機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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グラナダ強襲

 月周回軌道に入ったムサイ級巡洋艦クレイトスとアキレウスの2隻のMSデッキでは発進前の最終チェックが行われていた。

 クレイトスのMSデッキに並ぶのはネオジオンの主力MSガザDが2機。そして、新型のガ・ゾウムとバウ・エーデルだ。

 ガ・ゾウムはガザDの発展型であるが、フレームや変形機能は大きく変わっている。装備についても見直しが図られており、全てにおいてガザDを上回る性能であった。

 

 もう1機の新型であるバウ・エーデル。このMSはバウの基本設計をそのままに、非可変機としての運用を目的とした試作機だ。

 バウ自体の性能の高さを活かした設計で、変形機構をなくし機体の強度を高めると共に、大型のバックパックを搭載することで可変機に負けない高機動性能を得ることができた。

 ただ、機体性能を追求しすぎた面があり、一般のパイロットでは扱いに困る代物になっている。

 

 そこで強化人間であるギルロードの登場であった。卓越した操縦センスを持っていたギルロードは、強化されたことで更にその腕を増している。

 その上、バウ・エーデルにはサイコミュも搭載しており、強化人間のギルロードの性能を120パーセント活かすMSとなっていた。

 ただし、ギルロードのことを強化人間と知る者はごく一部に限られているため、整備士達もサイコミュについては把握していない。

 

 ガ・ゾウムとバウ・エーデルは2機とも白を基調として、機体の各所に金色の塗装がされており、気品を感じさせるMSであった。

 MSデッキにパイロットスーツ姿のギルロードとセティが姿を見せる。

 

「ギルロード、あまり無茶はしないように。あなたに何かあったら、大変です」

 

「心配しすぎだ。私がエゥーゴごときに遅れを取るはずがない」

 

「過信は禁物です。私も援護しますから、先行しすぎないように」

 

「分かった。姉さんこそ、無理をしないように」

 

 そういうと、ギルロードはバウ・エーデルのコクピットに着座し、セティはガ・ゾウムに乗った。

 モノアイに光が宿ると、MSデッキの隔壁が上がる。月を見下ろしたギルロードは、微かに笑みを浮かべて言う。

 

「ギルロード・シュヴァ。バウ・エーデル、出るぞ!」

 

 射出されたバウ・エーデルの眼下には、月面都市グラナダの街明かりが輝いていた。

 

 ◇

 

 緊急警報が鳴り響くグラナダの宇宙港。

 サラミス級巡洋艦ケルンはネオジオン接近の知らせを受け、緊急発進の準備に取り掛かっていた。

 遂にネオジオンが攻めてきたのか。ダンはシュツルムディアスのコックピットに乗ると、すぐに起動準備に取り掛かった。

 

 ゲイルとライセイがいないときに、こんなことになるなんて。

 背中を預けてきた戦友である2人はジオン軍出身ということで、未だに待機命令が解けていない。

 今のケルンのMS隊はダンを除いて新たに配属された者達だが、MS操縦技術の練度は高くない。そのため、MS隊の隊長はダンが務めており、散々訓練を行ってきた。

 

 今ではMS操縦もだいぶ様になってきたが、ゲイルとライセイに比べるとその技術は格段に落ちる。

 ないものねだりをしても仕方がない。あいつらの代わりに俺がグラナダを守るのだ。

 ケルンが轟音を上げながら、グラナダを出航し始めた。ネオジオンは月周回軌道上に迫っていたということだったので、すぐに戦いとなるだろう。

 

 無線で各MSパイロットにダンが言う。

 

「お前達、緊張するな。とは言わん。ビビッて当然だ。逃げたくなる気持ちも分かる。だが、俺達の後ろにはグラナダに住む人達がいることを忘れるな。帰ったら、一杯おごってやる。生きて帰るぞ」

 

 ダンの通信が終わると、さっそくアラートが鳴り響く。

 おいでなすったな。ダンは戦場に出向く際の心地よい緊張感を味わうと、少しだけ口角を上げた。

 MSデッキの隔壁が開くと、カタパルトに足を乗せる。

 

「ダン・ロクスター。シュツルムディアス、行くぜ!」

 

 カタパルトから射出されたシュツルムディアスの前方に8つの光点が輝いていた。

 グラナダから出向しているのはケルンを入れて、サラミス級巡洋艦が3隻。MSの数は12機だ。

 数ならば勝っている。あとは、敵の腕前次第だ。

 

「各機、俺から離れるなよ。訓練を忘れるな。そうしたら、必ず生きて帰れる」

 

 ダンは自分にも言い聞かせるように語ると、操縦桿をギュッと握りしめた。

 

 ◇

 

 グラナダから出てきたのは、サラミス級巡洋艦が3隻だった。

 思ったよりも防衛に出てくるのが早かったことに、ギルロードは感心する。

 腐ってもエゥーゴか。敵を前にしても、ギルロードに焦りの色は見当たらない。

 

 バウ・エーデルでの実戦は初めてだが、訓練は積んできた。今更、緊張するほどのことはない。

 フットペダルを軽く踏み込むだけで、心地よいGを感じることができた。ギルロードの表情が歪なものに変わる。

 

「さて、何機落とせるかな」

 

 加速をするバウ・エーデル。通信からはセティの声が聞こえるが返事をすることはせず、まっすぐサラミスへと突き進む。

 応戦するために出撃したのは、見覚えがある機体だった。

 たしか、エゥーゴを裏切ったデュークが持ち帰ってきたシュツルムディアスだったか。エースパイロット用に配備されていると聞いていたが、その通りであればあれはエースだ。

 

 張り合いがない相手しかいないのではと危惧していたが、杞憂に終わったことにギルロードは敵に感謝をした。

 シュツルムディアスを先頭にして、そのやや後方にネモが3機ピタリと付いている。教本通りの動きから察するに、シュツルムディアス以外は楽しめそうもない。

 更に速度を上げたバウ・エーデルは、ビームライフルをシュツルムディアスに向けてビームを放つ。

 

 射程距離ギリギリからの射撃に反応したシュツルムディアスは、バーニアを噴かして回避した。

 なかなかの避け方ではないか。ギルロードの口元に笑みが浮かぶ。

 

「楽しませてもらおうか」

 

 グラナダ上空での戦いが始まった。

 

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