残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-   作:気力♪

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カナデとの街歩き

 今日も今日とて《Echo World》へのログインをする琢磨。VR剣道ではランカー間近だったのを少しだけ惜しいと感じているが、一位の()()()()()()の梅干権三郎の座にはまだまだ遠い。

 

 なら、気分転換も必要だろう。

 

 琢磨は決して表情には出さないが、命がかかっていることに対して軽すぎる意志の元動いていた。

 

「今日はよろしく、カナデさん」

「……行くよ、餌」

「了解」

 

 それに対して筆ペン改めカナデは、今にも人を殺しそうな真剣な表情のまま硬かった。しかし、それだけの殺意を内包しながらもその空気に違和感はない。

 

 そして、それでは()()()()と感じたカナデは、服装を変えることで対応している。

 それは、空気をよく通す紺色のマスクだ。

 マスクを纏ったカナデは、さながら女盗賊のような様相にまとめられている。そして、その服の内側に数多の暗器を仕込み戦うためにできることをやっていた。

 

「「転移」」

 

 そして二人は移動する。今回の戦いにおいて二人の役割は遊撃だ。

 

 アルフォンスと繋がりのあるタクマが餌となり騎士の中の”殺しに来る連中”を釣りだして捕縛する。あるいは始末する。

 

 生来のものと覚悟によるものでは根本は違うが、どちらも殺しに待ったをかけないからこそのチームアップである。

 

 そうして、タクマは歩き出す。記憶にあるルートをそのままになぞるように。

 

「しっかしこんな餌に引っかかるかね?」

『敵の内情次第でしょう。余裕があるなら尾行してくる、そうでないならこれまでと同じです』

「……まぁ、囮だし考えないでいいか」

『思考を放棄しないでください』

 

 などとタクマは自然体でぷらぷら歩いていると、街の様子が随分と変わっていることに気づく。

 昨夜は暗かったがために気づかなかったが、露天の中にちらほらと日本風のモノが現れている。そこの屋台など明らかにラーメン屋だ。

 

 タクマは気になったので少し覗いてみると、そこにあるのは紛れもないラーメンだった。色味からしてしょうゆベース。ファンタジー世界にそぐわないが、日本人としてはありがたい限りである。

 

 と、ここで気の向くままに食事にしてもいいのかもしれないが、あいにくとタクマには今(ポイント)がない。とある機能をアバターに追加するのに残りポイントを全て使い切ってしまったからだ。

 

「……こんなんなら現金ヒョウカに預けなきゃ良かった」

『しかし、拉致されてしまった場合邪魔ですよ? 硬貨なのですから』

「それなんだよな」

 

 そうして、脳内マップにその屋台の場所を記憶してタクマはまた歩き出す。

 

 次は、入植者たちがテントを張って生活していたというエリアだ。ユージ達が集めた話では、ある程度の間このあたりの家が壊されて空き地になったエリアに人々は住んでいたのだと。

 そして、すぐに環境を整えて今は持ち主のいない家々をグループにまとめた人々に渡したのだとか。

 

 ちなみにその家に入れる人々をなぜグループにしたのかは単純、家が大きいからだ。渡された家が()()()()貴族の館などであるために。

 

 そしてそこに住んでいる年配の使用人の方々に監視とこの国のことのレクチャーを頼んだのだとか。

 ズタボロになってもまだ強かなのはこの国の良いところだそうタクマは思った。

 

 と、わざと思考に隙を作っていると嫌な視線がちらついた。

 

 メディの魂感知で見てみると、その魂には強者のプレッシャーがない。入植者に反対する市民か何かだろうか? とタクマは思い、警戒をしつつもゆっくりと無視をしようとした時に石を投げつけられ、それを軽く払おうとしたその時に

 

 死ぬ前に感じた、魂への干渉を感じた。

 

 瞬間的に生命転換(ライフフォース)を発現、風の刃で石を弾いて全力で後退する。

 

『マスター!』

「わかってる! 五感は正常、痛み無し! だが、確かに狙われている!」

 

 そうしてタクマが索敵に移ろうとした時にまたしても投げられる石。今度は2つ、どちらもなかなかのスピードだった。剣で弾くと死ぬだろうことはわかっているために、またしても回避のために移動する。

 

 そうしてルートを外れていると、

 

「今度は大人かよ、操られては……いないな」

 

 そうして、タクマはいつの間にか囲まれ、多くの人に石を投げられてしまう位置に追い込まれていた。

 

 多くの大人たちは、皆一様にこの世界の住人の服装。だが2、3人相当鍛えているのだとわかる者が混ざっている。

 

 おそらく彼らがこの騒動の首謀者役だろう。

 

「貴様、稀人のタクマだな?」

「お前のせいで俺たち入植者は大変なことになってんだよ!」

「責任を取れ!」

 

 意味も分からないことへの責任を取らされることになるのは御免だが、ここは情報収集をする場面。堪えよう。

 

 そう、面倒だから全員殺すという選択肢が頭に浮かんだタクマは一度深呼吸する。

 

 いまここには、カナデの目もあるのだ。そうそう無様は晒せない。

 なのでタクマは

 

「質問です。俺が何をしたんでしょうか」

「とぼけるな!」

 

 

「お前が偽王子に取り入ったせいで、俺たちは家を追われたんだよ!」

 

 この時点で話がややこしく、かつ面倒なだけだと判断したタクマは「あ、そうですかお疲れ様です」と言って第0形態へとアバターを戻す。

 

 それを目で追っているのは鍛えている3人。今度はタクマもカナデも彼らの顔を正しく認識した。

 

「消えた!?」

「見えてないだけだ! 魂を込めた石を投げろ!」

 

 そう言う人と、明らかに俺を見て狙って石を投げた人の二人が大きく動き、対して最後の一人は淡々と、しかし逃がさないようにしている。

 

 周囲に逃げ込める建物は無く、迎撃するしか道はない。

 

 ()()()()()

 

生命転換(ライフフォース)放出(ディスチャージ)

 

 タクマの背後から放たれる水が弾丸となり、投げられた石のすべてを弾き砕く。

 心の在り方が攻撃的なものに変わったカナデの技である。

 

「もう一人!?」

「稀人だとは限らない! 臆するな! 怒りを示せ!」

 

「とりあえずお前は黙れ」

 

 タクマは、背後からの水を感知した瞬間に体を屈めて前に進み、包囲網の中央にいる首謀者の男に殴りかかる。しかし相手もさるもの、反射的に動いたガードにて意識を刈り取る顎を揺らす拳は不発に終わるかに見えた。

 

「「グッ!?」」

 

 しかしその瞬間に二人の体に走る激痛が原因で、それは覆った。

 覚悟をしている者とそうでないものに。

 

「一回それで死んでんだよ、こっちは。けれど痛みは痛みでしかない。耐えられるさ」

 

 そう口では言うが、タクマの精神はたったの一瞬で相当のダメージを受けている。

 普通は、痛みだけで人は動けなくなるものなのだ。生き物の生物的な機能として。それを無理やりに動かしたのだから、しっぺ返しは来るものだ。実際今から戦えと言われたら2秒と持たずに殺されるだろう。それがたとえ初めて剣を握った者でさえも。

 

 だがそれは戦えばの話。首謀者の首に剣を添えて改めて交渉を始める。

 

「メディ、任せる」

『はい、マスター』

 

 殺意を示して威圧をかけるタクマ。研がれていないそれは人の不安を掻き立てる邪悪なものであり、本当にこれから殺すつもりなのだと錯覚させるほどには真に迫っていた。

 否、真であった。

 

『御覧の通りマスターはご立腹です。諦めて去るならばそちらの2名以外の安全は保障します』

「仲間を捨てろってのか?」

『そもそもあなた方は踊らされているだけでしょうに』

「好きでこっちで踊ってんだよ俺たちは。元戦士団の皆は仲間だ。入植者に記憶はないが、絆はあるんだよ!」

 

 その言葉に否と唱える者はいない。強い絆と言うべき関係がそこにはあった。

 

 だからこそ、彼らは動き出した。

 

 この状況でタクマを折れなければ入植者に未来はない。それが誰よりもわかっているのはこのソルディアルに生きていた記憶を持つ彼らなのだから。

 

「皆、下がってくれ。後は俺たちがどうにかする」

「オレたちに託してくれよ。仲間として」

 

 その言葉と共に前に出る二人。そしてゆっくりと去る人々。

 

 そうして落ち着いたところで、改めて話を再開しようとする。だがその前に確認しておかなければならないことが琢磨にはあった。

 

「……この激痛は誰の仕業だ?」

「激痛?」

 

 その反応にとぼけたような感じはない。

 

『マスター、別口ではないかと』

「そう来たか、また頭使うようなことになりやがって」

「今、補足されてる?」

『おそらくは』

 

 カナデの疑問にメディが答える。おそらく昨日タクマを殺した暗殺者はまだ近くにいる。今もタクマなら剣を合わせられると感じているがゆえに狙撃を仕掛けてこないのだろう。タクマはそう考えて体の力を抜いていた。いつでも最高速にたどり着けるように。

 

 そうしていると、タクマのた魂に干渉されている感覚が立ち消えた。どうやら仕掛けることなく逃げ出したようだ。

 

「じゃあ悪いんだけど、俺が狙われる本当の理由を教えてくれるか? 戦士団の人」

「……表の理由は嘘ではない。稀人の大多数が今生きている王子を本物だとして動いているからな。いつ消えるかもわからない戦士団を頼れはしないのだよ。だがもう一つ理由はある。……どこかはわからない。だが国の上層部に稀人を消したいと思っている人間がいる。その的になったのが先の戦いで王子と友誼を結んだ君だった。という話だ」

「……国が相手かよ」

『人気者ですねマスター』

 

 その、欠片も後悔していないメディの言葉に”同感だ”とタクマは苦笑する。

 

「余裕?」

「個人として楽しみたかった。人の命がかかってなければなぁ……」

 

 などと会話しながら多くの具足が石畳を踏む音を聞いてゆったりと構えるタクマ。

 

 戦士団か騎士団か、どちらにせよタクマ達にとって敵であることに疑いはないと思っていたその時に。

 

「ならばその疑念、私が晴らそう。稀人とはいえ、私の友だ」

 

 やってきたのは、生き残りの騎士たちとプレイヤーたちを従えているアルフォンスだった。

 傍らにヒョウカとじゅーじゅん、ユージが控えていることで稀人とそうでないことを区別などしていないのだと言外に表しながら。

 

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