機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
けたたましい緊急警報がサラミス級巡洋艦ケルン内に鳴り響いた。
自室で睡眠をとっていたゲイルはすぐに目を覚ますと、手慣れた手つきでベッドから離れ部屋を後にする。
「各員、第一種戦闘配置。繰り返す。各員、第一種戦闘配置」
オペレーターの緊迫した声音から、訓練ではないことは明白であった。敵は誰だ。ティターンズの残党か。
頭の中で敵を想定していると、MSデッキに向かうライセイの後ろ姿が目に入った。
「ライセイ」
「兄さん。敵が来たのかな?」
「ああ、だろうな」
「無茶はなしだからね?」
「分かっている。お前こそ、落とされるなよ?」
「逃げるのは得意だからね。大丈夫だよ」
誇らしげに握りこぶしを見せたライセイを見て、少しだけ目じりが下がった。
緊張がほぐれたのだろう。何度戦っても、戦場に出るのは緊張するものだ。
MSデッキに到着すると床を蹴って、愛機のリックディアスの頭部へと向かった。
ライセイの愛機はネモだ。リックディアスに比べると格は落ちるが、それでも優秀な機体である。
向かい側にあるリックディアスにダンが乗り込むのが見えた。
「ゲイル・クガ中尉。発信準備をお願いします」
オペレーターからの指示が飛ぶ。了解と応じて、カタパルトデッキへ向かう。隔壁が上がり、吸い込まれそうな闇が眼前に広がった。
また命の取り合いか。ゲイルは口中で呟くと発進の指示を待つ。
「発進どうぞ」
「ゲイル・クガ。リックディアス、出る」
カタパルトから射出されたリックディアスはバーニアで勢いを調整し、後続の二人と合わせるためスピードを緩めた。
全天周囲モニターで後方をちらりと確認し、後続の光を認識する。
訓練通りやれば、二人と問題なく合流できるだろう。前方へと目を戻すと、4つの光が動くのが見えた。
モニターの一部が走る光をズームで映し出すと、そこには見慣れぬモノが映し出された。
銃座の付いた砲台のような形をしたモノが、スラスター光を放ちながらこちらに向かってきている。
データベースとの照合が済んだのかモニターに表示されたのは、AMX-003 ガザCという文字であった。
ガザCとはアクシズの保有する可変式のMSだったはず。
アクシズはエゥーゴ、ティターンズ、どちらにも与しなかった勢力で、旧ジオン公国の残党が終結しているところである。
それが何をしに来たのか。MSを向かわせて来るとなると穏やかな話ではなさそうだ。
後続の二人がゲイルの後方に付いたことを確認し、リックディアスの手を動かして減速のハンドサインを出した。
緩やかに速度を落としつつ、相手の出方を伺うためだ。アクシズは敵対勢力だが、戦闘で疲弊した状況で戦うのは得策ではない。
できるものであれば、何もなくやり過ごしたかった。
無線をオープンチャンネルに設定し、ガザCの部隊に向けて呼びかける。
「こちらはエゥーゴだ。これ以上の接近は敵対行動とみなして応戦することになる。応答を願う」
まずは牽制をする。近づいてくるようであれば、戦う覚悟を示したのだ。
相手がこちらの状況を知っているかは分からないが、あわよくば戦闘を避けられるかもしれない。
ティターンズとの決着がついた今、アクシズは何を考えて、こちらを攻めてきたのか。
その答えが、この瞬間に決まるのかもしれない。
ガザC隊との距離が縮まってきた。リックディアスの持つクレイバズーカの有効射程距離まで、もうすぐだ。
だが、それは相手の間合いに入ることも意味している。
操縦桿を握る手にじわりと力が入った。
「繰り返す。これ以上、接近すれば応戦する。応答願う」
語り掛けた言葉への返事はなく、距離がみるみる縮まっていく。
チキンレースでもしようってのか。心の中で悪態をついた時、1機のガザCに光が宿った。
「散開!」
ゲイルは言うが早くフットペダルを踏み込み、軌道を変えた。その刹那、ビーム光がゲイルの傍をすり抜ける。
野郎、やりやがったな。怒りの言葉は口に出さず、素早く指示を飛ばす。
「各機、応戦だ! 無理をするなよ!」
迫るガザC隊は4機。こちらは3機だ。分が悪いが、そこは腕でカバーする。
伊達に死線を潜り抜けてきた訳では無い。心を滾らせたゲイルに無線が入る。
「兄さんが言うセリフ!?」
「お前が言うな、ってな」
手痛い返しをされたゲイルの口元に笑みが浮かぶ。
「はいはい、悪かったな。落とされるなよ!」
アクシズ。後にネオジオンを名乗るもの達との戦いの幕が上がった。