残響世界の聖剣譚 -VRMMOで鍛えた魂で侵食されるこの世界を守ります- 作:気力♪
タクマがデスペナルティに陥ってから、数分も経たないうちに多くのプレイヤーがロビーへと戻ってきた。
あるものは、空襲によって。あるものは、空襲後に錯乱した民兵によって。あるものは、鎮圧しようとした騎士や兵士の攻撃によって。
それぞれ殺されて、このロビーへと戻ってきたのだ。
「……横槍入れられたか」
『そのようですね。死んだ皆さまの会話から察するに、相当な混乱が起きているものかと』
「──ええ、その通りですわ」
そう、声をかけてきたのはプリンセス・ドリル。
その容姿は、ボロボロであった。同行していた長親も同様だ。
「あの黒づくめの弓女、やりたい放題でしたのよ。遠くから民衆ごと私たちを爆撃したり、接近した! と思ったら瞬間移動していたり。挙句の果てはあの空襲ですわ! 何がしたいのかさっぱりですわ」
「俺たちは門にいた騎士のバリアーのようなゲートで守られたので命は無事だったのだがな」
『そんなゲート使いがいたのに、よくマスターの戦いに横やりがありませんでしたね』
「「いや、あれに手出しは無粋だろ/ですわよ」」
「……どういう風に見られいていたんですか、俺とアルフレシャは」
「率直に言って、愛し合っているようでしたわ」
「本当にどう見られていたんですか!?」
「ああも心で繋がる演舞を見れば、そうも思う。なんなら俺のログを見るか?」
「……恥ずかしいので遠慮しておきます」
その言葉に、長親はふと警戒心の抜けた笑みを浮かべた。
「どうしましたの長親さん。気持ち悪いですわよ?」
「……お前の見る目を見直した。それだけだ」
「まぁ!」
そんなドリルの言葉に、顔を背けることで意志を示す長親。恥ずかしいのだろうかとタクマは思ったが、それを口にはしなかった。
それよりも、今感じている背筋が凍るような、とても身近だった錯覚の方が重要だからだ。
「こんにちはタクマくん。とても素敵なダンスだったわね」
そう声をかけてくるのは、Mrs.ダイハードことヒョウカだ。
タクマのことを異性として、婚約者として、好きだと宣った女である。
「ああ、久しぶりヒョウカ。なんでそんな怒ってるんだ?」
『マスター、その返しはマイナスです』
「”私の”タクマくん。あなたは”私”を放っておいてどこの馬の骨とも知れない人魚とどうしていたの? ”私の”タクマくんはまさか愛を語り合っていたとでもいうのではないでしょうね?」
「……私って多くない?」
「話を逸らさないで」
「いや、ただ殺し合ってただけなんだが」
「うん、
「一応聞くが、なんでさ」
「だって、タクマくんの全部で人魚の全部とぶつかったのでしょう? それってもうS○Xと変わらないじゃない」
「……そう、なのか!?」
『マスター、正気に戻ってください。それとヒョウカ様、年頃の女性なら言葉を選ぶべきかと』
その言葉にハッとするタクマ。よく考えなくても殺し合いとそういう行為は繋がらない。
そんな常識がヒョウカの勢いだけで塗り替えられようとしていたのだという事に、注意せねばと思うのだった。
「あら、メディはどうして今のを邪魔したのかしら。うまくいけばタクマくんを連れ戻せたのかもしれないのに」
「お前さっきまでの演技かよ」
「素よ? 9割9分9厘まで」
「マジか」
『一応理由を言うならば、マスターの常識のズレをこれ以上大きくしたくなかったまでの事です』
「……そういう事にしておいてあげるわ」
そういう事以外にどうとれるのか? という疑問がタクマとメディの中に生まれ脳内会議が始まったが、それはヒョウカの絶対零度の視線により中断された。
「それで、タクマくん」
「どうした? ヒョウカ」
「あなた、相談もなしに何やってるのよ」
「……すまん、どれの事言ってるんだ?」
「あなたがご執心のボランティアで、あなたが女の家に転がり込んでいること、とか?」
その言葉にタクマは頭を悩ませ、こう言った。
「問題あるのか? ソレ」
「問題しかないわよ。私、タクマくんの子供なら愛せる自信はあるけど、浮気相手は何がなんでも息の根を止めるわよ?」
『そういう行為は行っていないのですが……』
「というか、そういう激しい運動はやったら心臓爆発して死ぬわ」
『爆発はしませんけどね』
そんな会話をしていると、タクマのログアウト制限が解除された感覚がやってきた。
ログアウト制限は、
すると、他にもメニューを開いて転移を行おうとしている者も多いことが横目で見れた。
「まだ話は終わっていないのだけれど、入れるようになったみたいね」
「まぁ、また今度な」
「……納得いかないわ。とても」
「納得しといてくれ」
そうして、タクマと他多くのプレイヤーはワールドに転移した。
そうして到着した王都は、地獄だった。
燃え上がる家屋、爆ぜ散ったレンガ、様々に散らばっている人の肉片、そしてその中で唯一無事な王城の姿。
ギリギリ命を繋いでいる人は言う、「どうして王族が、こんな真似を?」と。
無事だった民兵は言う、「これが、権力者のやる事かよ!」と。
そして、身なりの整った
そうして、その男の周囲の民兵たちに助けられて、ボロボロの人々は救助されていった。
「稀人の皆さん、できれば手を貸していただけませんか?」
その声と共に、動き出すプレイヤー達。魂感知で感じられる人々の命を感じ取り、救助と応急処置をし始めた。
そして、タクマはすっと存在感を消して周囲から抜け出し、王城へと侵入する。
王城の門は開け放たれてあり、今から救護部隊が出る、というような場面であった。
「命を救え! 誤解など無視して構わない!」
そう叫ぶのは騎士団の副団長。どうにも、自分たちが置かれてる状況を理解して、それでも尚命を救おうと動いているようだ。
「相変わらず、凄いな」
『ええ、心に鋼の芯があるように思えます』
そうして、視線を感じると、救護部隊を窓から見つめるアルフォンスが居た。その隣には、ラズワルド王が居る。
王は、タクマ「気付いて招き入れようと窓を開けた。入ってこいとの事だろう。
故にタクマは
当然アルフォンスは迎撃に剣を向けてきたが、タクマだと気づいてくれたのかギリギリで剣を止めてくれた。
「……タクマ、普通に入って来れないのか? お前は」
「王様に招かれたんだから、最短で来るのが礼儀だろ」
『まぁ、城内の道がわからなかったというのはあるのですけれど』
「相変わらず適当だな……」
「それで、何の用だ? 稀人のタクマ」
「なんだか、国が反王族で纏まりつつがあるので、当の本人達がどう思ってるのか気になりまして」
「そんなものは決まっている」
「「喜ばしいことだ」」
そんな意外な返事が、アルフォンスとラズワルドの王族2人からは帰ってきた。「それだけならば」と加えて言ったが。
『貴方方の既得権益が踏みにじられようとしているのですよ?』
「かまわん。元より我らは護国の剣だ。王から市民なり奴隷なりに変わるだけなら何も問題はない」
「それに、新たな民がやってきたのだから変化は必要だろう? だから、国の行末は成り行きに任せて引き継ぎに必要な書類を纏めていた」
『素晴らしい、というより都合が良すぎますね』
「いや、メディ。この人ら多分政務とか面倒事を押し付けたいだけだと思うぞ」
「「バレたか」」
『……革命側が正しいのではないかと思い始めてきました、私』
「とはいえ、当然ながらこんな力技で、内乱を引き起こすようなやり方をする奴を放ってはおけない。私は一人のアルフォンスとして戦いに行くつもりだ」
「……なら、一緒に行くか?」
「ああ、そのつもりだ。またしても稀人の手を借りるという事に思うことはあるが、な」
そうして、アルフォンスとタクマはまたしても手を結ぶ。
今回は、お互いただの友人として。
「所で、タクマ」
「なんだ?」
「
「……折れた」
「なら、折れた剣と素材を出してくれ。王城には炉があるのだ。打ち直させよう」
『失礼、素材とは?』
「魂や呪い、そう言った強い力の籠もっているものだ。強い魔獣の牙などだな。それと持ち主の血や毛などを溶かして混ぜると、剣はより持ち主に馴染む……と聞いた」
『武器の強化、ということのようですね』
「つっても素材なんて……あったわ」
そうして、タクマの
────────────
「それで、これからのアテはあるのか?」
「あったら王城には行ってないっての」
『マスター……アテ、というか確認するべき事はいくつかあると』
「メディ、そいつはどんな?」
『まずは、農耕将軍の目的です。病の身でありながらどうしてこんな革命の手助けをしているのか』
「ああ、それなら単純だぞ」
「知ってるのかアルフォンス」
「あの方は、手の届く範囲で人助けをしているだけだ。裏の目的があるとするならば担いでる黒幕にだろう」
『……それはそれで問題な気がしますが』
「誰彼構わず助けてたら、悪人に利用されたって事か」
「……ジュリアス殿が騙されるとは思えぬのだがな」
「まぁ、本人に聞いてみればわかるか」
「『それもそうですね』」
そんな脳筋思考を止めるものは誰もいない。
アルフォンスとタクマは考えるのをやめた為。メディは“この二人ならばやってのけるだろう”という信頼からだった。
そうして、ジュリアス・ムーランの農地へと二人は到着する。
そこは、三発ほど空襲の跡があったが、大きな被害はない。
王都の南東地区の2/3を占めているのにその少なさは異常に思えるが、それだけではまだ小さな不審点にしかならない。
「では、行こうか」
「……すまん、屋敷とかは見えないんだが」
「あるだろう? あそこに家が」
そこにあるのは、2階建の一軒家だ。
どうやらアレが、農耕将軍の屋敷らしい。
『無欲とは、凄まじいですね』
そうして、ノックとともに家に入ると「はーい!」と元気な少女の声が聞こえた。
「どちら様ですかー……え?」
「少しジュリアス殿と話がしたくてやってきた。アルフォンスという者だ。取り次いではくれないか?」
「……王子様が⁉︎直接⁉︎え、何? どゆこと⁉︎」
そう、少女が狼狽えていると、奥から杖を付いた老人が現れる。
「これは王子、お久しぶりです」
「お久しぶりですジュリアス殿。こちらは稀人のタクマと精霊のメディ。私の友人です」
「タクマです」
『メディと申します』
「なるほど、それでご用件とは?」
「ジュリアス殿は、この空襲について何かご存知ではないですか?」
「……一つ言わせて貰おう」
「儂、なんも知らん。マジで」
「「『え?』」」
そんな3つの声が重なって響いた。