機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
サイド2から外れた位置にある暗礁宙域の傍を、アヴァロンは航行していた。
浮かぶのは隕石と戦争によって生み出されたデブリ達だ。戦艦やMSの残骸が漂うこの宙域を航行するような船は他にはいない。
近づけばデブリと衝突してしまう危険性があるためだ。そのような場所に近づくのは宇宙海賊のような後暗い連中か、人目をはばかって危険な任務に挑んでいるかのどちらかだろう。
アヴァロンは後者である。
サイド4にネオジオンの動向を確認しに行った数日後に、地球のダブリンに向けてコロニー落としが行われた。
奇跡的にも、コロニーの落着の衝撃は想定よりも小さく、事前に退避勧告が出ていたこともあり被害は最小限だったという。
これはゲイル達が報告した情報を元に、地球のエゥーゴとも言えるカラバという組織と、アーガマが動いことによるものだ。
コロニー落としは止められなかったが、その被害を少しでも軽減できたのは、フォルストの英断があってこそのものである。
ネオジオン勢力圏内の宙域に単艦で向かおうと考える者は、今のエゥーゴには少ないと思う。
頼りになる艦長が次に出した命令が、この宙域の捜索であった。
何の捜索かは聞かされておらず、指定の座標に向かって、そこにある物を回収せよというものだ。
疑問符が頭から離れないが、命令は命令である。余計なことは考えずに任務を全うしなければならない。
アヴァロンから、リックディアスⅡとプロトデルタが飛び立った。捜索はあの2機でやるらしい。
ゲイルは留守番であるが暇な時間を過ごすのではなく、MSシュミレーターの傍にあるモニターを熱心に見ていた。
映し出されているのは、シミュレーターで操作した自機の詳細なデータである。
どのタイミングで攻撃をし、スラスターを噴射したか。無駄な動きがなかったかを確認している最中だ。
ゲイルの横でモニターを見つめているアオイが言う。
「改めて細かく見て思ったけど、ゲイルの戦闘スタイルは情熱的ね」
「情熱的?」
「そう。相手を撃墜することに集中し過ぎて、勢いで攻めてるときがあるのよ」
「そうか? 冷静なつもりなんだがな」
ゲイルは思い返すが、アオイが言うように勢いで攻めているかどうかは分からなかった。
悩むゲイルに、アオイはコンソールを操作して別のデータを表示させる。
「冷静というと、クラウス大尉の戦い方ね。でも、これは参考にならないかも」
「何故だ?」
「戦闘の駆け引きが上手なの。下手にマネしても失敗するのがオチね」
「駆け引きか」
思えばクラウスは、こちらを挑発するような戦い方だけでなく、適度な距離を置いて無駄のない戦い方をする。
感覚でやっているのか、意識しながらやっているのか。どちらかは分からないが、クラウスの戦い方はゲイルには難しいとアオイは言っている。
腕組みをしたゲイルを横目に見たアオイは、またコンソールを叩いた。
「こっちの方が良いかもね」
「これは?」
「ライ君のデータ。彼の戦い方は行儀が良いわ。がっつかないし、無茶はしない。あなたには、良い先生になるかもよ?」
「ライセイが?」
モニターを眺め、ライセイの動きと自分の動きを重ねる。
今なら行けるか。そう判断した動きが多いゲイルに比べて、ライセイはここぞという時に攻めかけていた。
ゲイルの方が撃墜数が多いのは、勢いで押し切るからだろうか。撃墜数では負けているライセイも被弾率はゲイルよりも低い。
冷静な戦い方と言えばそうかもしれないが、少し慎重し過ぎなようにも思えてしまう。
「敵を落とせた方が良くないか?」
「落とせるに越したことはないけど、無理に仕掛けて反撃されるのも嫌でしょう?」
「まあ、確かに」
「ライ君だったら、どう動くかを考えてみたらどうかしら? あなたの方が腕は上よ? チャンスを掴む回数は多いんだから、落ち着いて戦えば良いのよ」
「ライセイが、どう動くか、か」
考えたこともなかった。ライセイの戦いを一番傍で見ていたはずなのに、その良さを感じ取れていなかったとは。
ゲイルは今一度、ライセイのデータを見つめる。
兄弟でここまで戦い方が違うのかと思わされるデータに、ゲイルは苦笑する。
「よし。なら、ライセイになったつもりでやってみるか」
「素直じゃない? 急にアドバイスを聞いてきたりして」
「強くなりたい。それだけだ」
「ふーん、まあいいけど。じゃあ、相手してあげるから、始めましょ」
アオイは上機嫌でシミュレーターの準備を始めた。何かあったのだろうか。
問いかけようとした言葉は緊急警報によって遮られた。
「総員第一種戦闘配置。繰り返す、総員第一種戦闘配置。MS隊は出撃準備をせよ」
通信士の声が艦内に響き渡る。
「アオイ、続きはまた今度だ。出撃する」
「残念。気をつけてね」
「ああ」
ゲイルはパイロットスーツに着替えるためロッカーに向かった。