機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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頼れる友

 エンドラ級巡洋艦ハイドラのメインデッキから、素っ頓狂な声が聞こえた。

 

「あらま~、アーガマ爆破に失敗しちゃったのかぁ。せっかく、ギルちゃん達が頑張って敵を減らしたのにね」

 

 モニターに映るギルロードに対して、ヘラヘラと笑いながら言うローマン。

 ハマーンの部下によるグラナダに停泊したアーガマの破壊が失敗に終わったという報せをギルロードから伝えられたが、ローマンにとっては関心事ではないようで、普段と変わらない穏やかな表情を浮かべている。

 

 艦長席に座るヘックスは胃がキリキリする思いをしながら、2人の会話を聞いていた。

 またギルロードの機嫌を損ねはしないかと思うとしんどくて仕方がない。

 相手の神経を逆撫でしがちなローマンは続ける。

 

「アーガマのことはハマーン様の部下にお任せするとして、俺達はどうすんの? 地球侵攻に加われるのかな?」

 

「それについては、まだ検討中とのことだ。命令があるまで、変な動きをするな」

 

「は~い。まあ、俺は地球にいい思い出ないから、行きたくないってのが本音なのよね。地球もそんなにいい所じゃないよぉ」

 

 しみじみとローマンは語る。一年戦争の時、ローマンとヘックスは共に地球に降下して戦った仲である。

 地球での敗戦色が濃厚になった頃のことを思い出すと、地球に対して複雑な思いしかないとヘックスも考えていた。

 日に日に押されていき、補給もままならない状況で、1日を生きていくことで精一杯だった日々には戻りたいとは思わない。

 

 宇宙海賊になって、アクシズに合流してからは食う物には困らない生活なので、割と落ち着いて嫌いではないが、どうにも上の連中とは気が合わない。

 ローマンはどう考えているのか読めない男なので、表には出てこないが、自分は顔に出やすい。

 気を抜くとローマンの口車に同調してしまいそうになるので、上との会話には細心の注意を払っていた。

 

「なぁ、ヘックスもそう思うだろう?」

 

 なんで俺に振るんだ、馬鹿野郎。と怒鳴りたくなったが、下手に返すのもギルロードの心象を損ねかねないので、ぐっと堪えた。

 

「我々は命令さえあれば、どこにでも行きます」

 

「またまたぁ、いい子ちゃん面してもダメだよ? ギルちゃん、俺達のこと全然考えてくれないから、すんごい命令されるかもよ?」

 

「俺達は軍人だ。命令に従うまでだ」

 

 ヘックスの適切な回答がつまらなかったのか、ローマンは露骨に肩をすくめた。

 モニターからこちらを見ているギルロードにも変化がないことから、自分の回答は間違っていなかったようで胸を撫で下ろす。

 機嫌を損ねていないギルロードが言う。

 

「ヘックスの言う通りだ。命令を待て」

 

「はいはい。つっても、コロニーの殆どはうちの支配下になっちゃったから、やる事は見回りくらいしかないんだけどね」

 

「不穏分子がいつ現れるか分からん。厳重な警備が必要だ」

 

「エゥーゴみたいな? でも、ギルちゃんのお陰で、また死に体になったんじゃないの?」

 

「いや、エゥーゴは侮れない。即応できた部隊が少なかっただけかもしれん」

 

 珍しくあごに手を当て考え込むギルロードを見たローマンが言う。

 

「まあ、まだ見せてない戦力はあるよね。デュークちゃん達から貰ったデータにも色々と載ってたしさ」

 

 見せていない戦力とは、あのガンダムタイプのことか。

 デュークを迎えに行った際に少しだけ接触したようだが、ギルロードのグラナダ襲撃時には姿を見せていない。

 アナハイム・エレクトロニクスのお膝元のグラナダになら、まだ戦力は隠されていると考えても良いだろう。

 

「では、我々の当面の仕事は各サイドの巡回ということで?」

 

 ヘックスの問いにギルロードは頷いた。

 

「その通りだ」

 

「承知しました。それでは、また何かありましたら、ご連絡を」

 

 さっさと話を打ち切ろうとしたヘックスの言葉をローマンが遮る。

 

「ねぇ、ギルちゃん? そろそろうちのMSを更新してくれない? さすがにガザCのままじゃキツいって」

 

「そうだな。ディクセル様に話だけはしておく」

 

「おっ、気前がいいねぇ。よろしく頼むよ。んじゃなね」

 

 そう言うと、ローマンは勝手に回線を切った。

 これでギルロードが不機嫌になったら、元も子もないだろう。と思ったが言っても無駄なので言わないことにした。

 

「ガンダム……」

 

 ローマンが呟いた。

 

「やり合いたいのか?」

 

「まあね。俺、男の子だから燃えるのよ。ガンダムって聞くとさ」

 

「やるのは勝手だが、やられるなよ?」

 

「やられる気前提で戦うわけないじゃん。勝つ気で行くよ」

 

 おどけたように言うローマンだが、戦いたいのは本音だろう。ガンダムと聞いて戦いたいと思う人間がどれだけいるだろうか。

 自分の身の丈を知っていれば、できれば避けたい相手に違いない。

 そんな相手に挑むのは思い違いをしている者か、本当の猛者のどちらかだ。

 

 ローマンは間違いなく後者である。こいつがいうなら、勝てるだろう。例え相手がガンダムであろうと。

 ヘックスの信頼を知ってか知らずか、ローマンは明るい笑みを見せた。

 頼りになる奴だよ。口には出さないが、ヘックスはそう思った。

 

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