機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
廃棄されたコロニーであるグリプスに到着したアヴァロンからMS隊が発進する。
修理の終わったプロトデルタでの出撃となったライセイは、ジムⅢのシンリーを連れてグリプス周辺の偵察の任務を行っていた。
戦争の名残であるMSや戦艦の残骸が宙を漂っており、ミノフスキー粒子の濃度も高くアヴァロンとの通信はすでにできなくなっている。
シンリーのジムⅢの肩にプロトデルタが手を乗せた。
「シンリー、僕から離れないようにね。何か見えたら、すぐに教えて」
「はい! 了解です!」
まだ緊張をしているのか、声に力が入っている。
偵察任務とはいえ、何があるか分からないので緊張するのは仕方がない。少しでも緊張を緩めるためにライセイは言う。
「もし敵が」
「敵っ!?」
慌てて周囲を警戒し始めたシンリー。ライセイは急いで否定をする。
「違う違う。もし敵が来たらの話」
「す、すみません。私、まだ緊張してまして」
「して当然だよ。僕だって、最初の頃は酷かったんだから」
ライセイが軽く笑うと、シンリーが不思議そうに問いかけた。
「ライセイ少尉が、ですか?」
「そうだよ。僕の初陣なんて逃げることしかできなかったんだから。でも、シンリーはちゃんと戦えてたじゃない。だから、僕より優秀だよ」
「私は……。優秀なんかではありません」
声のトーンが低くなった。気落ちしたようにシンリーが言う。
「訓練や練習では上手くできるんです。でも、本番に弱くて……」
「そっか。本番は緊張するから、思う様に力が出せないことってあるもんね。そうだ、シンリー良いこと教えるよ」
「良いこと、ですか?」
「そう、戦いで緊張しないコツ」
ライセイは少しもったいぶると、声を渋いものに変えて言う。
「敵を嫌いな上官と思え。ってね」
「上官ですか?」
「そう。昔、一緒に訓練していた人から教えてもらったんだ。嫌いな上官っているでしょ? 敵をその人だと思って撃つんだよ」
「ライセイ少尉にも嫌いな上官がいたんですか?」
「いたよ。すごい怖くて、厳しくて、うるさかった。あんなに嫌いな人、早々いないよ」
笑って言うと、シンリーも少し笑った。
「意外です。ライセイ少尉は優しそうだから、人を嫌わないと思っていました」
「そんなことないって。そこまでお人好しじゃないよ」
「そうなんですか? 結構、人からからかわれたりとかしませんか?」
「うっ!?」
痛いところを突かれたライセイは、返事に詰まった。
普段はダンからからかわれているし、アオイからも時々ある。最近はネージュからも受けたので、いじられやすい性格をしているのは間違いない。
「そ、そんなことないんじゃないかなぁ」
「そうでしょうか? 図星なんじゃないんですか?」
ぎくりとしたライセイは、また返事に窮してしまう。
返す言葉を模索していると、シンリーの笑い声が聞こえた。
「分かりやすい方なんですね、ライセイ少尉は」
「やめてよね、からかうの」
「分かっていますよ。でも、しない保証はないですね」
楽しそうに言ったシンリーに対し、不満そうにライセイは言う。
「一応、先輩だからね?」
「はい。心得ております」
「まったくもう」
そういうと、どちらともなく笑い声を上げた。
任務中であることを忘れているような会話をした2人は、グリプスの外周を一回りする。
シンリーのジムⅢの動きから固さが抜けたような気がした。
ライセイとの会話で余計な力が抜けたのだろう。
シンリーの訓練成績は上々のものなので、力を発揮できれば味方として心強い。
こうやって人のメンタルをケアするのは初めてであった。普段はゲイルやダンが気にかけてくれていたことを思い出す。
周りから助けられて生き抜いてこれたのだと、妙に感慨深く思うライセイはふと視線をグリプス内に向けた。
一瞬だけ、何かが光る。太陽の光が反射したのか。浮かんだ疑念を晴らすために、ライセイはシンリーに言う。
「シンリー、何かが見えた気がする。ちょっとコロニーの中に入ろう」
「了解!」
スラスターの角度を変えてコロニー内に入ったプロトデルタとジムⅢ。
回転の止まったコロニー内は無重力状態である。眼下には街並みや工場がいくつも並んでおり、人の営みの形跡があった。
2機はそのまま飛翔して行くと、いくつもビルが並び立つ区画に入った。
先ほどの光はこの辺りであった気が。ライセイの視線は1つのビルとビルの間に向いた。
そこから、にゅっと伸び出た何か。それが何かを考える前に、ライセイは声を上げると共にプロトデルタを上昇させた。
「シンリー、避けろ!」
ビルの間から伸び出た何かから、吐き出されたのは銃弾であった。
ガトリングガンが唸りを上げながら、プロトデルタ目掛けて銃弾を大量に放つ。
高度を上げたライセイが見たのは、ビルの陰に隠れていたMSであった。
「バーザム?」
そこにはティターンズ製のMSバーザムが、長銃身のガトリングガンを腰だめに構えている姿があった。