きたまま無限の死を味わいたまえ」

 

 

「いや――いや、いやよ。わたしを、認めてくれる、セイバーが、日番谷がいて――、!セイバー、助けて!」

 

 

「了解だ」

 

 

瞬歩で駆け寄り、オルガマリーを抱きかかえて大気中の霊子を足場にしてそのまま宙を駆け上がる。

 

 

「――無駄な事を。どうせカルデアに帰れば死ぬというのに。君の凍結も私が打ち砕いた。

……まあいい。改めて自己紹介をしようか。私はレフ・ライノール・フラウロス。貴様たち人間を処理する2015年の担当者だ。

ドクター・ロマニ。学友として最後の忠告をしてやろう。カルデアは用済みになった。おまえたち人類は既に滅んでいる」

 

 

『…レフ教授。いや、レフ・ライノール。それはどういう意味ですか。2017年が見えないことに関係があると?』

 

 

「関係ではない。もう終わってしまったという事実だ。カルデアスが深紅に染まった時点で結末は確定した。貴様たちの時代はもう存在しない。カルデアスの磁場でカルデアは守られているだろうが、外はこの冬木と同じように燃え盛っている」

 

 

『…そうでしたか。外部と連絡が取れないのは通信の故障ではなくそもそも受け取る相手がいなかったのですね』

 

 

「ふん、やはり貴様は賢しいな。真っ先に殺しておけなかったのは悔やまれるよ。だがそのカルデアも2016年を過ぎればこの宇宙から消滅する。

もはや誰にもこの結末は変えられない。なぜならこれは人類史による人類の否定だからだ。おまえたちは進化の行き止まりで衰退するのでも、異種族との交戦の末に滅びるのではない」

 

 

そこでレフは言葉を切って、今度は目を大きく剥き出しにして手を震わせ演説するかのように話した。

 

 

「自らの無意味さに!自らの無能さ故に!我らが王の寵愛を失ったが故に!何の価値もない紙クズのように、跡形もなく燃え尽きるのさ!」

 

 

そう言ったところで、地面が大きく揺れ始める。

 

 

「おっと。この特異点もそろそろ限界か。……セイバーめ。おとなしく従っていれば生き残らせてやったものを。聖杯を与えられながらこの時代を維持しようなどと、余計な手間を取らせてくれた。では、さらばだロマニ、マシュ、48人目の適性者、オルガマリーに…日番谷君」

 

 

そう言ってレフは姿を消した。

 

 

「空間が安定していません…!ドクター!至急レイシフトを!…あ、その、所長は――」

 

 

「大丈夫だ、問題ない。やってくれ。オルガマリー、俺の言う事を聞いてくれ。そうすりゃ助かる」

 

 

「え――うん、でも、どうやって――」

 

 

『今急いでレイシフトを行っている!でもゴメン、そっちの崩壊の方が早いかもだ!その時は強く意識を持ってくれ!そうすれば何とか助かる!』

 

 

「オルガマリー、これをこうして――」

 

 

オルガマリーの状況についてはずっと考えていた。まさか凍結させた後に殺されたとは思っていなかったが恐らくこれでいける――俺の予測が正しければ、成功するはずだ。

 

 

「強く、願うんだ――生きたいって。じゃあ、やるぞ――」

 

 

「先輩、手を――」

 

 

「日番谷、手を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、今度は俺も手を握れる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォウの鳴き声を最後に、意識が暗転した。

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