機動都市Xをプレイされていない方も楽しめる作品作りを心掛けていきますので、良ければご一読頂ければ幸いです·····!
執筆・色塗り担当↓
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原案・キャラデザイン担当↓
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「はっ、はっ。」
自分の心臓が音を立てているのが分かる。
呼吸を忘れるほどに見入って。
思い出したように酸素を求める。
その繰り返し。
衝撃的だった。
世界が色めいて見えるって、本当だった。
そうとしか言えないのだから。
熱狂する街並みも、高く透き通る空も。
そして呆然と
いつもの普通でさえキラキラと輝いて、綺麗だった。
目が離せない。
これ以上ないくらいの没入感を味わわされて。
僕はこれからどうして生きていけばいいんだろうか。
でも、嫌じゃない。
冷え切っていたこころに火がついた気がした。
僕も。
僕だって……!
あれ……?
::::::
偶然だ。
偶然、通りがかっただけだった。
いつもの学校にいくための、いつもの駅前。
たくさんの人が並ぶ信号を渡って、5分後に到着する電車に乗ればいつもの日常。
その日いつもと違うことと言えば一つだけだった。ショッピングモールの前に人だかりが出来ていて、彼らは一様にモールに設置された、見覚えのない特大のディスプレイを
興味を惹かれ僕も視線を上にして……それで。
魅入ってしまった。SMCと呼ばれる、メカとヒトのタッグ同士が頂点を目指して戦う決闘。後で知ったが、その中でも
都会の
::::::
試合は始まったばかりのようで、天候は晴天。
雨が止んだあとのように水たまりがそこかしこに出来ていて、映り込む底抜けの青空が綺麗だった。
その中を少女が走る。水たまりを避けるたびに二つに
かなりの速度で走っているようだった。それでいて息一つ切らさない。
その一見冷たくも見える瞳は燃えるような熱を孕んでいる気がした。
雑然とした裏路地を障害物から障害物へ飛び移りながら走るその姿は何だか猫みたいだな、と思わず思った矢先。
ハッ、と少女は何かに気付いたように視線を巡らせ、直後、姿勢を低くし駐車されていた車の横に滑り込んだ。
一拍。白塗りの何かが少女の頭上を通り過ぎた。
路駐されていた車は溶断されたかのように少女の頭上数センチを真二つに断ち切られ、引火した車体からの爆煙が周囲を舐め尽くす。
画面越しにも関わらず、熱風が頬を撫でたような錯覚さえ感じるほどの大爆発。
しかし、黒々とした煙から飛び出る影一つ。
先程の少女だ。少し煤けてはいるが、全くの無傷だった。
──もうもうと立ち昇る煙で、巨大な人型のシルエットしか見えないが、何らかの攻撃を仕掛けてくる敵性体が現れたことは明白だった。
少女は手元の短機関銃で
しかし、攻撃は
と、
不意に煙が晴れた。
振り払われた剣は長大で、僅かにスパークの
そしてその剣を扱う敵手もまた威容を誇っていた。
剣と同じく白塗りの体躯。おおよそ人間と類似する形をしてはいるが、大きさが人の数倍。
7メートルはあるだろうか。
光る眼光は鋭く、たなびく旗は
腹の底からせり上がるような感銘《かんめい》が僕を支配する。
素人目にも分かってしまった。
一流の演武は、まるで舞のように美しくある事がある。幾人幾百によって
それほどに美しく極められた武が、ロボットによる戦闘という、現実の武道とは著しく掛け離れたそこにあった。
思わず
こころを鷲掴みにされた気分だった。
誰が乗っているんだろう。知りたい。
知りたい。
騎士がゆら、と揺らめく。未だ
瞬き、再び目を開く。
その一瞬で、騎士は瞬間移動とすら思えるほどの高速で少女に肉薄していた。あまりの速度に残影を引き連れているかに見える。
狭い道に逃げ込もうとしていた少女は、これにより退路を絶たれた様だった。
そして、追い詰めた騎士は純白の大剣を
ピリピリと焼け付くようだった、騎士による剣気。
その剣気が蒼色に
これが蒼き波動の正体。あらゆるものを切り裂き、飛ぶ斬撃。
射線上の全てを薙ぎ払い、ただ一点、少女へと向かう。
これまでの無造作に見えた破壊すらも全てがその一撃のための布石だ。
誘い込まれた少女の左右は既に
──避けきれない。
その場の誰しもが、僕も例外なく、そう思った。
何より斬撃の速度。いかに身軽な少女であろうと、避けきれるものではない。
「ニンちゃん! ! 」
その光景に息を呑んだ小柄な少女が叫ぶ。
彼女のファンだろうか。同様に幾人かが少女の名前を叫び、回避を祈る。
画面上のニンと呼ばれた少女は
明らかな隙だ。ニンに容赦なく迫る必殺の剣撃が、スローモーションで再生される。
対する少女は未だ瞑目したまま。
周囲にどよめきが走る。
違う。こんなものではない。
こんなものじゃ、無いはずだ。
「まだだ·····!!」
思わず言葉が漏れる。ここまで、諦めが良さそうには見えなかった。
いや、違う。諦めて欲しくないんだ。僕に希望を、見せて欲しい。
その想いに呼応するかのように少女が目を見開く。
脱力し、回避を諦めていた少女は··········しかし勝利は
おもむろに虚空に現れたウインドウを操作すると、手首に輝く逆三角錐が現れ、作動する。
瞬間、戦場に一陣の風が吹いた。
騎士の破壊により巻き起こされた爆煙と
そこにあったのは圧倒的な力に対抗する、新たなる力。
蒼色にスパークを放つ騎士の斬撃は、同じく蒼色をした球状の膜に阻まれ、硬質な音を響かせたのち呆気なく消滅した。
現れたのは先程の
二門のガトリング砲を備えた朱塗りの狐だった。
「きたきたきたきた……!」
観客のひとりが叫ぶ。これまで以上の死闘を予感し、
何も知らない僕でさえ拳に力が入る。
ここからが本番だとわかる。
これまでは
機動都市アルファを走り、ヒトの状態で目立たずに裏を取ろうとした少女……ニンと、それを読み、メカに乗って急襲した騎士……
ニンも相棒である
制御限界ギリギリまで速度を上昇させていくArthur。
ガトリングとミサイル、二種類の嵐で戦場の全てを弾幕で塗り尽くさんとするFirefox。
歓声がより一層増していく。
誰もが熱狂し、白熱する戦いに魅入っていくのだ。その熱量は留まることを知らない。
初春の肌寒さが残る街において、ここだけが季節を忘れていた。
「はは」
乾いた笑いが
表現する言葉を持たないから、笑うしかない。
それだって悔しい。今の僕にはたまらなく、悔しい。
こんなに輝く世界を知ってしまったら、これからの人生をどう過ごせばいい──!?
信号は歩行可能、不能を交互に示すけれど、今の僕にはなんの意味も持たないから。
周りの歓声がどんどん遠ざかっていく。人は増え、歓声も試合も更に加速していくにも関わらず。
意識が没入していく。見たい。もっと見ていたい。この戦いを。この世界を。
──これより始まるのは最も新しい
いくつもの出会いと別れがあった。
いくつもの希望と絶望があった。
成長があり、涙があり、彼らは最後に皆で笑えるのか、それとも。
物語が、始まる。