機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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途絶

 コロンブス級輸送艦ロズウェルから、宇宙にMSと同じ人型の大きさのバルーンが大量に放出された。

 続けて、ガンダムMk-Ⅲとシュツルムディアス、プロトデルタが発進する。ロズウェルのもう片方のMSデッキからは3機のネモが飛び立ち、先行した3機の後方に位置付けた。

 ゲイル達3人の動きと比べると、ネモ隊の動きは揃っておらず、速度を合わせるためのスラスターやバーニアを余計に使用している。

 

 MSパイロットとしての訓練時間をやっと終えた者達に、ベテランと同じ動きをしろという方が酷だな、とゲイルは思う。

 今、ゲイル達の任務は新米パイロットの強化訓練である。MSパイロットになったからと言って戦場で活躍することはできない。実戦に勝るとも劣らない訓練を乗り越えてこそ、やっとモノになるのだ。

 まだもたついているネモ隊に向けて、ダンが叱咤する。

 

「たらたらしてると、ランニング追加にすんぞ! 訓練でもたついてたら、実戦じゃ即あの世行きだ! 分かってんのか!」

 

 訓練教官っぷりが板についてきたダンの言葉に、新兵達が声を上ずりながら了承した。

 

「焦って、無理に合わせようとするな。最初は、ゆっくりと相手の動きを見ながらだ。連携できるのとできないとでは、戦場での生存確率が大幅に変わる。覚えておけ」

 

 厳しく言うダンの代わりというほどでもないが、ゲイルは新兵をおもんばかるような言葉を選ぶようにしていた。

 そのせいか、新兵達に懐かれているのはゲイルの方で、ダンは恐れられるようになっている。損な役回りを率先してやってくれているダンの方が余程いいやつだと思うのだが。

 ダンはそのことについて特に何も言わないので、不満に思っている訳ではなさそうだ。上官は嫌われるのも務めだという意識があるのかもしれない。

 

 ネモ隊の動きが少しずつだが揃い始めた。ネモ隊の後方に回っていたプロトデルタからの通信が入る。

 

「皆、良い感じ。今の感覚を覚えたら、次もきっと大丈夫だよ」

 

 最後はこうしてライセイが褒めるというのが、この訓練の一連の流れとなっている。そのため、新兵からの人気はライセイが一番であった。

 ライセイの腕前もプロトデルタに乗るようになってから、磨きがかかったと思う。アオイも扱いづらいと言っていたMSに苦戦しながら乗り続けた甲斐があったというものだ。

 模擬戦の戦績も徐々に変わってきており、ライセイに対する勝率は7割を切りつつあった。

 

 ライセイは化けるかもしれない。元々、素質はあったと思っていたが、それが開花し始めたといった感じである。

 プロトデルタという暴れ馬に乗ったお陰だろうか。それとも、アオイの的確なアドバイスの賜物なのだろうか。何が切っ掛けか分からないが、喜ばしくもあり少し不安であった。

 今は同じ所属でいることができているが、ライセイが認められてしまえば別の艦に行かないとも限らない。そうなったら、ライセイを守ることができなくなってしまう。

 

 ライセイのことを考えればエゥーゴを脱退した方が良いと思うが、結局その決心がつかないままでいる。

 このままではなぁなぁで過ごしてしまいかねない。ライセイと一度、腹を割って話した方が良いのだろうか。

 悩ましい問題が頭の中を過っていると、宇宙空間を漂うバルーン群に接近していた。

 

「よし、止まれ!」

 

 ダンの言葉に従い、全機スラスターを調整し、スピードを落とした。

 

「今日は連携を意識した実射訓練だ。バルーンを素早く正確に落とせ。平均タイムをオーバーしたら、ランニング1周追加だ」

 

 訓練教官ダンの酷な指示に、訓練生は悲痛な声を上げる。

 

「ガタガタ言うな。平均だぞ? 平均より上手くやれば、問題ないんだからな。ほら、さっさと準備しろ」

 

 ここで言う平均だが、新米達だけの平均ではない。この訓練を受けた中堅どころのパイロットも含まれているので、ダンはなかなか厳しいことを言っている。

 訓練生達がかわいそうに思えてきたとき、ロズウェルから通信が届いた。

 

「全機、ロズウェルに帰投して」

 

 アオイの声だった。訓練を中止しなければならない事態が発生したというのか。ゲイルが返すよりも先にダンが返事をした。

 

「あ? これからってときなんですけどぉ?」

 

「これは命令よ」

 

「はっ。じゃあ、何か。ネオジオンでも攻めてきたってのか?」

 

 ダンの返しに、アオイがためらったように少し間を開けた。

 

「エゥーゴ所属の輸送艦ハリマが行方不明になったの」

 

「はっ!? どういうことだ?」

 

「分からないわ。ハリマから救難信号が出たんだけど、それが少ししたら消えたそうよ。それ以降、通信は途絶。行方が分からなくなったの」

 

「おいおい。俺達はお巡りさんじゃないんだぜ?」

 

「分かっているわよ。でも、今すぐに動けるのはロズウェルしかいないの」

 

 アオイの言う通り、エゥーゴの艦隊の修復は進みつつあるが、すぐに出航できる船は少ないだろう。

 宇宙に出ていて実弾まで積んでいるロズウェルの方が捜索は適任だ。個人的な事情で渋るダンの代わりにゲイルが応える。

 

「分かった。全機帰投する」

 

 輸送艦が行方不明になったとは、ただ事ではない。だからか、妙な胸騒ぎがする。

 ゲイルを言い知れぬ不安感が襲った。

 

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