残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-   作:気力♪

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仮説

 戦いは終わった。

 

 足柄刑事から聞いた話によると、犠牲者は三百人以上。目撃者の話によるとマンション一つが消し飛んだのだと。

 

 光の剣によって。

 

 それからアルフォンスはゆっくりと生き残りを探し出して丁寧に殺していった。

 

 そして、しばらく経ってその人と目があった瞬間に鎧を纏って空を駆け、どこかに飛んでいったのだと。

 

 タクマは、それがアルフォンスなりの抵抗だったのだと理解できた。

 最初に全力を出す事で自身の力を使い切り、一人一人に時間をかける事で自分を殺し得る誰かを待ち望み、そしてそれを感じたからこそ切り札であり()()でもあるゲートを使ってやってきたのだろう。

 

 それがタクマであると確信していたのかは、わからないけれど。

 

「なぁメディ。救われたな」

『はい。アルフォンス様が十全のコンディションであったなら、私たちは死んでいました』

「……助けたかったな、心くらいは」

『命は、いいのですか?』

「手遅れだろ、アレは」

 

 ああなったなら殺すのが情けだと、なんの迷いもなく割り切ってしまう琢磨はやはり人として終わっていた。

 

 けれど、今はそれだけではなかった。

 

 勝たなくてはならない時に、琢磨は勝てなかったのだ。

 その事が、琢磨の心の中に火を付ける。鬼子としての殺戮本能と、まだ種火のような暖かいものに。

 

「メディ、修行しようか」

『はい。では押し入り弟子を行いますか?』

「ああ。ダイナ師匠の謎とかはもうどうでも良い。強くなりたい。強く在りたい。自分の鬼を自分の意思で貫く為に」

『了解です』

 

 そんな言葉を述べた琢磨とメディは、バイクに乗って朝焼けを見ていた。

 

 ■□■

 

 アルフォンスにより消しとんだマンションの中を見回っていた足柄と栗本。現地の所轄との合同作業だったが、足柄はすでに吐き気を堪えるのに精一杯だった。

 

 その理由は、生活感だ。

 

 つい先ほどまでそこに誰かがいた。そんな暖かさがずっと伝わってくるのだ。明日何をしようかと予定をARウィンドウに描いていた人もいる。

 

 その全てが、帰らぬ人となっている。

 

「足柄、ゲームの中の方に専念するか?」

「……いえ、ここで踏ん張らなきゃ格好いい刑事にはなれないですよ」

 

 そう言った栗本とて、余裕はない。それもそうだ。彼らは特殊技術に対してのカウンター部署である。このようなオカルトを相手にした経験は栗本にもない。

 

 けれど、命を救ったというかけがえのない経験が、足柄より栗本を大人にしていた。自信という形で。

 

「……おい足柄、コレお前のゲームのマップじゃねぇか?」

「僕のじゃないですけど、確かにこれは王都のマップですね。穴だらけですけど、主要な所は埋まって……前回死亡時間?」

「足柄?」

 

 瞬間、エンジンに火がついたように思考が回転する。

 これまでの4回の異界発生の中で、イレギュラーと思われるのはクリアした後の一回。

 

 それを除いた3件に関連性を無理やりこじ付けた仮説を作り出す。

 

 まず、1件目はタクマの元で発生した。1件目の異界発生の中心点に付近にいたのを偶然じゃないとするならば、それはプレイヤーを狙い撃ちにした何かだということ。まずはそこを仮定。

 

 次に、2件目。監視カメラ映像網により見極めた中心点近くにいた人物はプレイヤーだった。ユーザー名は不明だが、その顔は先日の王都で見ている。記憶がなく話は聞けなかったが、称号により彼がエリートサラリーマンであることは調べが付いている。

 

 2件目のゲームオーバーは、王都の外側からの狼の群れの襲撃と内側からの魔物の暴走。そんな中彼は商人プレイをできないかと試行錯誤していたと彼の仲間は言っている。

 

 目の前のマップを見ると、商業施設の密集地があるのは城壁から王城までの中間。一度狼を躱せたなら、かなりの生存率があるだろう。

 

 それこそ、最後の一人になれるくらいには。

 

 そして今回の4件目。このプレイヤーはどうにも図書館に入り浸っていて歴史を調べていたらしい。それが原因か、あるいは本人の潜伏スキルが高かったのかはわからないが、一度目の虐殺から逃げ延びている。

 

 だからこその、他プレイヤーと20分近く離れた死亡時刻だったのだろう。

 

 そして一度目のゲームオーバーに戻る。あの周で最後まで生き残っていたのは、戦っていたのは琢磨である可能性が高い。というか、琢磨の録画データだけ1時間近く他より長いのだから当然だ。

 

 故に、考えられる仮説は1つ。

 

 二人目のプレイヤーはさほど世界の謎に関わっていない。

 琢磨は戦ったがそれだけ。

 この部屋の主は、謎を解こうとしたが戦いはしていない。

 

 そんな三人に繋がりを作るとするならば

 

 

 それは、ゲームオーバーまでに戦い抜いた最後の一人(ラストワン)である事だろう。

 

「先輩、この現象が誰を狙ってるのか仮説ができました。理由まではわかりませんけど、共通点くらいは」

「……ったく、ちょっとは落ち込んでろ新入り。先輩の立つ瀬がないだろうが」

 

 そんな言葉と共に、仮説検証の為の作戦が練り上げられるのだった。

 

 ■□■

 

 そして翌日。学校を盛大にサボり深く眠った琢磨は放課後になってやってくる端末への連絡を取る。それは、珍しく音声通話ありのグループトークだった。

 

最後の一人(ラストワン)作戦?」

「そう。今回の周ではクリアは二の次でそれを把握したい。仮説でしかないけど、ゲームオーバーになった周の最後の一人が現実に出てくる的だって仮説がウチの方から出てきててね。偉い人は凄いよ本当」

「……なら、私も?」

「柴田ちゃんは別ね。あれは集団が同時に最後の一人になったし、他の分かりやすい目印もある。MVPってのがさ」

 

 そんな言葉を言う足柄は、言葉は軽く表情も軽薄だったが、長年殺し合ってきているタクマにはわかった。頭の中はどう殺すかしか考えていないサイコモードに入っていると理解できている。

 

 このじゅーじゅんという人物は、やはりVR剣道に染まった人物であるのだ。

 

「……それで、被害者は?」

「……流石に箝口令はもう無理だから、このゲームのことは隠して公表するって。だからこそ、本気でこの仮説の証明はしなきゃならない。ダメージコントロールができるかどうかは市民の心と体の安全に直結するから」

 

 そんな言葉に黙って肯く氷華以外の三人。対して氷華は、まったく別のことを考えていた。

 

「……自動的な、コントロール。なら、それは……?」

「氷華?」

「なんでもないわ。少し頭の悪い想像が頭をよぎっただけよ。……個人が世界を相手にするなら、どういう初手が必要なのか、なんてね」

 

 その言葉を最後に会話は途切れ、雰囲気を変える為に足柄刑事と裕司さんが明るい話題に変えようと投稿動画の話をした。

 

 プリンセス・ドリルというあの面白系お嬢様の動画はなかなかの再生数を叩き出しているらしい。前回のゲームオーバーの時は入植者達と現地NPCの青少年グループ相手に夜間学校を始めようとしていたらしい。

 

 その1回目を始めようとしたときにアルフォンスに襲撃され、コンビで合わせて数合の善戦虚しく殺されてしまったが。

 

「なんというか、自由に生きてんなこの人」

『ですね。攻略とは全く違う方向に、人を笑顔にするという形で戦っている。素晴らしいと純粋に思います』

 

 そんな会話を最後に、チャットを切った琢磨。

 

 食事やシャワーなどの身支度を整えて、ゆったりとベッドに横になる。

 今回からは攻略に関わらず修行に専念することにした琢磨は、ダイナがどこに現れるのかを逆算する。

 

『入植者エリアの近くではありませんね。子供達でもそれくらいは考えるでしょう』

「酒場の近くに限定しても結構な範囲か、聞き込みするか?」

『いえ、あの顔隠しの違和感を感じれる人は少ないのでしょう。以前同行したときにさほど目立ちはしませんでした』

「なら、出たとこ勝負だな。魂感知、頼むぞ相棒」

『私としては、さっさと知覚を自覚してほしいものですけれどね、相棒(マスター)

 

 そんな会話をして、琢磨は《Echo World》へとログインした。

 

 ただ一つ、強くなるという曖昧で、しかし心の命じるその目的の為に。

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