機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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三度目の出会い

 アヴァロンが月を離れ、漆黒の宇宙を航行し始めてから数時間が経過した。

 その間にライセイはMS隊の面々とミーティングを行い、互いの位置取りや連携を確認し、MSシミュレーターを使って訓練をしていた。

 新入り3人の操縦技術を一通り確認して思ったことは、まだまだ訓練が足りないというものだ。

 

 パイロットになるための訓練時間はこなしたから配属されたのだろうが、それで戦えるほど戦場は甘くはない。

 自分も学徒動員でMSに乗って戦場で戦ったが、逃げ回ることしかできなかった。それで生き残れたのだから、自分は運がいいとライセイは思う。

 逃げようとしても、逃げれないことは多々あるのだ。逃げるにしても技量が要求されるため、自分の身を守るためには訓練をする以外他にない。

 

 今後のことを考えると不安はあるが、フォルストとクラウスに鍛え上げられるのは想像に難しくないので、ある程度のMS技術は習得するだろう。

 そこからはセンスがものを言う。自分にセンスがあるのかは分からないが、腕前は上がってきている実感はあった。

 勘がさえてきたといえば良いのだろうか。直感的に相手の動きが読めたりする時がある。

 

 訓練と実戦を繰り返してきたから、その積み重ねによって予測ができるようになり、偶々当たるようになってきた。そういう感じだろう。

 MSシミュレーターの横にある大型のモニターに映った各人のスコアを見て、クラウスが感想を述べている。

 この反省会が終わると、アオイに色々とアドバイスをもらっていたが、もうその本人はこの艦に乗っていない。

 

 頼れる人がいなくなったことを、もう実感してしまった。この先、何度この気持ちを抱くことになるのだろうか。

 ライセイは少しだけ気を重くした。

 

「ライセイ少尉、どうかしたか?」

 

 クラウスの不意な呼びかけに、ライセイの肩が跳ねる。

 

「なんでもありません」

 

「そうか? 何か言いたそうだったが?」

 

「えっと……。いやぁ、お腹が減ったなぁと思いまして」

 

 乾いた笑い声をあげたライセイに、クラウスは厳しい言葉を投げることはなかった。

 

「そうか。もう飯の時間になるな。ライセイ少尉。シンリー曹長とウォレン軍曹を食堂まで連れて行ってやれ」

 

「あ、はい。了解です。じゃあ、2人とも行こうか」

 

 適当に口にした言葉が通るとは思っていなかったライセイは、一瞬反応に困るがすぐに2人を連れて食堂へと向かった。

 シンリーとウォレンは対照的な存在に見える。真面目で優等生なタイプがシンリーなら、ウォレンは不真面目とまでは言わないが熱意は低いタイプだ。

 その熱意の低さは、悪いことばかりではない。やる気がありすぎて、から回ってしまうこともあるのだ。ほどほどにこなせるタイプが理想ではあった。

 

 2人が合わさると丁度いい具合になるかもしれない。そんなことを考えながら、他愛もない話をしていると、食堂へと着いた。

 すでに多くの乗組員が列を作っており、ライセイはプレートを取って最後尾に並んだ。

 どのような食事だろうか。列の隙間から見える料理に目を向けたとき、聞き覚えのある声がした。

 

「皆さん、お疲れ様! しっかり食べていってね」

 

 ライセイは背伸びをして視線を高くすると、列の先頭に料理を配っている人物を見た。そこにはアヴァロンにいるとは思えない、ネージュの姿があった。

 驚きのあまり声を失ったライセイは、列が進む間中ずっとネージュがここにいることを考える。

 先日までは乗っていなかった。ということは新たに配属された人なのかもしれないが、ネージュが戦艦に乗るような子には思えない。

 

 それをフォルストが許すだろうか。娘を心配していた父親が、戦艦に娘を置くようなことはしないはずだ。

 分からないことだらけのライセイは、遂に列の先頭になった。

 

「あ、ライセイ。お疲れ様。いっぱい食べてね」

 

「えっと、ありがとう。ねぇ、なんでここにネージュがいるの?」

 

「あ、それについては後で話すよ。今はお料理を配らなきゃいけないから」

 

「そ、そうだね」

 

 料理を受け取ったライセイは食堂の一角に座ると、食事を始めた。

 口の中に料理を運ぶと思わず、声を上げる。

 

「うまっ!」

 

 なんだ、この料理は。先日まで食べていた料理と全然違う。

 戦艦の料理人は厳選された者達で構成されていると聞いたことがあるが、今回の人選は素晴らしすぎる。

 厨房の方に目を向けると、前に配属されていたコック達が総入れ替えされたのか、見慣れない人達で構成させていた。

 

 前にいた人がいなくなったのは寂しいが、料理が美味しくなったのは歓迎すべきものである。

 舌鼓を打つライセイ。シンリーやウォレンも味を楽しんでいる様子だ。

 

 食事を終えて人心地ついていると、コーヒーを4つプレートに乗せたネージュが、ライセイ達の傍に立った。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 コーヒーを配り終えたネージュが、ライセイの隣の席に座る。

 言葉を発したのはライセイからであった。

 

「ねぇ、ネージュがどうしてアヴァロンに乗っているの?」

 

「あ、私、エゥーゴに入ったの。そしたら、この艦の配属になったんだぁ」

 

「なんで、わざわざエゥーゴに? 危険だよ?」

 

「危険だよね。でも、私にもできることがあるから」

 

 そういうと、ネージュはコーヒーを口に含んだ。

 ライセイ達も習って、コーヒーを飲み始める。口に広がるさわやかな苦みが広がると、ライセイはふぅっと息を吐いた。

 

「美味しい」

 

「良かった。そのコーヒーはコック長が淹れてくれたの」

 

「コック長?」

 

 ネージュは頷くと厨房を指さす。そこにはただならぬ雰囲気を醸し出す、いぶし銀な男がいた。

 あれはただ者ではない。ライセイの直感が、そう伝える。思わず、ごくりと唾を飲んだ。

 そんなライセイを見て、ネージュがくすりと笑う。

 

「怖そうに見えるけど、すごく優しい人だよ。料理のことも色々と教えてくれたし」

 

「そうなの? 今日の料理さ、すごく美味しかったよ」

 

「えへへ。ありがとう。私も頑張ってお手伝いしたんだ」

 

 照れくさそうに笑うネージュは時計を見て、あっと声を上げた。

 

「もう次の班の人達が来ちゃう。じゃあ、ライセイ、またね」

 

 言うとコーヒーを一息に飲んで、素早く席を立って厨房の方に向かった。

 回答らしい回答をもらっていないライセイだが、厨房で働くネージュを見て思わず目じりが下がる。

 父親のことを少しでも助けたいと思ったのかもしれない。その思いに根負けして、フォルストは乗船を許可したのだろう。

 

 両親を失っているライセイにとって、親子の愛情はとても新鮮に感じられた。

 

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