機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
ネオジオンの地球侵攻は留まるところを知らず、あっという間に地球連邦政府のあるダカールを占拠。勢力を拡大していった。
先のグリプス戦役で疲弊した地球連邦軍は徹底抗戦を避けているようで、ネオジオンとの和平交渉をという声が大きくなっている。
その間、宇宙では大きな動きはなく、ゲイルは訓練に明け暮れる日々であった。
入ってくる情報はどれも悲報ばかりで、聞いていると気が滅入ってしまう。
だが、吉報もあった。エゥーゴの戦力が着々と回復していることだ。建造中だった宇宙戦艦も完成しつつあり、MSの生産も順調で後は兵の練度を高めるだけとなっている。
ネオジオンの目が地球に向いている今がエゥーゴ再建のチャンスであった。アヴァロンを旗艦とした宇宙艦隊ができあがれば、ネオジオンも地球だけに構ってはいられないはずだ。
その時が来るまでは己の牙を磨き続けなければならない。
アヴァロンは実戦こそまだだが、訓練時間はエゥーゴの中では群を抜いて長い。
これは艦長のフォルストが訓練魔だからだ。幾度となく鳴り響いた緊急警報と、日課となりつつあるスクランブル発進。
最初こそは辟易としたが、今となっては生活の一部となっている。といよりも感覚が麻痺しているのだろう。
とはいえ、訓練だからと気を抜いている訳ではない。艦長のフォルストと副艦長のカイムの厳しい目が常に光っており、少しでも手を抜いていると容赦のない叱責が行われた。
ゲイルは、これを悪いとは思っていない。生き延びるためには必要なことだ。こうした地道な訓練を続けることで無意識にでも動けるように体に叩き込み、実戦でへまをしないようにすることができる。
戦闘では、日頃からの積み重ねがものを言う。最後は運かもしれないが、そこに至るまでは日々の研鑽があってからこそだ。
それはMS隊の各員も分かっていることで、最初こそ愚痴をこぼしていたダンとシマンも、今では俊敏な動きで対応している。
これならば、いつ実戦になっても普段以上の力を発揮できるだろう。
部屋で休息をとっていたゲイルの部屋がノックされた。ドアを開けると入ってきたのはクラウスだ。
ゲイルは敬礼をする。
「ゲイル中尉。君に話しておきたいことがある」
「はっ。何でしょうか?」
「艦長から指示がでた。我々は単艦でサイド4宙域へと向かう」
「単艦でありますか?」
サイド4といえば、すでにネオジオンの制圧下だ。そこに単艦で向かう理由があるのだろうか。
「コロニーの奪還にしては、規模が小さすぎると思いますが?」
「そうだな。今回の目的はネオジオンの動きを調査するのが目的だ」
「ネオジオンはサイド4で何をしようとしているのですか?」
「艦長の話ではだが……」
クラウスは表情を硬くすると、ぼそりと呟くように言った。
「コロニー落としだ」
ゲイルの表情が強張る。コロニー落とし。戦争で何度も行われた、スペースコロニーを大型の実体弾として、地表に落下させ攻撃する戦法である。
その被害規模は大きく、都市一つなど簡単に吹き飛んでしまう。それをネオジオンは行おうとしているということか。
「クラウス大尉、それが本当ならば、すぐにエゥーゴの全戦力を投入すべきでは?」
「いや、それはできない。艦長の推測が正しければの話だからな。エゥーゴからは、ネオジオンの艦隊がサイド4宙域へ向けて動いたという情報しか入ってきていない」
「では、真偽を確かめるために向かうと?」
「ああ。もし、本当であれば、すぐさま報告することになるのだろうが」
一拍間を置くと、クラウスは続ける。
「エゥーゴが動けるとは限らない」
クラウスの言う通りだとゲイルは思った。まだ宇宙艦隊は再建中で、残存戦力をすべて投入してしまえば、エゥーゴの本拠地グラナダが丸裸になってしまう。
今できることは、ネオジオンがコロニー落としを仕掛けるかどうか。もし、そうであれば、情報を展開して少しでも被害を減らすことだろう。
思わず、ゲイルは拳を握りしめた。
「戦闘になるのでしょうか?」
「艦長判断になるが、さすがに艦隊とまともにやり合うわけにはいかん。その可能性は低いと思う」
「分かりました。この情報はどこまで伝えれば?」
「今はお前までにしておいてほしい」
「はっ。了解しました」
部屋を去っていくクラウスの姿が消えたところで、ゲイルは考える。
コロニー落とし。あの非人道的な戦法がまた使われるとしたら。想像するだけで恐ろしい。
そして、無力感も覚えた。今のエゥーゴでは止めることができないからだ。
できることが限られているなら、できることを完璧に成し遂げよう。それで人が少しでも救われるのならば。
ゲイルは気分を変えるため、談話室へと向かった。