機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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遠吠え

 バウ・エーデルのスラスターが一際輝く。

 強烈な加速でリックディアスⅡへと迫るが、その動きを制するようにネモⅢがビームキャノンを発射した。

 回避せざるを得ない状況にギルロードは舌打ちをする。

 

 ネモⅢの牽制が厄介であった。出鼻をくじくような、いやらしいタイミングを狙ってくる。

 落としたくなるが、無理をすればあの極大なビームに襲われる可能性が高い。

 リックディアスⅡの2連装メガビームガンは脅威だが、取り回しが悪いのは見て取れた。

 

 距離を詰めて戦えば、あのビームを活かすことができなくなる。

 分かってはいるが、リックディアスⅡとネモⅢの連携によって近づけない。

 苛立ちが募るギルロードの表情が険しくなった。

 

「邪魔だ!」

 

 堪えきれずネモⅢに向けビームを放ったギルロード。それを待っていたかのように、リックディアスⅡの2連装メガビームガンが火を噴いた。

 

「ちっ!」

 

 宇宙を切り裂くような2筋のビームが、バウ・エーデルの左手をかすった。

 だが、圧倒的な熱量によって、かすり傷に留まることなく左手の半分が溶解する。

 バウ・エーデルの手にしたビームサーベルが誘爆し、左手から大きな火花が飛び散った。

 

 コクピットのモニターに警告の表示がいくつも浮かぶ。

 押されるギルロードに余裕は残されていなかった。リックディアスⅡのパイロットの技量の高さもあるが、あのネモⅢも侮れない。

 単体であれば、負ける相手ではない。ギルロードがギリッと歯を食いしばる。

 

 武器は右手に持つビームライフルしか残っていなかった。

 接近戦を仕掛けるならば、ビームライフルを手放さなければならない。

 だが、それは自殺行為だ。射撃武器を捨てて戦えるほど、甘い相手ではあるまい。

 

 ジリジリと袋小路に追いやられる感覚を覚えたギルロードに通信が入る。

 

「ギル! 下がってください!」

 

「姉さんか!?」

 

 バウ・エーデルの後方より飛来するのは、MA形態のガ・ゾウムとガザD2機だ。

 リックディアスⅡとネモⅢにビームを放ちながら、接近する3機に援護されたバウ・エーデルはスラスターを噴射し、リックディアスⅡに肉薄する。

 

 3機の援護を回避しながら応戦することはクラウスにはできなかった。

 猛進するバウ・エーデルに2連装メガビームガンを向けている暇はない。

 クラウスはビームサーベルを選択し、接近戦に備える。

 

 バウ・エーデルも接近戦を仕掛けるのか。ギリギリまで見定めたクラウスは、バウ・エーデルの特攻をいなし、背後から撃つことを選択した。

 リックディアスⅡの脇を抜けていくバウ・エーデルは、ビームライフルの銃口を直線上に向ける。

 ギルロードの口元に愉悦の笑みが浮かぶ。

 

 銃口の先にはリックディアスⅡの影にいたネモⅢ。

 ネモⅢの視線からではリックディアスⅡとバウ・エーデルが重なってしまい、突進に対応するのが遅れていたのだ。

 バウ・エーデルのビームライフルから放たれたビームがネモⅢのコクピットを貫いた。

 

 パイロットであるリュートは一瞬で蒸発し、ネモⅢは爆散。宙に浮かぶ残骸と化す。

 

「リュート!」

 

 クラウスが叫んだ。自分の判断ミスだ。敵の動きを注視しすぎて、後方のことが見えていなかった。

 後悔の念がクラウスの判断を鈍らせていく。怒りに突き動かされるように駆け抜けていったバウ・エーデルに向け、2連装メガビームガンを発射した。

 だが、加速がついたバウ・エーデルを捉えることはできず、逆に背中をガ・ゾウムとガザDに晒してしまう。

 

 ガザDの1機がMS形態に変形し、ビームサーベルを抜き放つ。

 絶体絶命のクラウスは目を見開き、息を飲んだ。

 

「クラウス大尉!」

 

 リックディアスⅡに切りかかる、ガザDの横っ腹にビームが突き刺さった。

 ビームを放ったのは片腕のプロトデルタだ。

 後方に控えているジムⅢ3機も、残るガ・ゾウムとガザDにビームを撃った。

 

 倍の数の相手からの射撃に、たまらず後方に下がったガ・ゾウムのセティはギルロードに通信を入れる。

 

「ギル、引きましょう。こっちが不利です」

 

「くっ! 仕方がないか……」

 

 ガ・ゾウムとガザDは大きく旋回してライセイ達の射撃を躱すと、そのまま母艦のクレイトスへと向かった。

 すでにバウ・エーデルも戦場から離れており、残されたアヴァロンMS隊はその後ろ姿を見ることしかできない。

 クレイトスの砲撃を避けるため、ライセイは後退の提案をクラウスにしようとした瞬間、リックディアスⅡがクレイトスに向け、2連装メガビームガンを撃った。

 

 だが、それは負け犬の遠吠えのように、虚しく宙に消えていく。

 

「帰投する」

 

 普段と変わらない冷静な声音をしているが、それがライセイにとっては逆に不安であった。

 帰らぬ人となったリュート。まだ現実味がない。アヴァロンに戻れば、また会えるのではないかとライセイは思ってしまう。

 失ったものの重さを知るのは、まだ先であった。

 

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