残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります-   作:気力♪

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無意識の行動

 敵の向かう先は分かっている。封印の間だ。

 

 故に、タクマは丁寧に深呼吸をして魂を整える。痛みでどうにかなりそうなものを、ただの気合いで押さえ込む。

 

 そうして、真っ直ぐに立ち直ったタクマは、第0形態へとアバターをシフトして、玉座の間から垂直に落下する。

 

 衝動と魂の、導くままに。

 

 そして、封印の間にてラズワルド王の戦いを見る。

 

 サビク・アルフォンスはアルフォンスの体を使い捨てるように戦っている。そしてそこに放たれる暗殺者のゲート能力。痛覚を倍増させるもの。

 

 捨身の相手を手傷一つ負わないで倒すのは、難しい。ラズワルド王ならば体がアルフォンスだからと躊躇いはしないだろうが、それでもコンディションから考えて傷くらいは負うだろう。

 

 ならば、今の自分に必要なのはこのゲート使いの排除だ。

 

 実力差から考えて、確実に命を取れるとはタクマには思えない。あの暗殺者の技量は相当に強いのだから。

 だが、ゲートが緩めばそれはきっとラズワルド王の勝機になるだろう。

 

 故に、タクマは極限まで殺意を抑え、音を抑え、魂を抑えて、暗殺者に切り掛かった。

 

「ッ⁉︎」

 

 その奇襲に対して迷わず回避を行う暗殺者。しかし、その顔に傷をつけることができ、彼の顔を隠していた仮面を叩き落としていた。

 

 それが、命取りだった。

 

「……エディ?」

 

 その、信じられないモノを見た衝撃がラズワルド王の隙を作る。

 

 その、決して見せたくなかった事実が、暗殺者の隙を作る。

 

 その二つの隙を、タクマとサビクは見逃さなかった。

 

 暗殺者、はタクマにより殺され。

 ラズワルド王は、サビクにより袈裟に切られて重傷を負った。

 

「……死ね」

 

 そして、今までその力を押さえ込んでいたのは誰かを思い知らされた。

 

 溢れ出る魂。研ぎ澄まされた剣。それがアルフォンスの体を両断し、続く太刀にてサビクの本体であるコアが両断された。

 

「……王様!」

 

 その、命を投げるてるかのような出力に今まで集中故に沈黙を守っていた王妃が叫ぶ。

 

 それにより、封印への集中が僅かに解けた。

 

 そこを、邪悪は狙っていた。

 

「ガハッ⁉︎」

 

 突如空中に現れたゲートから伸びる闇色の光。それは違わずに王妃を狙い放たれ、それをラズワルド王が背中で防いでしまった。

 

「情があるからそうなるのだよ、剣王。生命転換(ライフフォース)過剰伝達(オーバーロード)

 

 その闇の剣はラズワルド王を闇の炎にて焼き尽くした。両腕は焼けただれたように使い物にならず。両足は形があるのが不思議なほどだ。

 

 そしめ、闇色の光が突き刺さった胴はには、致命傷だと遠目ですらわかる大穴が開いていた。

 

「王様!」

 

『タクマ少年、少しの間エリーゼを頼む』

「了解です。御武運を」

 

 そんな魂での声に、琢磨は心にもない声で応える。

 

 このままでは絶対に勝てないと、タクマは判断してしまっているからだ。

 

 だが、どうせ死ぬならこの衝動には任せたくない。殺すだけでなく、守るフリくらいはしておこう。そんなちっぽけな理由だった。

 

 タクマは、命に美しさを感じてはいなかった。

 

 それでも、美しいと感じたいと思っていたのだ。少なくとも表面上は。

 

 

 そうして、王妃をタクマは背中に庇い剣を構え、ラズワルド王は最後の命でゲートを開き。

 

 闇の剣の出てきたゲートからは、闇を纏ったかのような黒騎士が現れた。

 

「なぜ、黙していなかった?」

「あいにくと俺はとっとと死にたいんだよ……だから、手っ取り早く聖剣使いを見つけたいって話に乗った。それだけだ」

「今を生きてたくはないのか?」

「もう十分すぎるほど生きたさ、ラズワルド」

「ならば、ここに引導を渡そう。我が友の、残響よ」

「うるせぇ。お前が死ね」

 

 そうして、行われる剣戟。技を突き詰めた先にある力押しの応酬。小手先では何も変わらない、桁違いのスケールのパワーとパワーだ。

 

 だが、決着はすぐについた。

 

 これまでの戦闘のダメージが、ラズワルド王を襲ったのだ。

 

「終わりだ」

「ああ、終わりか……などと、諦めはしない」

 

 それでもラズワルド王は剣を振るう。剣城が弾かれたのなら拳を、腕が消し飛んだのなら足を、足が刻まれたのなら歯を。

 

 そんな、何がなんでも殺すという意志だけで、ラズワルド王は戦いを続けた。

 

 その姿にこそ、タクマはなにかを感じた。

 

「貴様は、本当にいつもいつも!」

 

 そんな言葉の苛つきが感じられた時。

 

 タクマは、踏み込んでいた。

 

 あと先どころかなぜ踏み込んだのかすらわからない理外の行動。それはいつものように最適化された行動ではなかったが、それでも黒騎士の片腕を撥ね飛ばすことをしてのけた。

 

「なにやってんだろ、俺」

 

 そんな言葉が、返された闇色の光にて消しとんだタクマの最後の言葉だった。

 

 ■□■

 

 そうして、タクマの帰還とともに始まるリザルト会議。どうやらタクマは自身が戦っているうちに最後の一人(ラストワン)になっていたようだった。

 

 だが、そのリザルトの内容をタクマはほとんど聞いていない。それほど、何故か体が飛び出した理由がわからなかったのだ。

 

 殺せるから飛び出した。それならば迷いはなかった。

 

 守りたいから飛び出した。そんな殊勝な心はタクマにはない。

 

 そんなことばかりを考えていたら。全力のビンタがタクマを襲った。

 

「タクマくん。私を見ないで誰の事を思っていたのか教えてくれない? ソイツを踏みにじるから」

「……ヒョウカ」

「なにがあったのか話してよ。私には」

 

 そうして顔を上げると心配そうにタクマを見ていた仲間たちがいた。

 

 あの自分の事でいっぱいいっぱいのカナデですらコレなのだから、相当なのだろうとタクマは思った。

 

 そんな皆を、殺してみたいと、殺し合ってみたいと思いながら『それがあなたです。受け入れましょう』とメディの声の元、タクマは自身の感じた事を交えて今回の週の事を皆に話した。

 

「……いや、泥に汚染されてから殺意が止まらないって、病院行ったの明太子」

「行きましたよじゅーじゅんさん。さすがに」

「けどタクマくん、大なり小なりそういうところあったじゃない」

「おい、なんかすげぇ事言ってるぞお前の彼女」

「彼女じゃないですよユージさん」

「ええ、もっと深い関係だもの」

「お前は変に流すなヒョウカさん」

「まぁ、大丈夫になったなら私は良い」

 

 そんなカナデの言葉と共に、タクマの頭が切り替わる。

 

 そう、これまでのことはある意味前哨戦でしかないのだ。

 

 本当の戦いは、これから。

 

「それで、今回の最後の一人(ラストワン)は……最後に来た明太子とミセスのどっちだろうね?」

「録画で確認できないんですか?」

「駄目よ。録画が見せるのはワールドの記録だけ、私はロビーに長いこといたから、録画からの逆算でタクマくんとの時間差を判別するのは不可能よ」

「なら、二手に分かれようか。ヒョウカちゃんは……病院か。抜け出せる?」

 

 そのじゅーじゅんの言葉に、ヒョウカは自慢げに言う。

 

「私の病室のセキュリティを舐めないでくれるる? 一度も脱走に成功したことはないわ」

「駄目じゃねぇかよ」

 

 もちろん、即座にユージ突っ込まれたが。

 

 それから、全員が考えた手段はシンプル。

 

 二手に分かれるのだ。

 

 タクマは栗本刑事との二人なので、実質タクマと他全員だが。

 

「一応聞くけど、なんで俺一人何ですか?」

「逆に聞くけど、何でだと思う?」

「後ろから切られたくないからですかね?」

「半分正解。もう半分は、強いから。明太子が当たりなら最速最短でコアになってる奴を潰せる。そうじゃないなら人数使っての防衛戦。明太子は奇襲役ね?」

「おかしい、俺一人にかかる仕事が重すぎる」

『それだけ、強くなられたという事ではないでしょうか?』

「まだゲート開けてないんだけどなぁ……」

 

 そうして、夜が来る。

 

 これまでの経験から、異界が現れるのは深夜。そこに、病院一本の道で繋がっている自然公園の二箇所で待ち構えることになった。

 

 互いの距離は、約3キロ。自然公園の方のロケーションを優先した結果だった。

 

 迎撃の準備は、できていた。

 

 少なくとも、現状をこれまでの経験から予測していた全員は、そう思っていた。

 

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