機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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虎視眈々と

 エンドラ級巡洋艦ハイドラに接舷しているのは、パプワ級補給艦であった。

 多数の物資の補給がなされる中で、パプワに乗船しているローマンは積荷の1つをしげしげと見つめている。

 それはダークグレーで染められたMS。ザクⅢ改であった。

 

 ザクの正当な後継機として作られたザクⅢはネオジオンの最新鋭機の1つだ。複数の試作機が製造されたが、その中でもエースパイロット用にカスタムされたのがこのザクⅢ改である。

 通常型でもその推力はガザDの倍以上あるが、カスタマイズされたことにより更に推力が増強され、ネオジオンの戦力の中でもトップクラスの性能を誇っていた。

 ただ、その性能の高さが故に乗れるパイロットが厳選されてしまい、データ収集も兼ねた乗り手を求めて、ハマーン直轄の艦隊ではなくディクセル艦隊に回されたという不遇の機体である。

 

 しかし、そんなことはローマンにはどうでも良かった。高性能機が配備されれば、それだけ生存確率は上がるし、戦果も稼ぐことができる。

 それに、じゃじゃ馬の方が乗りこなせた時の気分の良さは格別だ。ガザDでは物足りなくなっていたローマンにとってはザクⅢ改の配備は、僥倖ともいえるものであった。

 ガザDの配備も進んだことで、ハイドラの戦力はザクⅢ改とガザDが5機という巡洋艦の保有する戦力としては上々のものとなっている。

 

 これなら、あの戦艦とでもやりあえるかもしれない。

 ローマンは先日入手した情報を思い出すと、僅かに口角を上げた。

 アーガマ級巡洋艦1隻にネオジオンの巡洋艦2隻で挑み返り討ちにあったというものだ。そのアーガマ級にはエゥーゴの最新鋭機が満載されているため、現在のエゥーゴではトップクラスの戦力である。

 

 戦力の中にはエゥーゴ離脱組であるデュークの情報にあったガンダムMk-Ⅲとプロトデルタが入っており、その性能の高さを存分に発揮しているようであった。

 それにリックディアスの改修型と思われるMSのビームライフルとは思えない火力も驚異的だった。

 有効射程外と思われる距離からでもムサイのエンジン部をえぐるパワーがあるのだ。MS単体の火力で行けば、この時代でもかなりの上位なはずだ。

 

 出会わないに越したことがない相手ではあるが、もし遭遇した場合は戦わざるを得ない。

 果たして勝てるのか。ハイドラMS隊の操縦技術はそれなりに高いが、突出したパイロットはローマンを置いて他にはいなかった。

 自分1人で戦うには荷が重い相手とは思うが、ザクⅢ改のスペックを見れば負ける気はしない。それほどまでの性能なのだ。

 

 ザクⅢ改をハイドラに移動させる準備が整ったようで、パイロットスーツを着た兵士がコクピットに近づく。それをローマンは制した。

 

「あとは俺がやるから大丈夫だよぉ。君は休んでてよ」

 

「えっ? しかし」

 

「良いから良いから」

 

 半ば強引にコクピットに着座したローマンは、コンソールや操縦桿を触って感触を確かめる。

 まだこの機体は飼いならされていない。自分好みの機体に仕上げてみようじゃないか。

 ザクⅢを固定していたワイヤーが外されると、ゆっくりとMSデッキから宇宙空間を目指す。

 

 パプワを離れるとスラスターを噴射した。

 その瞬間、機体が猛加速し、シートに体が押し付けられそうになる。強烈なGに襲われるローマンの表情に不敵な笑みが浮かぶ。

 

「これだよ、これ! こういうやつを待っていたのよ!」

 

 宇宙空間を縦横無尽に飛び回るザクⅢ改。加速に減速、旋回にとその全てに癖があり、思い通りになってくれない。

 抑え込もうとすればするほど反発するザクⅢ改を操縦するローマンは破顔した。

 こいつを乗りこなせば、ガンダムにだって負けはしない。戦場の悪魔として名高いガンダムを狩ることができれば、大きな戦果となる。

 

 もし、そうなれば今の地位よりも高いところに行くことだって夢ではない。仲間にもっといい暮らしをさせてやることができる力を、このザクⅢ改は秘めている。

 何としても使いこなさねば。ローマンは持てる技術の全てをぶつけるように操縦をする。

 暴れ馬から振り落とされないように必死に乗り続けるカウボーイの気持ちが少し分かった。こいつは面白い。もっとだ。もっと暴れて見せろ。

 

 ローマンの強い願いは通信によって阻害された。

 

「何やってんだ、お前は!」

 

 怒鳴ったのはヘックスであった。

 

「積み荷の確認に行った奴が、仕事を放り出してMSに乗ってるとはどういう話だ!?」

 

「ごめんよ、ヘックス。ほら、新しい子に少しでも慣れたくてさ」

 

「訓練なら後でできるだろう!」

 

「でも、もしかしたらエゥーゴに襲われるかもよ? 今のうちにやっておいて損はないよ」

 

 屁理屈をこねるローマンに、ヘックスが更に怒りをぶつける。

 

「だったら、先に補給を終わらせろ! 乗りたきゃ、そのあとに乗れ!」

 

「は~い、分かりましたよっと」

 

 姿勢制御をすると、パプワへと向かった。と見せかけて、急旋回しハイドラのメインデッキの前に躍り出た。

 艦長席で硬直しているヘックスに手を振るザクⅢ改。顔を赤くしていくのがモニター越しにでも分かる。

 怒鳴られる前に通信をオフにすると、改めてパプワのMSデッキに向かった。

 

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