機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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弟の背中

 カタパルトより射出されたガンダムMk-Ⅲは、モニターをズームにして接近中の艦影を捉えた。

 ネオジオンのものか判別できないが、こちらに向かって直進してくるのだ。敵の可能性が高いであろう。

 次にアヴァロンを飛び立ったのは、リュートの乗るネモⅢだ。ガンダムMk-Ⅲに並ぶとゲイルは通信をする。

 

「リュート、まだ敵とは決まっていないが、注意しろ。艦砲射撃されるかもしれん」

 

「了解」

 

 リュートの声からは緊張の類は感じない。さすがは幾度も戦場を乗り切っただけの事はある。

 ただ、2機では心許ない。ダンとシマンの合流を待とうかと後方を伺うが、まだアヴァロンから飛び立ってはいないようだ。

 その時、艦影に光が灯った。

 

「回避!」

 

 ゲイルが言った次の瞬間、複数のビームが飛来した。

 メガ粒子砲サイズのビームから敵戦艦からの攻撃と判断すると、アヴァロンに通信を行う。

 

「アヴァロン、敵艦より攻撃を受けた。応戦する」

 

 通信を入れてる最中、艦影より4つの光点が離れていくのが見えた。

 モニターを拡大させるとMSと思われる影が映る。やや大柄な形状からして、重MSの類のようだ。

 それ以外の影にも目を向けていると、リュートより通信が入る。

 

「ゲイル中尉、指示を」

 

「ああ。数では不利だ。ダンとシマンの合流を待つ。それまでは相手の足を抑えるんだ」

 

「了解」

 

 ネモⅢの左肩にあるビームキャノンが光を放った。同時にビームライフルを撃って相手を牽制し始める。

 言われた通りのことをしっかりとこなすリュートに負けじと、ゲイルも敵影に向けてビームを撃った。

 敵のMSはバラバラに分かれると、後方に位置する艦からメガ粒子砲が撃ち込まれる。

 

 これだけ距離が離れていれば早々当たるものでは無いが、やはりプレッシャーにはなる。

 ガンダムMk-ⅢとネモⅢは間断なく動き続けながら、敵にビームを発射した。

 敵のMSの識別コードがモニターに表示される。

 

 迫ってきていたのは、重MSのドライセンが1機とガザDが3機だ。

 動きからして、ドライセンが指揮官機のようだ。気を払っていると、そのドライセンが持つ自身の身長ほどはあるバズーカより、ロケット弾が放たれた。

 狙われたのはガンダムMk-Ⅲである、

 

 バズーカの射程距離としてはギリギリのところで避けるのは難しくないが、下手な避け方をすると残りのMSに狙われるのがオチだ。

 ゲイルは無理に避けようとせず、距離を測りながらバルカンをばら撒いた。

 バルカンに撃たれたロケット弾は爆発。生じた煙を突き抜けるようにMA形態のガザDが向かってきた。

 

 ゲイルは難しい判断を求められる。一直線に来ているのであれば、ビームで迎撃することもできるし、避けられたらMAの苦手な接近戦に持ち込めば良い。

 決断しようとしたゲイルの脳裏に、1つの言葉が蘇る。

 

 ライセイだったら、どう動くか。

 

 頭に浮かんだ言葉に突き動かされるように、スラスターを噴射して距離を取りつつビームライフルで応戦する。

 飛びくるビームをガザDは避けるが、そこに隙が生じた。ほんの僅かな隙だが、ゲイルは見逃さない。

 狙って撃つほどの余裕はない。感覚で銃口を向けてビームを放った。

 

 撃たれたビームはガザDの脚部を貫通する。爆煙を上げるガザDを一瞥し、次なる敵に目を向ける。

 接近してきたのは、ドライセンであった。バズーカの射程距離ど真ん中の位置まで来ていたドライセンを見て、ゲイルは少しだけ身震いする。

 もし、ガザDと無理にやり合っていたら、ドライセンの攻撃に対応出来なかったかもしれない。

 

 できたとしても、ギリギリだったであろう。

 ライセイの動きを意識した結果、余裕を持ってドライセンに対応することができた。

 ドライセンがバズーカを構えたと同時に、ガンダムMk-Ⅲの銃口も向く。

 

 同じタイミングで放たれたロケット弾とビームはぶつかり合うと爆発を起こした。

 更に接近するドライセンに、ゲイルは近距離戦を仕掛けようと踏み込んだ。

 その瞬間、また同じ言葉が蘇る。

 

 ライセイならば。

 

 ゲイルはビームライフルを撃ちながら、間合いを図る。

 ビームがドライセンの肩を掠めたが、その程度では怯まず、右手にある3連装ビームキャノンを撃ち始めた。

 激しく飛びくるビーム。これは下手に接近していたら、いくつか被弾していたかもしれない。

 

 だが、まだ距離があるため、3連装ビームキャノンの猛攻を凌ぐことができた。

 反撃のビームを発射すると、ドライセンはスラスターの噴射角を変えて回避する。

 咄嗟の判断のせいか、ドライセンは大きな回避行動を取ったため、攻撃の手が緩んだ。

 

 単調な避け方になってしまったドライセン目掛け、ガンダムMk-Ⅲのビームキャノンが火を噴いた。

 2筋のビームがドライセンの右肩を抉ると、大きな爆発が生じる。

 火花を散らすドライセンは後退し始めた。追撃のチャンス。しかし、ゲイルは行かなかった。

 

 目の前に集中しすぎている。

 周りをもっと見なければならない。2機をさばいたとはいえ、ネモⅢは残りの2機を相手にしているはずだ。

 すぐに救援に向かわねば。

 

 モニターでネモⅢを探すと、アヴァロンの方角から2本のビームが走る。

 そちらに目を向けると、シュツルムディアスがビームカノンを発射しながら迫ってきていた。

 

「すまん、遅くなった」

 

 増援に気づいたのか、残りのガザD2機は撤退を始めた。

 敵艦からの攻撃に注意を払いながら、ゲイルは通信する。

 

「リュート、よく堪えてくれた」

 

「いえ。ゲイル中尉に比べれば、大したことはしていません」

 

「俺だって、撃墜はしていない。なんとかやり過ごせたって感じだ」

 

 ゲイルの言葉に、ダンが反応する。

 

「おっ? ゲイル、珍しいな。1機も落とさないとは」

 

「まあ、そういう日もあるさ。無事に帰れてホッとしてるよ」

 

「ライみたいなこと言うんだな」

 

 ダンの言葉がゲイルに響く。ライセイだったら、どう動くかを考えた結果、こうして無傷で帰ることができた。

 危うい場面はあったが、それをいなす事ができたのはライセイの動きを意識した結果であろう。

 目の前の敵を確実に落とすのでは無く、一歩引いた戦い方でも十分に戦果をあげることができた。

 

 ゲイルにとって、実りある戦いになったと言える。

 艦影が遠ざかっていくのを確認したゲイルは、ヘルメットのバイザーを上げた。

 

「ライセイの戦い方……か」

 

 弟の背中が思ったよりも大きかった。ゲイルはそう思うと、機体を翻して帰途についた。

 

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