機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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大渦のあと

 宇宙世紀0088年2月22日 グリプス宙域

 

 宇宙の暗闇を切り裂くような眩い一筋の光が放たれた。

 コロニーレーザー。全長30Km以上、直径6Kmを越える円筒形の巨大な砲台から放たれた光は、その射線上に位置したティターンズ艦隊を飲み込み蒸散させた。

 艦艇の轟沈を示す爆発の光が星々の瞬きのように輝く。その様子を眺める一体のMSがいた。MSA-099 リックディアスだ。

 

 エゥーゴの作戦が首尾よくいったことを見て取ったリックディアスのパイロットであるゲイルは、安堵の息を吐く。

 引き締まった顔立ちをしているゲイルは、微かに東洋人の血を感じさせる容貌であった。

 

「上手くいったようだな。さすがはブライト艦長だ」

 

 ヘルメットのバイザーを上げて、深く呼吸をしたゲイルは操縦桿を握りしめて母艦へと帰投するため機体を翻した。

 その時、モニターに流れ星のような光が映る。

 とっさにフットペダルを操ってスラスターを吹かすと、リックディアスを急加速させ流れる光から距離を取った。一秒後、リックディアスのいた位置を閃光が走り抜ける。

 

 ビームライフルの光だ。

 ゲイルは戦場で気を抜いた己を恥じるとすぐに思考を変え、モニターに映る残弾に目を向ける。

 右手に持つクレイバズーカの残弾は2発。左手に握るビームピストルは3発程度のエネルギー残量であった。

 

 もう予備の弾倉はない。

 ゲイルはここに来るまでにMSを3機撃墜し、2機撤退させている。

 エースパイロットとして活躍している彼にとって、1機程度ならば現状でも戦えるであろう。

 

 だが、彼に焦りの色が見えている。母艦から離れすぎてしまっていたのだ。

 今は1機かもしれないが、増援が来ないとも限らない。

 できるだけ戦闘を回避し、母艦があると思しき方向に向かわねばならなかった。

 

 顔を歪めたゲイルは敵から一定の距離を取りつつ相手の出方を見ることに決めると、使用する武器を選択し、頭部にあるバルカンファランクスを放つ。

 2連装のバルカンから銃弾をばら撒き、敵を牽制する。MSには効果的な武器ではないが、敵にプレッシャーを与えることができるはずだ。

 敵の動きを予測し照準を合わせ、バルカンを放つ。

 

 だが、敵はバルカンを嫌がりもせず、距離を縮めてきた。

 モニターに映し出されたのは、RMS-154バーザムの文字だ。

 ティターンズの主力MSであり、ティターンズを象徴するような紺色を基調としたMSはビームライフルを放ちながら更に加速する。

 

 無謀ともいえる突撃にゲイルはたまらずビームピストルで応戦した。

 

「墜ちろ!」

 

 放った一発がバーザムの右腕を貫くと、ビームライフルに誘爆し、バーザムは大きく吹き飛ばされる。

 今が好機。姿勢制御をされる前ならば落とせる。

 ゲイルはすぐさまリックディアスのクレイバズーカを打つと、ロケット弾が白い煙を上げながらバーザムの左足に着弾した。

 

 更に弾き飛ばされるバーザム。右手と左足を失った状態では、もう継戦能力は残っていないだろう。

 注意しながらバーザムから距離を取っていくと、息を吹き返したかのようにバーザムがスラスターを全開にして不規則な軌道を描きながら宇宙を舞った。

 姿勢制御もままならない状態のバーザムは、そのままビームサーベルを抜き放ち、リックディアスに特攻を仕掛ける。

 

「玉砕か……」

 

 ゲイルの目に悲しみの色が滲んだのも束の間、すぐに鋭い眼光を見せた。

 リックディアスのビームピストルから発射されたビームがバーザムの胸を貫くと、爆発しながら宇宙に散る。

 横目でその光景を確認したゲイルは、残弾が僅かであることを警告する赤い表示を見て、ため息を吐いた。

 

 ティターンズの誇りとやらが、あの無謀な玉砕をさせたのだろうか。

 それとも、スペースノイド憎しの感情か。どちらにせよ、死んでいった者の気持ちは分からない。生き残った自分がすべきことをやろう。

 すぐに気を取り直しフットペダルに力を込めた時、光が明滅するのが見えた。

 

 また敵か。一瞬身構えたが、すぐに張り詰めた緊張が和らぎ、彼の口元が緩んだ。

 光の点滅はレーザー通信によるもので、それが伝えてくるのは救援に駆けつけてくれた者のお叱りの言葉であった。

 

「まったく。今度は何を言われるのやら」

 

 独りごちると応答の合図を送り、これからのことを考え肩をすくめた。

 エゥーゴの立案したメールシュトローム作戦によりティターンズが崩壊し、グリプス戦役が終わりを告げたことを彼が知るのは、()に説教を食らった後であった。

 

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