機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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その名はアヴァロン

 ゲイルとライセイが現場に復帰できたのは、スペクターと会話をしてから2週間後のことであった。

 その間に、エゥーゴの旗艦であったアーガマがグラナダに寄港し、修理と改修を受けた。

 その際にネオジオンの襲撃を受けたが大事には至らず、アーガマは次の任務である地球に降下し、ネオジオンの地球侵攻軍と戦っているという。

 

 ゲイル達を驚かせたのは、アーガマのMSに搭乗している者達が、まだ年端も行かない少年少女であったことだ。

 子供を戦場に送り込む。それも最前線にだ。エゥーゴのやり方に憤りを感じるが、それだけ切羽詰まっているということだろう。

 使えるものは何でも使う。間違ってはないが、かつてのジオンを彷彿とさせられる行為に賛同はできない。

 

 とはいっても、現場の人間の声が上に届くような現状ではない。その上、やっと現場に復帰できたのに下手な騒ぎを起こして、また待機処分にされたくはなかった。

 アーガマに乗った子供達にできることは、エゥーゴのこれ以上の弱体化を防ぐことだ。

 

 再びガンダムMk-Ⅲのパイロットとなったゲイルは、ガンダムの名を背負って戦う覚悟を決めた。

 ライセイもプロトデルタのパイロットに復帰できたこともあり、勘を取り戻すための訓練に必死に取り組んでいる。

 ただ、2人の正式な配属先は決まってはいない。ケルンの代わりに何に乗るのか。スペクターの話しぶりでは、前線に戻れるはずだが。

 

 訓練を終えたゲイルはコクピットから降りると、同じく訓練を終えたライセイに声を掛ける。

 

「今日はいい動きだったな。俺もうかうかしてられない」

 

「まだまだだよ。兄さんの反応速度が良すぎて、ついて行くのがやっとだよ」

 

「そう簡単には負けられないからな。ガンダム乗りの格好がつかなくなってしまう」

 

「プロトデルタもガンダムに近いんだけどね」

 

 言うとライセイはくすりと笑った。プロトデルタの前身である百式もガンダムの開発に大きく関わっている。

 ガンダムの冠はないが、その根っこはガンダムに近いプロトデルタの性能はガンダムMk-Ⅲに勝るとも劣らない。

 互いの機体を眺めていると、1人の女性が近づく。アオイであった。

 

「2人共、お疲れ様。ライ君、惜しかったわね。もうちょっとで、ゲイルを捉えられると思うわ」

 

「アオイさんのアドバイスのお陰ですよ。いつもありがとうございます」

 

「私が好きでしているから、気にしないで。ゲイルの悔しがる顔も見てみたいしね」

 

 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたアオイがゲイルに言う。

 

「ゲイルにもアドバイスしてあげようか?」

 

「気持ちだけ受け取っておく」

 

「可愛くないわねぇ。ライ君、頑張ってゲイルに勝ち越してね」

 

「まったく。さて、反省会をするか?」

 

「ちょっと待って。その前に、あなた達に見せておきたいものがあるの」

 

「見せたいもの?」

 

 こくりと頷いたアオイが数枚の写真を差し出した。

 

「これはアーガマか?」

 

「そう。アーガマ級3番艦よ。もう少しで完成らしいわ」

 

「新造船か。エゥーゴの新たな旗艦になるかもな」

 

「かもしれないわね。で、噂なんだけど、この船の艦長は元ジオン軍出身らしいのよ」

 

「そうなのか?」

 

 元ジオン軍の出身ならばゲイル達と同じく待機処分を受けていたのかもしれないのに、新造船の艦長になれるとは余程の実力者なのだろう。

 好き好んで、今のエゥーゴの艦長職につきたいものは少ないと思われることから気概を感じる。

 

「で、これを俺達に見せたのは何でだ?」

 

「あなた達の配属先は決まってないんでしょう? なら、この船が候補かなって思ってね」

 

「なるほど。確かに前線復帰の願いは出しているが」

 

「知ってるわ。だから、私も志願しようかなぁって思ってるの」

 

「アオイが? MSの調整はどうするんだ?」

 

 前線に配備される前の最終調整を行っているメンバーの1人のアオイが抜けるのは、現場にとっては痛手であろう。

 

「まあ、前線を退きたい人はいるから、欠員が出たら喜んで入る人がいるでしょうね」

 

「なんで前線に出たいんだ? 今の方が安全だろう?」

 

「そうなんだけどねぇ……」

 

 アオイらしくない歯切れの悪さにゲイルは小首を傾げた。これ以上、突っ込んで聞いていいのやら判断ができないゲイルはライセイを見る。

 そのライセイは曖昧な笑みを浮かべていた。

 

「ライセイ、何かあったのか?」

 

「い、いやぁ、兄さん、アオイさんと同じ艦に乗れたらいいねぇ」

 

「ん? まあ、そうだな。心強い味方になる」

 

 ゲイルはしっかりと頷いた。それを見てもライセイはまだ曖昧な表情を見せていた。

 何かが引っかかるゲイルにアオイが言う。

 

「もういいわ。そうだ、この船の名前、気になる?」

 

「もう決まっているのか?」

 

「ええ。アヴァロン。伝説上の島の名前がつけられるって、なんかロマンチックよねぇ」

 

「アヴァロンか」

 

 多くの者が知っているアーサー王伝説に出てくる島の名前だ。架空の島の名をつけられた艦がどのようなものになるのか、どんな期待を背負っているのか。

 この時のゲイルはまだ知らなかった。

 

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