2031年━━━━
人類は自分達が明日“絶滅“するかも分からない状況に置かれていた。
その原因はとある異形の敵対生命体の出現である。
人間社会を蝕みその口腔にて咀嚼する存在「人外」は非常に高い知能でもって人間に擬態、社会に潜伏、また白昼堂々と人間の屍肉を喰らうことを生命活動の糧としていた。
その生活様式に西洋の怪異「グール」を重ねる者、人と同じ姿形をして人間を喰らい糧とし数を増やしていくその様を「ゾンビ」のようだと言う者、罪深き人類を滅ぼす奈落の王「アバドンの化身」であると主張するカルト教団。
というふうに皆違った解釈をしているが、どこの国のどこの人間も人外を脅威と認識し恐怖に怯えていた。
僅かに残された希望は、末期に駅地下等に政府によって振り撒かれた、人外にのみ毒性を齎す物質「イザナギ-02」
しかし、そんな闇色の混沌に塗りたくられた荒廃とした世界に一筋の光が指す……
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全面ビニール張り、床はダンボールを敷きつめた上に年季の入った畳と、平たくなったカーペットを引いたもの、地面に掘られた収納床には缶詰が敷き詰められ、本棚には「社会でどうやって生きるのが正解なのか」とこちらに問いかけるようなタイトルの大二病御用達の哲学、自己啓発系と見受けられる本と「わかる!たのしい!さんすう(中編)」という幼年層向けの学術書が混ざり合い非常にカオスな状態。
その他にもビニールハウスの壁に当る部分に立てかけられた漆を塗ら光を反射している闇色のエレキギター、箱にの中の透明なケースに閉じ込められた塩ビの美少女フィギュアetc……様々な文化が一つの空間に点在している。
しかし、部屋の隅に切り取られたように清潔な印象を覚える純白の洋服棚と皇室から取ってきたような瑠璃色を帯びた白い石質の?小さな机が置かれたスペースが見られる。
「何度目になっても言うが、人外にだけは気ィ付けろよ」
普段は脂下がった顔で女の尻ばかり見ている養父のトキヤが座った目で二人の少年少女に向けてそう言った。
「分かってるって、お父さん。初めてのおつかいだからって心配しすぎじゃない?六本木エリアにはトウヤもいるんだし大丈夫だよ、アイツらも迂闊に近寄らないでしょ。何より?レンもいるし」
決して高値ではないにしても、防寒性のしっかりしているの伺える厚手の、カーキ色をしたレインコートに手を通しながら黒い長髪に碧の瞳を持った少女は答える。
「可能性は否定できないからな、どんな時も例外は存在する。それを想定していようがいまいが対応するのが俺ら人外ハンターの務めだが。お前らは非力だ、どこまでも心配して常に周りに目ェ配って行動しろいいな」
トキヤは足を組み直したり、また戻したりしながらどうにも落ち着かない様子。
「お父さんの言うことはわかるよ……私だって、レンだってヤツらの被害をモロに受けたんだ、今でも信じられないくらいに奴らに警戒してるつもり。けど、だからこそ奴らに怯えて満足に外に出ることもできないってのもイラつく…分かるよね?」
悔しさに唇を噛み、瞳を濡らした少女が、幼馴染にして義理の姉であるハルカが同意を求めた。
二人の会話を地面に組み、座りながら聞いていた、カジュアルは軍服風に身を包んだ黒髪短髪の少年は名をヨウと言う。
ヨウは人外が地上を跋扈する時代に珍しい捨て子(親から離れた子は大体がすぐに食われてしまうため)で、悪質なハンター達に拾われ8年間、凡そ14歳になるまで獲物を誘き寄せる餌にされたり、また性的暴力の対象となったり、その身を転々と売られついには凌辱趣味の拷問家の女の元へと流れ着いた。
そこをハルカの父親であるトキヤにより救われ、以後は彼の養子という形になり日々、また強者に蹂躙されることのないように稽古を付けてもらっており、実際にその実力は単身で、人間を超越した運動能力を持つ人外を既に二匹“も“狩っていることから伺えよう。
勉強ができる環境に置かれて二年経った今、勉学の理解度は義務教育課程卒業レベルに満たないものだが、養父の持つ哲学本やライトノベル、漫画を齧っている為に無教養のわりには(偏った)知識を持っている。
「あぁ、奴らのせいで俺らは自由を奪われ、偏狭な地下に身を隠すことを余儀なくされている。そんなの許せない」
聞いて、トキヤはウンウンと首を縦に振って「まぁ、こいつァ既に二匹も殺ってるしな」と納得したような口振りで言うと「タバコ吸ってくるわ、途中まで付き合ってやるよ」言いながら出口とは逆の荷物棚の方へと歩みを進め、扉を開けて自室へと入る。
そうしてしばらく経って、二人の間に「何をやっているんだろう」という会話が始まった頃に扉は開かれ、二本の研磨され駅地下天井の人工的な明かりをを反射、光沢している鞘に収められたの短長二本のドスと一丁の標準的な手銃「スプリングフィールドXD」に木製の持ち手をしたポンプアクション式ショットガン「W870」、そしてそれらに入れる弾が入った大のケースと小のケース、おそらく前者がショットガン後者がハンドガン用のものであろう。
漫画やライトノベルで見てきた武器が眼前にあり、レンは意図せず口角を上げる。
以前に悪魔を殺った時は硝煙弾と牛刀という半端な装備であったのでとても心強い、新品同様に黒い輝きを放つそれらはおそらくハンターであるトキヤが二人の為に新調したものであろう。
「これ、持ってけよ。ハルカはショットガンを持ちな、これ撃っときゃ技術(ワザ)が無くてもわりとどうにかなるもんだ」
言ってハルカに黒い銃身に木製の持ち手が、ハルカの持つ暖かな雰囲気と調和してお洒落に見えるショットガンを投げる。
「わっ、本物触るの初めてかも」
一瞬、目を丸くすると黒く冷たい銃身を形を確かめるようにして所々触り、リュックサックに突き刺すような形で携帯する。
レンには二本のドスと、それを携帯するための用具にXD拳銃が手渡された。
「ありがとうございます━━━━」
真っ直ぐ背と視線を伸ばし、45度腰を曲げる。
腰に用具から伸びた黒の革ベルトを巻き付け、黒く塗装された帯刀用の部位にドスを差し入れる。
XD銃と弾薬は腰に携えたショルダーバッグに収納、ふと内袋に携帯していた空のZIPPOライターと金属のぶつかる音がする。
準備の完了した二人を一瞥すると胸ポケットの青いパッケージのタバコのストックを確認するとトキヤは大きな息を吐くと
「そろそろ……行くとしようや」
ドアの役割を果たすジッパーが開かれ、入り込んだ光はレンにとって3人を混沌が渦巻く終末世界に歓迎するカーテンコールのように見えた。