機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
夜中に突然の召集命令によって目を覚ましたライセイ。伝えに来た者に聞けば、アヴァロンの乗組員は集合するようにとのことだった。
またフォルストの新手の訓練か。ライセイは寝ぼけ眼を擦りながら服を着替える。
外に出たところで鉢合わせたのはクラウスとリュートであった。
「ライセイ少尉、急ぐぞ。遅れたら何を言われるか分からないからな」
クラウスは言うと停めてあるエレカに乗り込んだ。その後を追ってリュートとライセイも乗った。
車が発進すると、運転をしているクラウスに問いかける。
「また訓練ですよね? 何も夜中にしなくても」
「敵はこっちの都合は聞いてくれないからな。こういう訓練も大事なんだ」
「確かにそうですね」
ライセイは納得すると、姿勢を正して座っているリュートを見る。
ゲイル達と離れた今、MS隊で一緒に戦ったことがあるのはクラウスとリュートだけになってしまった。
寡黙なリュートとは普段、あまり会話をしていないことを思い出したライセイ声を掛ける。
「さすがに寝起きの訓練は辛いよね。リュート少尉は?」
「いえ、自分は特に」
「そうなんだ。タフなんだね」
「そんなことはないです」
短い会話しか続かなかったことに、ライセイは肩を落とした。
人と仲良くなるのは得意な方だと思ってはいたが、なかなかリュートとの距離感を掴めないでいる。
他の皆はあまり積極的に接さないが、もっと仲良くなった方が良いとライセイは意気込み再び声を掛ける。
「確か、歳は近かったよね? リュートって呼んでも良いかな?」
「構いません」
「えっと、もうちょっと砕けてくれるかな?」
「砕けるとは?」
「ん~……。まあ、いいか」
とりあえずは一歩前進したと思うことにしたライセイは車窓から街並みを眺める。
まだ夜中であるため、普段よりネオンの光は少なめだ。多くの人が眠りについているだろう。
ゲイルも訓練の気配で起きたとは思うが、今は寝ているかもしれない。
このまま静かな時間が続けばと思うが、そうも行かないだろう。
ネオジオンとエゥーゴは相容れない仲だ。全面戦争も時間の問題だろう。
そう思うと、全幅の信頼を置くことのできたゲイルとダンと離れたのは痛い。
アヴァロンMS隊の連携は他と比べて良いのは事実だが、ゲイルとダンと組んだ時の方が訓練成績は間違いなく良かった。
新しく配属される者達もいるとは聞いているが、その者達と今まで以上の連携ができるかは疑問だ。
戦力ダウンのアヴァロンを支えなければならないとの気概はあるつもりだが、不安感は拭えない。
車は夜の街を抜け、宇宙港へと入っていく。
アヴァロンの停泊しているエリアに行くと乗組員達が整列しており、ライセイ達も慌ててその後ろについた。
続々と集まる乗組員達。しばらくすると、フォルストとカイムが乗組員達の前に姿を見せた。
時計を見ていることから、訓練であったのは間違いなさそうだ。
何を言われるのか固唾を飲んでいると、フォルストがアヴァロンに目を向ける。
その姿を見ていると、カイムが声高らかに言った。
「これより出港準備に入る!」
まさか更に訓練が続くのか。乗組員達も気が重いのか、表情が暗い。
寝起きで実戦さながらの訓練をさせられれば、そうもなる。
それに航行中の艦ではなく、羽を伸ばせるグラナダにいるのだ。普段よりも余計に気が滅入るだろう。
アヴァロンに乗船をし、MSデッキに向かうライセイ達。
整備士達が忙しなく動く中、ライセイはプロトデルタのコクピットに乗り込んで起動準備に取り掛かる。
モニターに光が灯った時、艦内放送が響いた。
「アヴァロンはこれよりグラナダを出航する」
航行付きの訓練とは恐れ入った。これには乗組員達も苦笑していることだろう。
ライセイはMSデッキに立つジムⅢに目を向けた。
ジムⅢは地球連邦軍で正式に採用された量産型のMSで、その生産性の良さからエゥーゴでも量産化されている。
次期主力かと思われていたネモⅢについては、量産体制から外されたようだ。
ジムⅢに搭乗するパイロットについてはまだ紹介されていないが、コクピットに人影がある。
今日の訓練から参加だったら、初日からきつい洗礼を浴びたことになるので、少し可哀想に思えた。
エンジンが掛かったのか、重低音を響かせながらアヴァロンがゆっくりと進み始めた。
宇宙に出たら、今度はMS隊の訓練が始まるのだろう。
気を抜くと眠気が戻ってきそうなライセイには、この出航がエゥーゴでの最後の航海になるとは知る由もなかった。