灯火の鬼となる   作:零℃

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邂逅

浜辺から十分ほど歩いたところ、町の郊外にそれはあった

黒兎の旗が目立ち、男子禁制と言わんばかりに入り口には女性の守衛が立っている軍の基地があった

その光景に灯夜は少し不安を覚える

 

「ここだ」

 

ラウラは短くそう言うと、握られていた手を放し、堂々と基地へと向かっていく

 

「あ!おい!置いていくなよ・・・」

 

灯夜はラウラの態度に少し疲れながらも、助けたもらったと思うと文句の一つも言えなかった

 

「隊長!お帰りなさいませ、シャワーの準備ができていますので・・・ん?そちらの男性はどちら様でしょうか?」

「あぁ、こいつは浜辺で倒れているのを見つけた、身寄りがないと言うのでここに置いてこうと思ってな、あとで上には私が報告しておく」

「珍しいですねぇ・・・隊長が男連れてくるなんて」

 

守衛の女の一人が茶化すように言ったが、ラウラは下らん、と一蹴した

そんなラウラの言葉に守衛の女は驚いた、ラウラは普段、人命救助などするような性格の人間でもなければ、見ず知らずの人間を自分の住処に入れるなどありえない、実際、恋路ではないにしろ男を連れているのだ、驚くのも当然であろう

だが後ろの男、灯夜は何故守衛の女が驚いているのかを理解できずに自分がここに来たことに驚かれているのだと勘違いして少し居心地の悪さを感じた

 

「あーやっぱり俺が来るのはまずかったか?」

 

ラウラは問題ない、と言うと強引に灯夜を基地の中に引き連れる

 

 

 

シュバルツェ・ハーゼの基地内、そこでは今この瞬間、かつてないほどの混乱が起きていた

その原因はたった一つ、シュバルツェ・ハーゼ、通称黒ウサギ隊の隊長であり基地で一番近寄りがたい存在とされている女性、ラウラ・ボーデヴィッヒが基地内に部外者の男を連れ込んでいるという情報が出回ったためである

 

「伝達兵は今すぐに隊長の調査、および連れ込まれた男性への尋問を開始せよ、到着した情報は必ず私に報告すること、以上、解散!」

「「「はっ!」」」

 

そう言って少女たちは一斉に基地に散らばる、その中心で指揮を執る女性こそが黒ウサギ隊の副隊長であるクラリッサだ

彼女は自称隊長愛好家であり、ラウラの身辺を24時間365日にわたってストーカー・・・もとい調査をしている

 

そんな彼女が見つめるモニターの中には件の少年、灯夜とラウラが映し出されていた

 

「ここにいろ、多少居心地は我慢してくれ」

 

連れてこられたのは少し広めのワンルームで、家具はベッドとテーブルしかない、どこかあの亡国機業にいたころの部屋と似た雰囲気ではあるが、灯夜は部屋に入った

 

「わかった、そもそも助けてもらって居心地がどうとかは言わないよ、でもほんとに俺が来てよかったのか?えっと」

 

灯夜はしまったと思った、というのも少女、ラウラの名前を聞いていないのである

 

「そういえば自己紹介がまだだっけ、俺は灯夜、柊灯夜だ、まずは助けてくれてありがとう」

「私は名乗る義務など持ち合わせてはいないが、名乗られたのなら教えておこう、私はラウラ・ボーデヴィッヒ、この部隊の隊長を任されている」

 

二人はお互いに自己紹介し合うが、どこか壁があり、和んだ雰囲気ではなかった

そんな光景を見ながらムズムズしている人間が一人・・・

 

「いや、ピュアかッ!?そんな合コンに初めて来てなんだか取り残された男女のペアじゃないんですから!!あーもうムズムズするぅ!!」

「副隊長、どうか落ち着いてください、そろそろ動きます」

 

クラリッサはそんな二人を見て心底むずがゆい気持ちになりつつも、二人のことを見守る、その姿はまるで子供を見つめる親のようだ

 

「では私は上にお前のことを報告しに行ってくる、ここを動くなよ?」

「勝手もわからない場所で好きに動けるほど肝は据わってないよ、大丈夫、ここにいるから」

 

ラウラはそうか、と言うと部屋から出て行ってしまう

 

「さてと・・・見てるんだろ?」

 

その瞬間モニター越しのクラリッサの心臓は飛び跳ねた、というより、心臓を掴まれたような悪寒がした

 

「総員突入!」

 

一瞬気圧されたもののほんの数秒で元に戻ったクラリッサは灯夜を危険視し、待機させていた他の部隊員を突入させた

 

「抵抗するな!腕を後ろに組んで地面に伏せろ!」

「おっと、ホントに見てたのか、しかしこのスピード、部隊ってボーデヴィッヒさんは言ってたけどさすがだなぁ」

 

灯夜は部屋の入り口から入ってきた数名の女性に向かって驚いた様子を見せる、殺気にも近しい意志を灯夜にぶつける女性たちに囲まれて圧倒的に不利な状態にあるにも関わらず灯夜の口調はどこか余裕を孕んでいる

 

「っと、こうでいいか?」

 

灯夜は意外と素直に腕を後ろに組み、地面に伏せた

警戒を解いたのか、周りの女性たちが灯夜に近づいてくる

 

「無警戒すぎ」

 

その無防備な瞬間を灯夜は見逃さず、素早く足を地面に刷らせるように蹴り、周りの女性たちを一気に無力化する

その手に人を殺害できるような代物はなくとも、灯夜は拳を倒れた女性に振りかぶろうとする

しかし、その拳は女性の顔に当たることはなく、そのまま地面へと放たれた、灯夜の拳が炸裂した地面は少しのクレーターができており、そんなものが自分の顔に直撃していたらと女性たちは顔を青ざめる

 

そんな女性たちの顔とは対照的に灯夜の顔は()()()()()

 

「あれ?俺今何を?」

 

灯夜の頭は今自分がやろうとしたことを思い出そうとする、そして灯夜は気づいた、自分がこの女性を()()()()()()()()

 

「・・・ッ」

 

灯夜はそんな事実から逃げるようにして、部屋を飛び出した

 

「副隊長、今のは・・・?」

「ありえない・・・ただの一般人にあんな芸当ができるはずがない、しかし何故・・・?とにかく突入部隊はターゲットの捕縛を優先して」

 

クラリッサは今自身が見たモニターの映像について思考を巡らせるも、結論は出てこない

そんなクラリッサを嘲笑うかのように灯夜は姿を消した

 

 

 

「何処だここは・・・あぁ、また迷った」

 

灯夜は部屋で襲撃されたあと、基地内を走り回っていたが、さすがに疲れたのか格納庫のような場所でひっそりと息を潜めている

その場所はあまり使われていないのか埃がたまっており、格納庫というよりは物置のような場所だった

 

「あぁ・・・疲れた・・・ホントになんで俺ばっかりこんな目に遭うんだろうな、そういえばボーデヴィッヒさんとの約束破っちゃったな」

 

灯夜は自分がしたことは恩を仇で返したものだと思っていた、しかもラウラの部下であろう人間を殺しかけたのだ

そんな考えが灯夜の中でずっと巡っていた

つかれた灯夜は後ろにあった壁らしきものにもたれかかった、その時だった

 

「・・・あ?」

 

思わずそんな素っ頓狂な声が出てしまう

それもそうだろう、何せ灯夜が壁だと思っていたものが突如として光りだしたのだから

そして灯夜の頭の中にラファールという名前とそれに関する様々な情報が一瞬で流れ込んできた

 

「これ・・・ISか?」

 

先ほどより目線が高いことに気づき、灯夜は自分の体を見つめる、するとどうだろう、二年前テレビで見た汎用ISの一つであるラファールが自身に装着されているではないか

 

「ちょっと待って!今ここから光が・・・って、え!?なんで・・・」

 

灯夜はそんな声に気づき、逃げようとするもISの動かし方がわからず、そのまま捕縛されてしまった

 

「副隊長・・・彼は一体・・・」

 

灯夜が捕縛された後、現場へ向かったクラリッサは部下からそんな質問を投げかけられる

 

「私にもわからない、ただ一つ言えるのは・・・彼も私たちと同じように、普通の人間ではないという事実だ」

 

クラリッサが見つめるその先には獣のような眼光の灯夜がおり、その瞳は紅に染まっていた

 

 

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