どこともわからない港に着き灯夜を含めた子供たちは檻から一時的に開放された。
開放、と言っても自由になれたわけじゃない、手には手錠が付けられ、すべての子供が鎖でつながれている
「とっとと歩け!!」
先ほどの大柄の男が鞭を片手に怒号を響かせる
周りの人間はそんなことがまるで日常のようにこちらに見向きもせずに笑っている。
灯夜はその人々を見て『羨ましい』と心から思った
自分は住処を焼かれ、唯一の家族とも離れ離れ、どころか生きているのかどうかもわからない
そんな不安と嫉妬が入り混じった頭はいつ壊れてもわからないくらい脆かった
そのまま灯夜たちはどことも知れない町の中心部へ向かって歩かされた。
何かを話せば拳が何の加減もなく飛んでくる、そんな痛みの上に成り立つ恐怖政治からいち早く抜け出したかった。
辛い、痛い、逃げ出したい、そんな思いが頭の中をぐるぐる回っていた
「着いたぞ、全員横一列に並べ!!チンタラすんな!!」
鞭を鳴らしながら耳が痛くなるような怒号を浴びせられる
歩いた先で灯夜たちを待っていたのはおそらく町の中心部である大広場だ、夜間であるにもかかわらず最大ににぎわっている
そこではもうすでに『オークション』が始まっていた
断頭台のような木組みの土台の上では自分と同い年くらいの少年少女が泣きながら立ち、それを見て金額を殴りつけるように言い放つ大人たち
灯夜の中には恐怖しかなかった。
自分はどうなるのか、この先が怖くて仕方がなかった。
本で読んだことがある、奴隷は買い主に逆らえず、ずっと
「おら!次はお前の番だ!」
そんな恐怖でどうにかなりそうな灯夜を横目に順番はすぐにやってきた。
「さぁ!残すところこの一人!今度は日本からはるばる攫ってきた男のガキだ!さぁ、いくらから始める!?」
男がそう言い放つと、どっと会場が沸いた、そして先ほど灯夜が見たように、客たちが金額を次々言っていく
「一億」
ふと男だらけのこの場にふさわしくない凛とした透き通った声が響いた、あれだけ沸いていた広場が一斉に静まり、大勢の客たちがどよめき始める。
「一億以上はいるかぁ!?いなけりゃこのまま受け渡しといくぜ」
男がそういうとその女性はすっと台の上の灯夜の横に来た
「あなた、結構タイプよ、私が買ってあげるわ」
その女性はとても美しかった、赤いドレスに身を包んだ病的なまでに白い肌、流れるような金の髪、そしてそのドレスから溢れんばかりの豊満な体つき
男なら誰しもが振り向いてしまうような美貌だった
その美貌は僅か十歳の少年にさえ通じてしまう
現に灯夜は状況を一瞬忘れて目の前の絶世の美女に目を奪われていた
「あ、あのッ」
「う~ん?どうしたのかしら坊や、あぁ・・・怖かったわね、もう大丈夫よ、安心してちょうだい」
そういうとその女性は灯夜を抱きしめた、ふわっとした女性らしい香りと、豊満な体つきの柔らかい感触が灯夜の緊張しきった心を溶かしていく。
院長のような包容力に似ているその女性に安心しきった灯夜は不意に泣いてしまう
「はぁい大丈夫よ~、私はあなたを殺したりしないからね、だから少し寝ていなさい、あとは任せて」
その女性の言葉につられて灯夜の瞼が少しずづ重さを増していく、これまでのストレスや緊張感が一気に疲労となって押しかけてくる。
そしてとうとう灯夜は名も知れぬ女性の胸で寝てしまった
抱きしめたまま寝てしまった灯夜を見て女性はその場を立ち去ろうとする
「ちょっと待て嬢ちゃん、そんなガキなんてほっといて俺と遊ぼうぜ」
先ほどの男が女性を引き留めた、もう客やオークションなんてどうでもいいといった風で今すぐにでもこの女を犯したいという薄汚い欲望をあらわにしていた
「どきなさい、私はあなたみたいな薄汚い男なんかよりこの可愛い男の子と楽しみたいの」
「いいからこっちに‐‐!?ひっ」
男が女性の肩を持った時だった、その男の腕が
「いっでぇええぇええええぇぇぇ」
「汚らわしい手で私の体に触れないでちょうだい、虫唾が走るわ」
女性は男に対して侮蔑の目を向けながら立ち去ろうとする
「おいてめぇ!!」
「女だからって容赦しねぇ!!殺すぞ!!」
仲間を痛めつけられたことに激高したほかの男が女性を取り囲んだ
「触れないで、と言っているのだけれど無駄みたいね、だったら
女性が何かの名前を呼ぶとそれは現れた、黄金に輝くボディ、おとぎ話のドラゴンのような太い尻尾
「ISだと!?」
「条約で制限されてるはずじゃ・・・」
「殺される・・・!!」
男たちがそれぞれ思い思いの言葉を交わし、遺言のごとく罵声を浴びせる、だがそんなもの彼女には関係がない
「さぁ、ゴミ掃除ね」
そうして黄金のISはその装甲が金から赤に変わるまでそこにいる者への殺戮を始めた
無造作に飛びかかる男たちは、ゴールデン・ドーンの拳だけでその四肢をバラバラにさせる。
ぐちゃぐちゃとおおよそ人間からなってはいけない音が容易くなってしまう。
それほどまでにISと生身の人間ではスペックが違う、今でこそISはスポーツのみの使用が主となっているが
彼女のように平気で人を殺せる物であり、その力の前では人間など蟻んこ同然だ
踏みにじられ、蹂躙される。四肢をえぐり取られ、臓物を地面へぶちまけられる。
そんな一方的で異常な光景がとある港町の広場に広がっていた
「あなたで最後ね、死になさい」
女性がそう言い放つのは、先ほど腕を吹き飛ばした大男だ
ゴールデン・ドーンの腕で体を持ち上げ、ぎちぎちとその体を絞め殺していく、汚くおぞましいうめき声を上げながら男の体は死へと向かっていく
ブシャッと男の血液が噴水のようにあたり一面に広がる
「汚いわね・・・だから嫌なのよ・・・」
女性は鬱陶しそうにその男の血液や臓器を機体から落としていく
「・・・うぅん」
灯夜は目が覚めると、まず初めに感じたのは柔らかいという感触といい匂いだった、目を開けるとそこにはあの女性がいた、自分を
優しそうで、そして何よりきれいだ、美しいというほうが正しい。
だが、灯夜は違和感を感じた、さっきまでいた男たちがいないのだ、それどころか声も聞こえない、女性から向こうを見ようとしたがなぜか女性に止められてしまう。
「どうしたの?そんなにモゾモゾして?あ、もしかしておしっこ行きたいの?じゃあお姉さんと一緒に家まで帰りましょうか」
「いや、違くて・・・さっきの人たち、どうしたのかなって」
女性は少し雰囲気を濁らせた
「あなたは知らなくていいわ、それより、お姉さんじゃ話しにくいでしょ?私スコールミューゼルよ、スコールでいいわ、よろしくね坊や」
「坊やじゃなくて、灯夜、
女性--スコールはふっと優しい笑みをこぼすと灯夜と手をつなぎ、一緒に歩いた