機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
広大な宇宙でたった1隻の船を見つけるのは至難の業である。
輸送艦ハリマが消えた周辺の探索を終えたロズウェルは、捜索区域を広げるためにMS隊を出撃させた。
ハリマが進んでいた方向へと舵を切るロズウェルから離れすぎない程度に散開したゲイル達は、モニターを注視して手掛かりがないかを探す。
もし、ネオジオンに襲われたなら戦闘の跡が残っている可能性が高い。
ただ、この宙域にはその名残が感じられない。襲われた訳ではないのか。ならば、何らかのトラブルに巻き込まれてしまったのかもしれない。
出撃前に確認したハリマのデータを思い出す。
ロズウェルと同じコロンブス級輸送艦のハリマにはMSが6機積まれており、ロズウェルと同様に実弾演習に出ていたとのことだ。
搭載されたMSは全機シュツルムディアスということで、エゥーゴのベテラン勢が集まった訓練だったようだ。その中には、先日言葉を交わしたデュークの名があった。
エゥーゴを批判したデュークの言葉が脳裏によみがえる。
あの時、エゥーゴと共に生きる価値があるのかとの問いに答えられず、それで十分だとデュークは言った。
何が十分なのだろうか。何を思って言った言葉なのか、分からずじまいだった。考えてもでない答えを探していると、ダンからの通信が入る。
「どこにも見当たらねぇな。戦闘もしちゃいなさそうだし、単に通信機械の故障じゃないのか?」
「それはあるかもな。たとえ襲われたとしても、シュツルムディアスが6機もいれば、そう簡単にやられはしないだろう」
「だよな。てか、このままじゃ、ネオジオンの制宙圏内に入っちまうぞ? 大丈夫か?」
「そろそろ切り上げ時かもしれないな。提案してみるか」
ゲイルがロズウェルに通信を入れかけたとき、ライセイの声が響く。
「見つけたかも! 座標データ、送るね」
送られてきたデータを確認し、ズームで拡大してみると船の影と思しきものが見えた。
「ライセイ、よくやった」
「すげぇな、ライ。あんなの良く見つけたな」
2人に褒められたライセイが照れくさそうに言う。
「いや、勘というか、なんとなく感じたというか」
「なんだぁ? ニュータイプみたいなことを言ってよ」
「いやいや、そんなんじゃ。もう、いいでしょ。早く向かおうよ?」
ライセイの言うとおりである。ゲイルはロズウェルに通信を入れ、散開していたネモ隊を集結させてハリマと思われる船影へと向かった。
距離が縮まるに連れて、船影がはっきりする。シルエットから間違いなくコロンブス級輸送艦であることが分かった。
ハリマへと通信を試みるゲイル。
「こちらエゥーゴだ。ハリマ、応答せよ」
返答はない。焦燥感がじわりと滲んできた。
「ハリマ、聞こえていないのか?」
その時、ハリマから3つの光点が離れていくのが見えた。
あの光はMS。胸騒ぎがしたゲイルはすぐさま声を上げた。
「各機、止まれ!」
「どした、ゲイル?」
「いやな予感がする。警戒態勢に入れ」
ゲイルの指示が飛んだ瞬間、光点から二筋の光が放たれた。
光をもろに浴びたネモが爆散する。光の正体はビームだった。では、あの光点は敵か。
ゲイルはモニターにズームされた機影を見て、息を呑んだ。
「シュツルムディアスだと?」
ズームを掛けたシュツルムディアスが背部の大型バインダーの先端にあるビームカノンをゲイル達に向ける。
「散開!」
ゲイルの指示に反応できたのはダンとライセイで、残りのネモ2機は一瞬、出遅れた。
その遅れが、更に1機のネモの撃沈という結果を生んだ。瞬く間に2機のネモを失ったゲイル達。迫る3機のシュツルムディアスに対し、距離を取る。
「ダン! ライセイ! 奴らの相手は俺達がするぞ!」
「了解だ! おい、シマン。お前は下がっていろ」
シマンと呼ばれたのは、生き残りのネモのパイロットだ。
「は、はい!」
一目散に去っていくネモを一瞥する。これで余計な気を使わなくて済む。
相手は3機。こちらも3機。機体性能なら、こちらに分がある。ゲイルは牽制のために、ガンダムMk-Ⅲのビームライフルを発射する。
放たれたビームを嫌がるように分散したシュツルムディアス隊に向け、ダンのシュツルムディアスとライセイのプロトデルタがビームを放つ。
連携を断ち切るように攻撃を仕掛けたゲイル達は、1機に的を絞ってビームを連射した。
狙われた1機はたまらず、距離を置くためにスラスターを強めに噴射して遠くに下がる。残る2機は連携を取り戻すように動き始めたが、それを見過ごすゲイル達ではなかった。
再び、ビームライフルを撃って、相手の動きを制する。ビームを避けた2機のシュツルムディアスの間に距離が空いた。
「よし! 俺が仕掛ける。ダン、ライセイ、サポートを頼む」
言うと距離を縮めながらビームライフルを発射した。
迫るビームを最小限の動きで避けたシュツルムディアス。この動き、なかなかできる。
敵のパイロットの腕前を確認したゲイルは更にスラスターを噴射し距離を詰めて、ビームライフルを腰部にマウントさせると、ビームサーベルを抜いた。
シュツルムディアスも同様にビームサーベルを抜き、加速する。
すれ違いざまに一閃。ビームサーベル同士がぶつかり合い、火花を散らした。
ガンダムMk-ⅢとシュツルムディアスはすぐさまAMBACで姿勢を制御すると、再び接近する。
再びぶつかり合うビームサーベル。
つばぜり合いのように、ビームサーベルで押し合いとなった。
パワーについてはガンダムMk-Ⅲの方が若干上である。このまま押し切るのみ。ゲイルの手に力が入った。
「聞こえるか、ゲイル中尉?」
無線から聞こえたのは、デュークの声であった。