機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
サイド2の暗礁宙域での任務を終えてグラナダに帰ると、衝撃的なニュースが飛び込んできた。
地球連邦政府がネオジオンと和平交渉を行いサイド3を譲渡したというのだ。
ネオジオンが地球から兵を引いたことにより、地球連邦政府は危機的な状況を脱したことになるが、宇宙は混沌とした状況が続いている。
宇宙ではエゥーゴとネオジオンの戦いが激化してきていた。
戦いの中心となっているのは、アーガマに搭乗していた乗組員達である。
地球から宇宙に上がり、そこでエゥーゴの新造艦であるネェル・アーガマを受領し、正式にネオジオン討伐の命令を受けたのだ。
ネェル・アーガマに乗って戦うのは、あの少年少女達である。
まだ年端も行かぬ子供達に酷なことを指示したエゥーゴは徐々に戦力を取り戻しつつあるが、大きな戦力を投入するような作戦には出ていない。
アーガマ級巡洋艦であるアヴァロンもネオジオン討伐の任務には着いておらず、グラナダに寄港後は休暇が言い渡された。
子供達が命を懸けて戦っているのに休暇とはどうかとも思うが、命令には従わなければならない。
ただ、次に航海に出る時は、ネオジオンとの総力戦になるのかもしれないと思うと、この休暇は大事なものだとも思える。
それもあって、ライセイはグラナダの繁華街を歩いていた。
思い出すのは、あれの事だ。クラウスからは忘れろと言われたが
早々忘れられるものでは無い。
極秘事項を人に言うことはできないので、度々こうして悶々としている。
ショッピングモールのショーウィンドウに映る自分の顔を見れば、いかにも悩みを抱えている表情をしていた。
ゲイルやダン達から何かと心配されたのは、このせいか。嘘を隠すのが下手な人間だと再認識させられた。
元々、感情を隠すのは苦手だ。それなのに、あんなものを見せられれば表情に出て当然である。
もっと上手く切り替えられれば良いのだが。ないものねだりをするライセイは深いため息を吐いた。
「ライセイ、どうかしたの?」
「えっ?」
思わぬ問いかけに、ライセイは呆気に取られる。
声を掛けてきたのは目の前に立つ少女だ。グレーのミディアムヘアーの少女は愛くるしい笑みを浮かべている。
その顔を見てライセイは思い出した。
「ネージュ!?」
「久しぶり。元気にしてた?」
「うん。元気にしてるよ」
「ほんと? なんか顔色悪かったけど?」
ネージュは心配そうにライセイの顔を覗き込んだ。大きな瞳がライセイの目を引き付けて離さない。
しばし見つめ合うとネージュが笑みを見せる。同時にライセイは急に恥ずかしさが込み上げてきて、視線を外した。
「そ、そうだ。フォルスト艦長はネージュのお父さんなんだよね?」
「えっ? パパのこと知ってるの?」
「僕、お父さんの船に乗ってるんだ」
「そうだったんだ。偶然ってすごいね」
驚きの表情を見せるネージュにライセイは同調するように頷いた。
「ネージュとまた会えたのも、すごい偶然だよね」
「えっ? ライセイのことを感じたから会いに来たんだよ」
「えっ!? 感じたって?」
「前に会った時に覚えたんだぁ。私、知ってる人が近くにいると分かっちゃうの。すごいでしょ~」
自慢気な笑みを見せたネージュを見て、ライセイは1つの言葉が頭を過ぎった。
ニュータイプ。宇宙に進出した人類が他者と誤解なく分かり合う為に進化した存在。
ただの勘がいい人間とも言われることもあるが、勘では済まないほどに戦場で活躍したニュータイプを知っている。
アムロ・レイやカミーユ・ビダン。シャア・アズナブルこと、クワトロ・バジーナもだ。
普通の人では感じる事のできないものを感じ取っていたと聞いている。
ネージュも、もしかしたら。
考え込んだライセイにネージュが声を掛ける。
「どうかした?」
「いや。なんでもないよ。ネージュはお買い物?」
「うん。パパと一緒に来たの」
「フォルスト艦長と?」
辺りを見回すライセイ。ネージュがあっ、と声を上げた。
「またパパのこと置いてきちゃった」
「またって」
「大丈夫、すぐに分かるから。あ、ライセイもパパのところに一緒に行こうよ」
「えっと」
返す言葉に悩むライセイはショッピングモールを行き交う人々の多さに気づく。
ネージュは目を引く可愛さを持っているので、1人で行かせるのは危険かもしれない。前みたいに、タチの悪いやつに絡まれたら大変だ。
「分かった。一緒に行こう」
「よ~し、じゃあ、行こ。ちょっと待ってね。パパを探すから」
そう言うと、ネージュは目を閉じて集中を始める。
少し待つと目を開けて、悪びれた表情を見せた。
「ごめん、分かんなかった」
「そ、そっか。どうしよう?」
「じゃあ、デートしよっか?」
「デート!?」
明らかに狼狽えるライセイ。これほどストレートな誘いを受けたのは初めてで、どう返したら良いのか困惑する。
「え~っと。デートって言って良いのかな?」
「うん! パパが見つかるまでの間だけね」
「そういうことなら。じゃあ、行こうか」
ライセイはネージュと並んで歩き始める。その表情には1人で悩んでいた時の重苦しさは微塵もなかった。