クラリッサのルーティーン
私はドイツ軍所属IS特殊配備部隊、シュヴァルツェ・ハーゼ副隊長のクラリッサ
私はここでISを使い自国を守るために生み出された試験管ベビーだ
人為的に生み出された私は当時生きるという希望が持てなかった、しかし、私の元に1人の天使が舞い降りた。
透き通るような白い肌、それを助長するかのように美しい銀の髪はどこか気品を思わせる
その紅い双眸はキリッとしていて見つめるもの全てを殺してしまいかねないような目つきは気高さすら感じられる
その瞳に見つめられて私は思った
この人物こそ私の仕えるべき相手だと
それからというもの私は彼女ことシュヴァルツェ・ハーゼの隊長であるラウラ・ボーデビッヒと共に訓練に明け暮れる日々、傍から見ればなんの楽しみもないような日常だがそんなことは無い。
なぜならーー
「今日の就寝時間は20時48分56秒、健康状態に以上なし、と」
その日私はいつものように隊長の就寝時間を日記帳に記録し終えると屋根裏を伝い隊長の部屋から自室へ戻る
自室の天井まで着くとなるべく音を立てないようにそっと降りる。
そして日記帳を誰にもバレることがないように隠し場所に隠す
ここまでが私のルーティーンだ、このルーティーンは隊長が配属されたその日から続いている。
おかげさまでノートの数は100冊以上になっていて最近収納場所に困っている、さながら思春期真っただ中の男子のようだ
そんなことを考えながら机の中に保存してある日付が書かれた小瓶を取り出す。
よく見るとその中にはラウラのものと思われる美しい銀色の髪の毛が何本も入っている
「スーハー・・・スーハー・・・やっぱり隊長の髪の毛の匂いは何事にも変えられない素晴らしいモノだなぁ...」
呼吸を荒らげながら身悶えし、香りを脳へ焼き付ける、その光景はさながら自慰のようで部屋には熱く、甘い熱気が籠るのだった
終
第一次耳かき戦争inドイツ
この世には耳かきというものが存在する。
それは簡潔に述べてしまえば耳の垢を掃除するというものだ
ほとんどの場合自身で処理したり、幼少期などでは母親にやってもらったりもするがそれもほんの一時期である
しかし中では恋人にしてもらうというシュチュエーションもあるらしい
さてそんな耳かきにおいて絶賛悩んでいる少年が1人・・・
「私がすると言っているだろう!!」
「いいえ、ここだけは譲れません、教官」
日も沈みかけの夕方、そう叫びあっているのはラウラと千冬だった、灯夜の部屋の外にはなんだなんだと人だかりができており、軽いパニック状態である
なぜこうなったのか、それは今朝に遡る・・・
朝の朝礼、それは軍にとっては寝起き一発目の戦場である
朝といえども気は抜けず、時間は厳守。挨拶の声が出ていなければ全員その場で筋トレの始まりだ。
灯夜は朝が少し弱く、しかも真冬のため布団から這い出すのも一苦労である
灯夜自身筋トレが苦というわけではないのだが居候という身では周りの人達に苦を味合わせたくは無いのだろう
そのほどに灯夜は今の環境を愛していた
「それでは今日の訓練内容を確認する!!まずはー」
朝礼が終わり、灯夜達は食堂で朝食をとる。
部屋から持参したオリジナルブレンドのコーヒーを飲みながらゆったりとした時間を過ごす。
現在座っているのはラウラの特等席、そこにいつもとは違う椅子がひとつありそこに腰かけていた。
ここに座っているのは先日ラウラから直々に許しを得たからでその際
「灯夜にはそばにいて欲しい」
と言われたものの特に意味を理解していない灯夜はいい席が取れたと喜ぶだけであった
そも灯夜には元から親しい女友達などおらず、泣き虫だった灯夜に着いてきてくれたのは優斗くらいであったのだ
だから灯夜にはそれが好意であることなどは全く見当もついていないのであった
ほんの少しコーヒーの香りに身を委ねていると耳を誰かにつつかれる。
少し冷たさを含んでいるそれは、冷たいトレイを長らく持っていたからなのであろう
「待たせたな、しかし灯夜・・・いい香りだな」
「あぁ・・・ココ最近の中では1番の出来だ、しかし難点があってな、すこぶる苦い。ブラック派の俺ではあるが、これにはミルクを入れざるをえん」
ラウラは少し笑いながら席に座ると手持ちのサンドイッチを食べ始めた。
その姿はいつも前線で見る厳しいモノではなくどこか小動物めいた愛らしさがあった
ここ最近ラウラは以前のように張りつめた表情はしておらず以前とは違った落ち着きで部隊をまとめている
分をわきまえずそんなことを考えているとふとラウラの手が灯夜の右耳を撫でた。
「なっ!?どうしたんだ!?ラウラ!?」
「あぁ、いやすまない耳にゴミが着いていたものでな取ろうとしたんだが・・・」
「なんだそういうことか、脅かさないでくれ」
灯夜は少しほっとするとそういえば自分が何ヶ月も耳掃除をしていないことを思い出した
「そろそろ耳掃除しないとな....」
ここに綿棒や耳かき棒はあっただろうか?なければ買いに行かなくてなはな...
そんなことを考えているとラウラから声がかかった
「灯夜、もし嫌でなければ私がその....耳かきしてやろうか?」
ラウラは恥ずかしいのか少し身をよじらせながら頬を赤くして灯夜に言った
その申し出は耳かきにあまり自信がない灯夜にとっては朗報以外の何でもなかった
もし自分でやって鼓膜に傷をつけでもしたら今後が大変だ
「そうだな...今後のためにも頼んでいいだろうか」
「今後...ふふっ、そうだな今後のためだ、では訓練が終わったら私の部屋に来てくれ」
ラウラは灯夜に約束を取り付けるとそそくさとその場を去った
余談だが、ラウラはその後訓練までの短い時間で部屋の掃除を全て済ませたのだそうだ
その日の訓練が終わり、灯夜は自室でシャワーを済ませてラウラの部屋に向かった
部屋までの廊下を歩いていると見慣れた顔が前の角から顔を出した
凛とした顔立ちに確かに人間としての強さが見える女性、千冬だ
「ん?どうしたんだ柊、お前がこの時間になんて珍しいじゃないか、どこかに行くのか?」
普段灯夜はこの時間コーヒーのブレンドを考えたり訓練後のストレッチをしたりしているため基本的に部屋からは出ない。
しかし今日はラウラの部屋に向かうため部屋から出ている、それを珍しく思ったのか千冬は少し驚いた顔で灯夜を見ていた
「あぁ姐さん、今ちょうどラウラの部屋に行くところなんだ」
「ほう?ここ最近随分と仲がいいじゃないか、少し前とはまるで違うな」
「いやまぁ、それほどでもないぞ?今も耳かきをしてもらいに行くだけだしな」
それを聞くと千冬の顔には驚愕が走った
ただでさえ気難しく隊長としての厳格を保つラウラがここ最近、物腰が落ち着いてきたように思えた。
その原因が灯夜だということも重々承知していたがここまで2人の関係性が進んでいるとは想像だにしていなかったのだ
「...めだ」
「ん?何か言ったか姐さん?」
「ダメだ!!」
急な千冬の大声に虚をつかれた灯夜だったが、何故千冬がいきなり大声を上げたのかが分からない
「とにかく!!基地内でふ...不純性異性交遊なんてダメだ!!私も同行する」
「同行するって....耳かきしてもらうだけじゃないか姐さん!?」
結局そのまま千冬と共にラウラの部屋へ向かった
「そろそろ来る頃か・・・部屋の片付けも終わったし、掃除もした、準備は万端だな」
ラウラは自室で自分の部屋の出来具合に感心する
彼女にとって意識している異性が訪ねてくるのだから緊張するのも当然ながらあわよくばあんなことやこんなことをしてしまったらどうしようなどという年頃の女の子にふさわしい妄想を頭の中で繰り返す
コンコン
そんな地味にトリップしかけているラウラを余所に心地の良いノック音が二回、部屋に響き渡る
緊張で胸が張り裂けそうになりながらも嬉しさや期待で頭が爆発寸前だったラウラは特に何も考えずに勢いよく扉を開ける
「随分楽しそうじゃないか?えぇ?お前がそんな顔をするなんて思わなかったぞラウラ」
そこには・・・
そしてシーンは冒頭に戻る
灯夜の目の前では絶賛議論が行われているものの、いつ終わるのかまるで見当がつかない、何をそれほどまでにやっけになって言い争っているのか灯夜にとっては甚だ疑問でしかなかった
「二人とも、一旦落ち着いてくれないか?」
「灯夜は少し黙っていてくれ、これは教官と私の問題だ」
「柊、少し黙れ」
どうやら灯夜には止める手段がないらしい、というか千冬のほうは圧かけすぎてすごい怖い
「(仕方ない、俺もされたことはないがこの手しかないか)」
今だ舌戦を繰り広げる二人の前に再び灯夜は言葉をはさむ
「二人とも、俺にいい考えがあるんだ、どうせ耳は二つあるのだから両方してもいいんじゃないか?」
「なっ!?」
「ふむ、確かにそのほうが合理的だが、良いのか灯夜?」
「あぁ、別段俺は耳かきされる側だ、何も言えんよ、それにいつもは仲のいい二人が口論しているのは・・・少し心が痛む」
その言葉に二人ははっとした、自分たちは今まで何をしていたのだろうかと、柊灯夜という男を喜ばせるためにしようとしていたのに自分たちはなんて醜い争いを続けていたのだろうかと
そんなこんなで灯夜の提案を快諾した二人は部屋に用意されていた綿棒を持って灯夜の耳に対峙する
耳かきと言えば膝枕とセットというイメージがあるが今回は耳かきをするのが二人のため灯夜が壁にもたれかかる形で開始された
「「じゃあ入れていくぞ」」
二人の心地よいささやき声とともに綿棒が耳の中へと侵入していく
ぞりぞり、ぞりぞりと耳垢がこそぎ取られていく、なかなかに久しぶりな耳かきに少し声が漏れてしまう灯夜だったが二人はどうやら相当集中しているようでからかわれることはなかった
「ど、どうだ灯夜?私も他人の耳掃除をするのは初めてだからな、少し痛いかもしれないが痛かったらすぐに言ってくれ」
「それにしても随分耳垢が溜まってるじゃないか、定期的に掃除しないと聞こえが悪くなってしまうぞ?」
両者ともに集中し、しかも顔を耳に近づけているせいでなかなかに吐息がかかって耳がムズムズする、というより心地いい
時計の音が鮮明に聞こえるほど静謐な部屋の中のため灯夜の耳には二人の吐息が直にかかり、僅かな呼吸音でも部屋中に響いてしまう
「耳かきというのはこんなに心地いいものだっただろうか?」
不意に灯夜の口からそんな言葉が漏れた、その言葉をラウラは聞き逃さなかった
「心地いい?それは本当か!?倉庫に放置してあった射撃訓練用のマネキンを使って練習した甲斐があったというものだな・・・」
「ラウラ・・・最近マネキンの数が減ってきていると思ったらお前だったのか・・・全く、あとで戻しておくんだぞ?」
二人がそんな会話を弾ませる、そんなとき灯夜はあまりの心地よさに睡魔に襲われていた
「(ダメだ眠気が・・・二人がせっかく俺のために耳かきしてくれているというのに・・・)」
結局灯夜は睡魔に抗えず深い眠りについてしまった
「教官、灯夜が眠ってしまったようです」
「まぁこの状況では眠るなというほうが難しいからな、最近こいつは休んでいなかったようだし丁度いいだろう、私はこの後自室に戻るがお前はどうする?」
「私はこのまま灯夜と一緒にいることにします、以前クラリッサから教えてもらった朝チュンなるものも試してみたいので」
「クラリッサめ・・・またラウラに余計なことを教えよってからに・・・」
千冬はやれやれといった表情でそのまま自室を出て行ってしまった
ラウラはそのまま灯夜の頭を自分の太ももに乗せてしばらく彼の顔を見つめていた
「あぁ、見れば見るほど顔が良いなこいつは・・・今は私の、私だけの灯夜だ」
ラウラは膝枕をしたまま灯夜の頭をなでる、綺麗で艶のある
「灯夜を傷つけるモノは絶対に許さない、私だけの、愛おしい人を傷つける奴らは一人残らず・・・殺してやる」
その決意だけは固かった
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お久しぶりです
さて閑話というわけで入れさせていただきましたこの話ですが、今後の展開がなかなか決まらず四苦八苦しております(泣)
一応ここから展開を広げていければなと思っておりますのでよろしくお願いいたします
追記
作者は耳かき棒より綿棒のほうが好みです