灯火の鬼となる   作:零℃

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一章 出会い
新地


ザザァ、ザザァという波の心地いい音と共にトレーニングを終えた少女・・・ドイツのIS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』の隊長であるラウラ・ボーデヴィッヒは少しは足早に歩いている。

この後はラウラが教官と呼び敬意を払う女性、世界最強の女性である織斑千冬が指導をしてくれる訓練があるのだ

彼女を尊敬しているラウラにとって、訓練時間に遅刻するなど言語道断、今日は早めにトレーニングを切り上げてこうして自身が所属する軍の基地へと向かうのだった

 

なぜかふと、いつも見ているはずの海が気になり、チラッと海がある左側に顔を向けた

すると何ということだろうか、白髪の人らしきものが砂浜ギリギリの浜辺で浮かんでいた

 

「ッ!?なんであんなところにッ」

 

ラウラは自身の専用機であるシュヴァルツェア・レーゲンを展開し、その人物の人命救助へと向かった

 

 

 

「・・・またここか」

 

灯夜はそう言って目を覚ます、目を覚ますと言っても先ほどのあの日の映像の中にいるだけなのだが

 

「ここにいるってことは、まだ死んでないのか()

 

ん?今何と言った?()

灯夜は基本自分のことをぼくとしか呼ばず、俺などとは今まで呼んだことすらなかった

 

『戸惑っているようだな、柊灯夜』

 

灯夜は自身の中で整理がつかないままだったが、突然後ろから聞こえた声に思考を一旦中断させる

 

『貴様の中にこの(オレ)、ISコアが入っているのは承知しているな?』

「てことはやっぱりお前は俺の中のコアか、で?それがどうしたって言うんだ、というか女の子なのに(オレ)って言うんだな」

 

あまり驚かない灯夜にふん、と相槌を打つと、ISコアは話始める

 

『いま、貴様と(オレ)の体は一心同体、つまり精神すらも、意味が分かるか?』

 

ISコアは灯夜に確かめるように話す、僅か12歳の少年に話すのだ、気を使っているのだろう、少し高圧的な態度ではあるが根は優しいらしい

 

「つまり、お前の心が俺の心に入り込んでるってことか?」

『正解だ、自覚しているかは知らぬが貴様の心はもう再建不可能という具合までに壊れている、だから貴様の心にもすんなり入ることができた上に、こうやって話もできている』

 

灯夜はなるほどと、思ったがしかしそこまで自分の心が壊れているなんて思いもしなかった、というより自分のことなんてどうでもよかった

 

「とにかくお前が俺の心に入って、いろいろ補填してくれてるってことでいいんだよな?」

『ああ、ただしそちら側にも影響はある、今は些細なものであるがな、その証拠に口調が変わっているだろう?』

 

ISコアがそう言ったところで少しめめまいがする

 

『そろそろ目覚めの時間か、では最後に(オレ)の名を名乗っておこう』

 

ISコアはそう言うと腕を組んで高らかに宣言した

 

『我が名は轟絶鬼(とどろき)!死を得んとする我が主よ、精々(オレ)を上手く使えよ?』

 

そう言うと彼女・・・轟絶鬼(とどろき)は少し笑った

 

 

 

「・・・い、おい!」

 

どこかで誰かを呼ぶ声がする、おそらく自分ではないだろうと灯夜は思った、だってこの世で灯夜を呼ぶ人間なんてもう、いないのだから

 

「おい貴様!生きているのなら返事をしろ!」

「(誰を呼んでいるのかはわからないが、服も濡れてて気持ちが悪いし、そろそろ起きよう)」

 

そうやって灯夜が目を開けたとき、その少女はいた、美しく艶がある銀の髪、病的なまでに白い肌、そして可愛らしくも凛々しい顔つき、極め付きはルビーのような赤い目、だがその目にどこか光はなかった

この少女を見てなぜか真っ先に思い出したのは二年前の、檻の中で灯夜と話していた少女だ

その少女が灯夜の視界を埋め尽くしていた、まるでキスする直前だ

 

「お、起きてまーす」

「起きたのならいい、しかし貴様、日本人か?なぜここにいる?あと・・・どこかで会ったことはないか?」

 

灯夜の動揺などどうでもいいかの如く質問を投げかけてくる

 

「ところでここはどこなんだ、それに君は?」

「質問を質問で返すな、まず回答を言え」

 

まるで機械のような子供だと灯夜は思った、しかし彼女の鋭い眼光は人を殺してしまいそうな勢いだったので、質問に答えることにした

 

「あーまず俺は日本人だ、こんなナリだが純粋なな、あとここに来たのは故意じゃない、海に飛び込んで気が付いたらここにいたんだ、最後に君に似た人は会ったことはあるが、君みたいな子に会ったことはない」

「そうか、嘘を言っている素振りはないな・・・貴様、身よりはあるのか?」

 

ラウラはふむふむという風に顎に手を当てる

少し考えると、灯夜の顔をじっと見つめる

 

「よし、貴様は今から私の基地に来てもらう、いいな?」

「いいのか?俺みたいな誰とも知れないやつを入れて」

 

ラウラは問題ないというと、灯夜を連れて歩き出す

十二歳でまだ成長途中の灯夜から見ても、ラウラは小さい、なのに自分よりもどこか大人びていて、どこか寂しげだった

そんなラウラを見て灯夜は手を握ろうとした

 

「・・・何をする貴様」

「いや、気を害したならすまん、ただどこか寂しげだったからな」

 

ラウラは基地までの間だけだぞと言い、それまでの道を二人で歩いた

 

 

 

ある海の底、そこには海底にはふさわしくない潜水艇が佇んでいた

その中はまるで童話のお姫様が過ごす部屋のように数々の装飾が施されている

 

その中心部、所狭しと並べられたパソコン群の中に()()はいた

機械でできたうさ耳をカタカタと動かし、目の下に隈を作りながらも余裕の笑みで液晶画面を見つめている

その画面には天災と呼ばれた彼女しかわからないような情報が埋め尽くされている、だがそれはよく見ると、ある人物に関しての情報が主であると認知できる

 

「う~ん、やっぱりとーくんに埋め込まれたISってあの子だよね~そうじゃなかったら異常な再生能力も説明がつかないし~それに私のネットワークから唯一独立してなきゃ探索にで見つけられるのにね・・・私ってばあんな子供まで作っちゃうなんてやっぱ天才だよねぇ、それにしてもたかがゴミムシが私の子供を好き勝手にしてくれたもんだよ~いっそ該当範囲全部爆撃しちゃおうかなぁ!」

 

彼女・・・天災でありすべてのISの生みの親である女性、篠ノ之束は可愛らしい声のままそんな恐ろしいことを口にする、それもそうだろう、束が探している人物である少年・・・柊灯夜は現在もなお自身に埋め込まれたIS、轟絶鬼と共に逃走している

普通であればたった一人の人間の情報や今いる場所などはほんの数秒で見つかるのだが、今回はわけが違う、というのも灯夜に埋め込まれたISコア、それが原因だった

灯夜に埋め込まれたISコアである轟絶鬼は束が開発した最初のISコアであり、現在世界中に散らばっているコア467個の中でも特別なものだった

普通ISにはコアネットワークというものが存在し、そこからさまざまな情報を取得できたりするのだが、轟絶鬼にはそのコアネットワークが存在せず、さらには他のISとは違い、明確な人格が備わっているため、本人が意図して束から隠れることが可能であり、さらには轟絶鬼が灯夜に埋め込まれてしまったため、灯夜も同時に探せなくなってしまったのだ

 

「なんでこう、探したいものと探せなくなる要因がうまく噛み合っちゃうかなぁ・・・」

 

束は苛立ちを隠せないまま呆れたようにはぁ・・・とため息を吐く、今日で十徹になる

 

「ん?今変な位置でISの反応起きたよね・・・?なんでそんなところに?ってあ!」

 

束はその反応に気づくと大きく体を前に乗り出し、まるで子供が新しいおもちゃを見つけたかのごとく先ほどまで眠気と疲労がたまっていた目をキラキラさせる

その表情からは到底想像がつかないような速さで端末を操作する。

だが虚しくもそこに映し出されたのは崖の上から飛び降りる灯夜だった

 

「とーくん!このゴミムシどもが・・・!」

 

束はまるで鬼のような形相で画面を睨む、そして画面に映し出された虫‐‐亡国機業(ファントムタスク)の面々へ向かって攻撃を始めた

 

「絶対に見つける・・・見つけてあの時のお礼を・・・!」

 

そう言う束の表情は、今この世にいる誰よりも純粋だった

 

 

 

 

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