機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

43 / 86
グリプスに眠る遺産

 出航から1時間が経過した。

 その間にクラウスのみがメインブリッジに招集されたが、まだ帰ってきていない。

 ライセイ達は待機のまま時間が過ぎるのを待っていた。

 

 フォルストのことだ。いきなり発進準備などという指示が飛んできてもおかしくない。

 心構えはできているし、今まで散々繰り返してきた訓練だ。それに新入りに格好の悪いところは見せられない。

 モニター越しにMSデッキ内を見回していると、通信が入った。

 

「MS隊各員、MSを降りてブリーフィングルームに集合だ」

 

 クラウスの声であった。

 訓練の反省会でもするのだろう。プロトデルタを降りたライセイはブリーフィングルームへと向かった。

 通路ですれ違う乗組員達の表情は、どこか緩んでいる。もう訓練も終盤だからだろうか。

 

 ブリーフィングルームに到着すると、中で待っていたのはクラウスだけであった。

 他の乗組員はおらず、モニターに宇宙地図が投影されている。

 困惑しつつ問いかけた。

 

「クラウス大尉。他の人達は?」

 

「いや、まずはMS隊の者達への説明をするようにと言われてな。ついでに新入りの自己紹介もしようと思っている」

 

 何の説明だ。と問いかけようとしたが、あとから入ってきたパイロットスーツの者達の敬礼を見て、言い出すタイミングを逸した。

 ライセイも敬礼を返すと、3人の新入りがヘルメットを取る。

 

 2人は男で1人は女性だ。

 全員若く、まだ大学生と言っても差支えがないあどけなさが残っている。

 最初に声を上げたのは、女性からであった。

 

「シンリー・ラウ曹長であります! アヴァロンのMS隊に配属できたこと、光栄に感じております!」

 

 シンリーは短めの髪に勝気な顔立ちと、快活な印象を受けた。

 その横にいる男が慌てて言う。

 

「あ、自分はウォレン・シュミット軍曹です。よろしくお願いします」

 

 髪をやや伸ばしているウォレンは、軽薄そうな雰囲気を受けた。どことなくシマンを彷彿とさせる。

 最後に名乗るのは、短髪で表情を微動だに変えない男だ。

 

「ロック・バロック、軍曹です。よろしくお願いします」

 

 緊張とは違った硬さを感じる声音だった。朴訥とした印象を受けるが、果たしてどうなのだろうか。

 個性的な面々にライセイも自己紹介をする。

 

「僕はライセイ・クガ。少尉だよ。皆、よろしくね。困ったことがあったら何でも聞いていいから」

 

「リュート・ラインリッヒ少尉だ」

 

 手短すぎる自己紹介をしたリュート。やっぱりよく分からない人だとライセイは思う。

 トリを務めるのはクラウスだった。

 

「俺はクラウス・リーバー大尉だ。アヴァロンMS隊の隊長を務めている。厳しく鍛えてやるから覚悟しておけ」

 

 初めから手厳しく言ったクラウスの言葉に、新入りの3人は踵を揃えて了承の声を上げた。

 これでとりあえずは自己紹介が済んだ。気になるのはもう1つの話の方で、訓練の反省会ではないように思われる。

 クラウスがモニターの前に立ち指示棒を手にすると、ある一点を指した。

 

「アヴァロンは極秘任務のため、現在、グリプスを目指している」

 

「グリプス?」

 

 疑問の声を上げたのはライセイであった。

 

「グリプスは無人だと聞いていますが?」

 

「ああ、そうだ。だが、そこにある物を回収しに行かなければならない」

 

「あの、そのある物とは?」

 

 ライセイの頭の中に浮かんだのはあれのことだ。

 同じようなものであれば、クラウスは答えてくれないだろう。だが、クラウスは頷くと話を続けた。

 

「ティターンズの試作MSがグリプス工廠の奥に残されているということが判明した。データから非常に危険な代物であることが分かり、ネオジオンの手に渡る前に回収をすることにしたのだ」

 

「試作MSで、そんなに危険なんですか?」

 

「ああ。完成していれば、エゥーゴにとって厄介な相手になっていただろう」

 

 クラウスの表情はいたって真面目なものである。ティターンズとの戦争を経験した者が言うのだ。それほどの危険なMSなのだろう。

 どのような代物かは分からないが、そのまま放置して敵の戦力にしたくない気持ちは理解できる。

 もしかしたら、あわよくばエゥーゴはその試作MSを自分達の戦力にしたいと考えているのかもしれない。

 

「では、今回の出航は訓練ではなく」

 

「ああ、本番だ。もしかしたら、戦闘になるかもしれない。各員、気を抜かないように」

 

 その言葉に表情が強張ったのはシンリーとウォレンだ。ロックの表情は変わることがなく、直立不動を崩していない。

 不安にさせたままなのも可哀想なので、ライセイは明るい声で言う。

 

「大丈夫。実戦になったら、僕達がフォローするから。それにこれから訓練漬けの日々になるから、嫌でも強くなれるよ。だから、気にしなくて大丈夫」

 

「ライセイ少尉の言う通りだ。今までの訓練がお遊戯会だったことを思い知らせてやるから、覚悟しておけ」

 

 それでは余計に緊張してしまうではないか。口から出したかったが、ぐっとこらえた。

 クラウスが解散というと、新入り3人は揃ってブリーフィングルームを後にしていく。残ったのはクラウスとライセイ、リュートの3人だ。

 

「クラウス大尉、戦闘になるんでしょうか?」

 

「ネオジオンがこの情報を掴んでいるかは分からないが、可能性はゼロとは言えないな」

 

「じゃあ、MS隊の編成はどうしましょうか?」

 

「俺がウォレン軍曹とロック軍曹を率いる。ライセイ少尉はリュート少尉と共にシンリー曹長をサポートしてやってくれ」

 

「了解しました。リュート、頑張ろうね?」

 

 ライセイが言うと、リュートはこくりと頷いた。

 本当に大丈夫なのだろうか。言葉には出さないが、不安に思う。

 クラウスが手をパンッと叩いた。

 

「ここにいる3人で頑張るしかない。今まで以上の活躍を期待しているぞ」

 

 3人。そうだ。もうゲイルもダンも、アオイもシマンもいないのだ。

 自分が頑張らなければ、新入り達が危険にさらされるかもしれない。仲間を守るために戦うと決めたではないか。

 身の引き締まる思いのライセイは、姿勢を正して敬礼をする。

 

「はい! 絶対に味方を死なせるようなことはしません!」

 

 ゲイルの元を離れたライセイは、甘えでできていた己の殻を破ろうとしていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。