残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-   作:気力♪

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隠し部屋

 突然に閉められたドアに驚くロックスと自然と殺し合うためのスイッチを入れるイレース。

 

 そして、扉を閉じた本人でありながら剣を抜いたタクマ。

 

「皆さん、背後を気にしたら死にます」

「ここが敵の巣ってこと? あの結界は魔物を阻むものに思えたけれど」

「……そうか、扉だけが無事な可能性か」

「はい。入口は一つじゃないんですよこの空間。前に来たことある所なんで」

 

 そんな言葉に頷いて盾を弓を構えてくれる二人。使える駒だとタクマは思う。タクマ自身も使われる駒だと自覚しているのに何をいうかという話なのだけれども、

 

『敵対する気は、ないのだがな』

「……さすがに信じられん。こちらは騎士たちに追われる身だ」

「一人殺しちゃってるしね。タクマが」

「殺しに来てくれたんなら殺し返さないと失礼じゃないですか」

「気狂いの理屈を語るな……」

『そうですマスター、気が高ぶっているのを自覚してください』

「そうはいっても習慣だし」

「殺しを習慣にするな!」

「良いじゃないロックス。敵は殺す。シンプル私は好きよ」

「なぜそこで好き嫌いの話になるのだ。俺は社会適合性の話をしているのであってだな……」

「うわ面倒なモードに入った。こういうロックスはほっとくとして……タクマー、攻める? 殺す?」

「気づかれてるんでまず無理ですけど。だからこそ殺しに行きたいですね。死なば諸共って」

「稀人も王国に染まってるわねぇ」

「いえ、これはVR剣道(殺人教習所)で叩き込まれました。相打ちこそが基本にして奥義なりって」

「殺人教習所とは……どれだけ恐ろしい国なのだ稀人の国は」

 

 などと敵の前で止まらない軽口。というかもはや雑談。

 

 メディはいちいちツッコミに回ってくれるロックスに対して感謝の念を抱きながらも傍観していた。

 冷徹で通っているサブリーダーもこれには困惑だ。

 

「君たちは漫談をしに来たのか?」

 

 と、満を持してやってくるはずだったアルフォンスすら言うのだった。

 

 そんなぐだぐだが、彼ら3人と王子陣営の邂逅であった。

 

 ■□■

 

 ところ変わらず、タクマ達が入ってきた門、通称”開かず盾の門”の前で対峙するタクマ達。

 

 ロックス達は当然騎士たちなど信用していない。意図的に狙われたからだ。

 しかし、タクマはアルフォンス自体は信用している。

 

 なにせ、このアルフォンスは”殺された”のだ。逆説的に今は味方という事だろう。

 

『けど、騎士たち全員を信用できるかって言われたら微妙なんだよなぁ……』

『マスター、アルフォンス様が殺された理由について心あたりは?』

『……強いからだ。この前のサビク・アルフォンスは一人で国を滅ぼした。そういう強い人形を欲しているんじゃないか? マリオネティカの持ち主は』

 

 なお、強いアルフォンスでなぜ世界を滅ぼすかに関しては全く考えていないタクマである。考えてもわからないことを考えるのを避けているのだ。脳筋である。

 

「……まあいいや。ちょっと休憩したら出ていく。だから邪魔をしないでくれ。ってのは通じるか?」

「あいにくと通じないな。……信頼できる稀人を探しているんだ。なぜ開かずの門が開いたのかは疑問だし、そもそも君たちが何をしているのかを僕は知らなくてはならない。この国の王子として」

 

 その言葉は、真摯なものだった。

 その言葉に嘘はなく、この国を背負いたいという願いがあった。

 

 強い、輝きが。

 

 しかし、聞いている3人はいずれも曲者揃いであった。

 

「で?」

「おいイレース、仮にも王子の話なのだから真面目に聞け」

「だってロックス。私たちにメリットないじゃない。信頼できないのに背中預けるとか死ぬじゃない」

「イレースさんに同感です。アルフォンス側の騎士に混ざってる可能性って絶対にありますから」

 

 そんな言葉に疑問符を浮かべながら、のっぴきならない状況だと理解するアルフォンス。

 

「ならば、君たちに近づくのはやめておこう。タクマはタクマなりに敵を殺すために動いているのだろう? それを信じよう」

「ああ、ありがとう。アルフォンスも気をつけてな」

「当然だ。……しかしそれはそれとして私は体を動かしたい気分なのだが」

「やめろ。今はお前に手の内を明かしたくないんだよ」

「む、新技の特訓中か?」

「目にもの見せてやるよ。首を洗って待ってろよ?」

「楽しみだ」

 

「さすが王国ね」

「王子が何故に悠々と殺し合いをしようと話すのだろうか……」

『普段のロックス様は王国の方らしくありませんね。戦いの最中ではあれほど頼もしいというのに』

「鍛えている。それくらいはやって見せるさ」

 

 なんて会話をしつつ、しれっとアルフォンスに矢の補充を頼むイレースに、体が冷えないようにストレッチをするタクマ。かなり自由な二人にため息を吐くロックスであったが、異常が多数派であるこの場において、ロックスの比較的常識的なふるまいはむしろ異常だった。

 

「二人とも、十分に休めたか?」

「ええ、万全よ」

「俺もです。じゃあ、皆さんによろしくな。敵が混ざってたら殺すけど」

「タクマ、それには及ばない。彼らの思いは本物だ。が、それが邪悪の罠だというのなら、僕が殺す。責任は渡さない」

「そっか。そりゃありがたい」

 

 そうして別れようとするその時に待ったをかけた者がいた。

 それは、タクマの中にいるメディだ。

 

『すみませんアルフォンス様、少しよろしいでしょうか?』

「メディ嬢、何だい?」

『この部屋にはどのように侵入したのですか? 門の存在から考えて他に入口があるのはおかしいと思うのですが』

「護衛長殿から教わったのだ。騎士の詰め所にはここへの隠し通路があるのだと。……入るのには面倒な仕掛けがあったがな」

「仕掛け?」

「王印をかざさなければ開かぬ扉があるのだ。なので、ここに入るのには僕か父がいないといけないのだ」

 

 その言葉に、鞘にある盾の紋章を思い出す。だが、王印とやらであの扉が開くのならそれとは違うモノなのだろう。そうタクマは思ったが、そもそも王印を見せてもらえば良いとも気づく。

 

「その王印ってのは見せてくれたりするか?」

「形はないさ。魂に刻まれているのだからな」

「なら失敬」

「なるほど、成長が早いなタクマは」

 

 そういってタクマは魂視にてアルフォンスを見る。すると、その胸には確かに刻まれていた。剣のような紋章だった。

 

 確かに、胸に印があるのなら仕掛けにかざすのは面倒そうだとタクマは思った。

 

「もういいか? 王印は見せるのが面倒なんだ。力を抑えなければ掻き消えてしまう」

「ああ、ありがとう。魂に剣が刻まれてるとかさすがの王族だな」

「僕はまだまだだよ。父上には及ばない」

 

 そんな言葉を最後にタクマ達は門を開いて外に出た。すると、自然に閉まる扉にかかる鍵。

 

 この鞘を持つものと一緒じゃないと入ることを許しはしないようだ。

 

「しっかし何なんだこの鞘の印」

「何言ってるのタクマ」

 

()()()()()()()()()()

 

 その言葉に、”……なんか変なのだな! ”と思考停止したタクマ。頭の中ではメディがあれこれ考えているが、まぁ後で考えればいいだろう。そんな楽観的なことを考えていた。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「ええ、体がなまっちゃいけないものね」

「あの程度で鈍る鍛え方していないだろうに」

 

 そして三人は歩き出す。魔物に堕ちた蘇りの騎士たちを殺しながら。

 

 ■□■

 

 そうして、多くの騎士を殺し直して進んだ最奥。

 

 そこには、仰々しい門が存在していた。

 

「あからさまにゴールですけど、魔物も騎士もどっから湧いてきたんですかね?」

「この奥がモンスターの巣に300G!」

「これでそちらに賭けないものなど……」

「じゃあ俺はモンスター生産のゲート使いの寝床に400で」

「さらに妙な推論を加えるな! 収集がつかなくなるだろうが!」

 

 そうしてドアを開けようとするも、まったくもってびくりともしない。

 

 そしてこじ開けるかと剣を振るおうとした瞬間、何かを察知してタクマは扉から飛びのいた。

 

 そして、タクマがいたい位置に存在しているのは剣。扉を透過してタクマの命を奪おうと放たれた刃だった。

 

「ッ!? このゲートは!?」

「それだけじゃない! 扉を抜けて何かが団体で気てる! 数は数えたくない!」

「いったん立て直す! 放出(ディスチャージ)!」

 

 放たれた重力場が3人の前の魔物、戦士、騎士たちを押しとどめる。

 

 本当に数えるのも馬鹿らしい数の敵だった。

 

 そしてそのすべてが同一の邪悪のゲートをくぐろうとしている。すでにゲートをくぐっている透過の騎士イービーでさえも」

 

「これは、死んだな」

「けど、ここで止めなきゃもっと死ぬ」

「……命の張りどころか!」

 

 そんな言葉を最後に残してタクマ達は武器を構えて決死の抵抗を試みた。

 

 敵のゲートは皆一様に戦士長の使った闇泥人間のゲートと同じだ。

 

 それを殺すには、イレースの生命(いのち)の溜めうちしかない。魂視にて都合よくコアが見つかるなどという事もない。

 

 ならば、もう乱戦の中で弱点を誰かが見つけてくれることを祈るしかない。

 

 それが自分でなくてもいい。そう3人は思っていた。

 

 たった半日にも満たない短い絆に、賭けて。

 

 

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