ぶるーずの幻想郷生活   作:KUYU

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あい。

第四話始まるよ。


4.ぶるーずの能力

「うわぁ来たくなかったなー……」

「いいんじゃない?こういうのはなかなか体験できないからね」

「黛さんの言う通りですよ。こういうのは楽しむ事が大事なんです」

「まだ右腕が痛い……」

 

 あの後、四人は魔法の森の中を歩いている。

 瘴気の影響は受けないのかという疑問が生まれるが、どうやらその影響を三人は受けてないようで、アリスの話によると瘴気が三人を避けるように動いてるらしい。

 どうしてそうなっているかはアリスにも分からないみたいだ。

 

「アリスさんが魔法の森に住んでるなんてビックリしました」

私的(わたしてき)にはういはの馬鹿力に驚かされたんだけど……」

 

 アリスは左手で右腕を少し押さえながらぐったりした様子で先頭を歩く。

 どうやらういはに振られた腕が相当きているようだ。

 

「ういはは手加減が下手だからね」

「いや覚えなさいよそれくらい……出会い(がしら)にあれされたら困るわ」

 

 嫌そうな顔をしているアリスを見て、黛はなるべく注意しておくと一応返したが、まあ直らないだろうと内心苦笑いしていた。

 

 一時歩く事になると思った黛は灰色のズボンのポケットから携帯を取り出す。

 相変わらず通信環境は圏外であり、外部と連絡出来なくなっていた。

 通信使えるようにならないかなと内心ため息を吐きながらもう一度通信環境を確認する。

 

 すると急に携帯のプログラム情報が黛の頭の中に流れてきたのだ。

 勿論、急に入ってきた情報に目を見開きながらも、黛はもう一度携帯を凝視する。すると圏外と書いてあった通信環境がいつの間にか使えるようになっていた。

 

 一体何が起きたのか、黛には全く分からなかった。

 驚きの余り、黛は立ち止まる。

 

 急に立ち止まった黛を見てアルスは声を掛けた。

 

「どうしたのまゆくん?」

「──いや、なんでもない」

 

 黛の返答に少々違和感を持ちながらも、アルスはういはの後ろへと着いて行く。

 それに続けるように黛も足を動かす。

 

 

 

 黛は思う。

 もし外部へ連絡できるようになったとしたら、他のライバー達に今の状況を伝えられるかもしれないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法の森を歩いて数十分。

 四人はいろいろ雑談をしながら歩いていた。

 

「それで黛さんがいつもと違って気の抜けた声で返してきたんですよ。『おっ?はい』って」

「なんの躊躇いもなく話すね」

 

 それを聞いてアルスはころころと笑う。

 アリスもくすっと笑っており、三人と少し仲良くなっているように見える。

 

「話変わるけど、ういはのあの力って元々?」

 

 黛の質問にういはは横に首を振り、「こっちに来てからです」と答えた。

 それを聞いた黛はやっぱりと呟き、話し始める。

 

「もしかしたら、幻想郷に迷い込んだと同時に潜在(せんざい)能力が覚醒した可能性があるね」

「潜在能力ですか?」

 

 頭に疑問符を浮かべてそうなういはは首を傾げる。

 

「潜在能力はね、普段表に出ない能力の事で、ある時にその能力が表に出ることがあるのよ」

「へぇー。じゃあその潜在能力が覚醒したって事は、常時その能力を使えるって事になるの?」

 

 アルスの問いにアリスは小さく頷き、近くにあった木に近付いた。

 

「ういは。この木に何も考えず殴ってみて」

 

 アリスが自分の横にある木に指を差しながら、急に訳の分からない事を言う。

 思わずアルスは「何言ってんだ?」とアリスを(にら)むように見る。それに対してういはは「分かりました」とどこかウキウキした様子で木に近付き、間髪(かんぱつ)入れずに木の(みき)を殴った。

 

 しかし木はビクともせず、(むし)ろ殴ったういはが痛そうに右手を左手で押さえていた。

 

「あれ?てっきり木が吹っ飛ぶと思ったんだけど」

「多分ういはの能力が関係してるね」

 

 アルスと黛は後ろからその光景を見て話している。

 アルスの方は原因が分かって無さそうだが、黛の方は何かに気付いた口振りをしていた。

 

「痛い……」

「だろうね」

 

 当たり前だ。そもそも普通の人が木を殴って倒せる訳ないし、痛い筈である。

 返ってきた声にういはは体ごと黛に向ける。

 

「ういは。今度は能力を使って木を殴ってみてくれないかな?」

 

 黛の言葉を聞いてまた首を傾げるういは。

 それを見てやれやれとため息を吐く黛。

 

 二人のいつものやり取りである。

 

「あの木を壊したいって思いながらやったらどう?」

 

 アルスの言葉に成程と答えたういはは、また体ごと半回転し、木に向かってもう一度殴る。

 さっき言われた通り壊そうと思いながら。

 

 

 

 すると木は根元から(うえ)全てが吹き飛び、幾つかの木や植物を巻き込みながら轟音(ごうおん)と共に遠くに行き、視界から消えた。

 その代わりに大きな獣道(けものみち)──の割には地面が大きく(えぐ)れている──が四人の目に映る。

 

 

 

「すごーい!吹き飛びましたよ!」

「「……」」

 

 喜ぶういはを横にアルスと黛は互いの目を見る。

 やってしまったという後悔をしながら。

 

「いくらなんでもやり過ぎじゃない……」

 

 ういはの横に立っていたアリスは、抉れた地面と()ぎ倒された木を見て冷や汗をかいた。

 

「これはパワー系アイドルだね」

「パワー系アイドル。いい響きですね」

「……絶対いい響きじゃないんだけど」

 

 黛の言葉を気に入るういはに思わずアルスがつっこむ。

 

 そんな三人のやり取りを余所にアリスは魔法で倒れた木を1箇所に集めていた。

 

「ところでさ、ういはの能力って結局なんだったの?」

 

 アルスの疑問に、ういはも教えて下さいと言いそうな目で黛を見る。

 

「一応俺の能力で正確に分かるけど……」

「けど……なんですか?」

「……ういはの能力が規格外過ぎるかな」

 

 規格外。つまり普通ではないと黛は言っている。

 その言葉にアルスは「そんなやばいの?」と訊き、黛は頷く。

 

 すると木を1箇所に集め終えたアリスがアルスの横に歩いてきて、「私も話に混ぜてくれないかしら」と一言。

 

「別に話に混ざるぐらいなら俺は構わないけど」

「ありがとう。それでなんの話かしら?」

「ういはの能力についてかな。ういはの能力はあらゆる性質を操る程度の能力。そのものが持つ特徴を自由に変えられるとでも言えばいいかな」

 

 黛の放った能力の詳細にういはとアルスは頭にピンとこないが、アリスだけはそれを聞いて優しそうな顔から一気に(けわ)しい目つきへと変わる。

 

「そのものって命ある者にも効果があるの?」

「断言できないけど恐らくあるかな。あらゆる性質だから物に対しても生者(せいじゃ)に対してもだろうね」

 

 天真爛漫(てんしんらんまん)なういはにとてつもない能力が覚醒してるからか、黛も真剣な顔へ変わっていた。

 三人は仕事上同期であり友達でもある。

 時には仲良く時には励まし合った。

 だからこそ黛は真剣になるのだ。ういはの持つ能力が彼女の精神を壊さないかと。

 

「あんな馬鹿力を発揮してた理由が分かったわ……」

 

 ため息を吐きながらアリスはういはに顔を向ける。

 

「ういは。貴女の能力(ちから)は恐らくこの世界、幻想郷を揺るがすほど危険な能力よ。あまり使わないようにね」

「そんなにやばいんですか?」

 

 ういははイマイチ分からないという顔をする。一応「えぇそうよ」とアリスが答えるとういはは了解ですと頷き、「それより早くアリスさんの家に行きましょ!」と元気よく声を出した。

 相変わらず事の重大さに気付いてないようである。

 

「ボクもちょっとよく分からないけど、まゆくんとアリスさんの真剣な顔を見て本当なんだって思った」

「説明しづらい能力だから理解できないのも無理はないかな。まぁさっきアリスさんの言った通り、ういはに能力を極力使わせないようにはする」

 

 アルスと黛の話を聞いて、アリスは取り敢えず目的地の方向へと体を向ける。

 

「そんな事より早く私の家に行きましょ、もうすぐ着くから」

 

 アリスは再び歩き始め、それに着いて行くように三人も歩き始めた。

 

「そういえば(かい)くんはなんで能力が分かったの?」

 

 何故俺だけ呼び捨てじゃないんだと内心思いながらも黛は答える。

 

「それは俺の能力のお陰かな。因みに俺の能力はあらゆる情報を操る程度の能力。アルスは魔法を扱う程度の能力だったね」

「次いでに私のも見たの?」

「いや、個人情報に関わるかもしれないから見てはないかな」

 

 黛の考えにくすっと笑みが(こぼ)れるアリス。

 なんで笑うかなと思う黛に「変な所で紳士的ね」とアリスは答えた。

 

「紳士的という言葉はありがたいけど、変と付くと深い意味になりそうだからやめてほしい」

 

 黛がそう言うと同時にういはとアルスが(こら)えきれなくなって笑い始める。

 それに釣られてアリスも本格的に笑い、黛は一時釈然(しゃくぜん)としないまま三人の笑い声を聞く羽目になった。




アルス「そういえばなんで程度の能力って言ったの?」
黛「東方Projectの世界だからそれらしく言ってみただけかな」
ういは「程度って付くとなんかカッコ悪いですね」
黛「まぁそれはちょっと分かる」
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