機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
バウ・エーデルは加速を続けたまま、シュツルムディアスに接近する。
真っ向勝負を挑まれたシュツルムディアスに乗るダンはクレイバズーカを放つと、背部のバインダーにあるビームカノンの照準を向ける。
狙いはロケット弾。接近するバウ・エーデルの目の前でロケット弾を爆発させて、牽制しようという腹積もりだ。
直進するバウ・エーデルに迫ったロケット弾目掛けてビームを放つ。
爆発するロケット弾が上げる粉塵。猫騙しみたいな戦法だが、相手の動きを制する事ができる手である。
躊躇してスラスターを緩めたら、そこにズドンだ。ダンはクレイバズーカとビームピストルを構える。
粉塵を突き破ったバウ・エーデルは、更に速度を上げていた。
「なっ!?」
反射的にクレイバズーカとビームピストルを撃つダン。バウ・エーデルはその攻撃を何処吹く風と言わんばかりに、するりと抜けていく。
照準を合わせている暇はない。ダンはすぐにビームピストルを放ってビームサーベルを握らせた。
それと同時にバウ・エーデルもビームサーベルを抜きはなつ。
互いの間合いに入った。振るわれるビームサーベルがぶつかり合い、眩い光を放つ。
バウ・エーデルは速度を上げたまま、シュツルムディアスの脇を抜けると、後方に位置していたネモに襲いかかる。
パイロットごと胴体を真っ二つにされたネモは爆発した。
「てめぇ!」
スラスターを噴射し反転したシュツルムディアスは、クレイバズーカとビームカノンを撃ち始めた。
その攻撃をまるで、背中に目があるようにバウ・エーデルは避けていく。
更に加速を続けるバウ・エーデル。最高速度に到達すると、目前にサラミス級巡洋艦ケルンが迫っていた。
対空砲火に晒されるバウ・エーデルだが、ギルロードの表情に焦りはなかった。
むしろ、狩りを楽しむハンターのような、にやりとした笑みを浮かべている。
機銃の掃射を潜り抜け、ケルンの懐に入り込んだバウ・エーデルは、メインブリッジに向けてビームライフルを向ける。
「やめろー!」
ダンの絶叫が響く。無情にも放たれたビームによって、ケルンのメインブリッジは蒸散。
バウ・エーデルはそのままビームライフルを船体に撃ち続け、ケルンは火を噴きながら崩れ落ちるように落下していった。
爆発しながら下降していくケルンを見るギルロードの目は輝きに満ちており、その目はそのままダンのシュツルムディアスへと向く。
「さっきの反応はなかなかだった。だが」
反転したバウ・エーデルは、再び加速した。その速度にネモ隊は反応することができず、まともにビームライフルを撃てなかった。
無反応な程に動きがないネモの1機に、バウ・エーデルのビームライフルの銃口が向く。
吐き出されたビームがネモの腹部を直撃した。四散したネモを見たダンが歯を噛み締め、怒りを露わにする。
「ふざけんなぁ!」
スラスターを全開にしたシュツルムディアスがバウ・エーデル目掛けて突進する。
クレイバズーカとビームカノンを連射しながら距離を詰めていくシュツルムディアスの攻撃を、射線をかいくぐりながら迎え撃つバウ・エーデル。
両者共にビームサーベルを構え、切りかかる。
その瞬間、バウ・エーデルは急減速を掛け、シュツルムディアスのビームサーベルをすんでのところで避けた。
空振りしたシュツルムディアスのビームサーベルを持つ左手をバウ・エーデルのビームサーベルが一閃。切断された左手が爆散し、シュツルムディアスは体勢を崩した。
姿勢を整えようとダンはバーニアを操作したが、それによって生じた減速をギルロードは見逃さなず、素早くビームライフルを放つ。
左足を射抜かれたシュツルムディアスはくるくると回転し、姿勢制御不能へと陥った。
回避行動もできないシュツルムディアスにビームの第二射が放たれる。今度は右足を貫かれ、爆発の衝撃で更に機体は回転を増した。
ダンはコクピットの中で吐き気を覚えながら、必死に機体の姿勢を戻そうとする。
このままでは、なぶり殺しだ。脳をシェイクされているダンにも、それぐらいの判断はできる。
警告音が鳴り響く中で、ダンは死の気配を察知した。心にジワリとにじり寄る死に対し、ダンは歯を食いしばり、体に叩き込んできた操縦技術で必死に機体を安定させようとする。
死んでたまるか。心の中で何度も自分に言い聞かせ、ありとあらゆる手を尽くすと機体がバランスを取り戻した。
スラスターとバーニアの角度を調整し、反転したシュツルムディアスはビームカノンをバウ・エーデルへ向ける。
「くらえっ!」
打ち出された2本のビームがバウ・エーデルを貫かんと襲い掛かる。
「むっ?」
ギルロードはスラスターを噴射して、ビームを避けた。その大雑把な回避行動にギルロードは自身への苛立ちを露にする。
思わずフットペダルを踏まされてしまった。あのまま落とせると思っていたが、あの状態から復帰できるとは。
心の中で敵に賛辞を贈るギルロードだが、すぐにその目は獲物を襲うハンターのものに変わった。
ダンのシュツルムディアスはまともに動けず、回避行動もままならない。まな板の上の鯉のような状況のダンに、バウ・エーデルのビームライフルが向けられる。
だが、バウ・エーデルはビームを撃つことなく、スラスターを噴射して後退した。そのコンマ数秒後、ビームがバウ・エーデルのいた位置を貫く。
ネモ隊の1機がバウ・エーデルに向け、ビームを乱射しながら、ダンのシュツルムディアスのカバーへと入った。
ネモはシュツルムディアスの右手を掴むと、背中を見せて逃走をし始める。
無粋な奴だ。ネモの背中を追おうとしたギルロードに無線が入る。
「ギル、待ちなさい」
セティからの通信に、ギルロードは軽く舌打ちをした。
「もう少しで2機とも落とせた」
「深追いは危険です。後続のMSも出てきていることですから、全員で連携して戦いましょう」
「分かった。フォローを頼む」
運の良いやつめ。月面へと向かうシュツルムディアスとネモを見て、ギルロードは口の中で呟く。
セティのガ・ゾウムとガザD隊が到着するのを待ったギルロードは、迫りくるエゥーゴのMS隊を品定めした。
先ほどのシュツルムディアスから感じたプレッシャー以上のものを持っている相手がいないと分かると、ため息を吐いた。
「消化試合だな」
露骨にテンションを下げたギルロードは、周りの速度に合わせるように動き始めた。
この後、グラナダ防衛に出た部隊はギルロード達により壊滅。ネオジオンは無傷のまま、その役目を終え帰投していった。