機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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かつての栄光

 アヴァロンがグリプス宙域に到着した同時刻、人気のないグリプス工廠にある研究所で濃紺の宇宙服を着用した者達が室内のものをあさっていた。

 彼らはデスクやロッカー、棚などあらゆるものを物色し、値打ちがないと判断したものは放り捨てている。

 めぼしいものがないと分かると別の部屋に行き、同じように室内を荒らしまわった。

 

「ちっ。研究所なんかに金目のものはないか」

 

 1人の男が言うと、鍵の掛かった引き出しにバールを突っ込んでこじ開ける男が同調した。

 

「まったくだな。あっても事務用品かよく分からん資料だけだからな。おい、バリー。なんかあったか?」

 

 バリーと呼ばれた男は、手際よく引き出しを開けながら言う。

 

「ないな。研究所が閉鎖されて長い。目ぼしいものは残っていないだろう」

 

「仕方ねぇ。あれが見つかっただけマシだと思うか。あ~あ、ティターンズに入ったら人生バラ色かと思っていたのによぉ。今じゃ、火事場泥棒かよ」

 

「ジェイムス、それぐらいにしろ。過去のことを言っても仕方がない。俺達は生き残るんだ。あれを持っていけば、まとまった金になる。そうしたら、身分を偽って人生がやり直せるんだ」

 

 目を向けることなく言ったバリーの言葉に、ジェイムスは肩をすくめる。

 ティターンズは地球連邦軍の中でもエリートのみが入れる部隊だった。それも地球生まれの者達だけで構成された特権階級者の集まりでもある。

 地球から追い出されたスペースノイドとは違うのだという価値観を植え付けられたティターンズの者達は、エゥーゴによって壊滅させられた。

 

 だが、生き残りも少ないながらいる。バリー達はグリプス戦役の生き残りであった。

 幸いグリプス戦役直後はエゥーゴが疲弊していたこともあり、ティターンズの残党は追撃を受けずに難を逃れたのだ。

 命からがら逃げ伸びた者達に待っていたのは、ティターンズ出身者への厳しい軍事裁判であった。

 

 ただ上の命令に従っただけの者達が次々と厳罰に処されていく様を伝え聞いたバリー達には投降するという選択肢はなかった。

 一部の者達はネオジオンに降ったという情報も聞いたが、スペースノイドを迫害した者が今更どの面下げてお願いするのだ。

 生き残りで話し合った結果が、ティターンズに残されている金目の物を奪おうというものだった。

 

 その案を提示した者はティターンズの技術部門に所属しており、グリプス戦役末期にグリプス工廠で密かに製造されていた試作MSを見たと言ったのだ。

 試作MSであれば、いい値がつくのではないか。それを売った金で別の人生を送るため、危険を冒してグリプスまで来たのだった。

 

「しかし、まさか2機もあるとはなぁ」

 

 ジェイムスがロッカーをこじ開けながら言う。

 

「どっちもほぼ完成状態とか、俺達ってツイてるな?」

 

「ああ。あとは起動して持ち去るだけだ。予定通りなら、今日中には動かせると聞いたが」

 

「らしいな。1機は俺が乗ることで決まりだな」

 

 自分を指さしたジェイムスが得意げな顔を見せると、バリーは呆れるように言う。

 

「聞いていないのか? あれにはサイコマシーン用のシステムが組み込まれていると」

 

「サイコマシーン? なんだそれ?」

 

「ニュータイプ用。いや、強化人間用と言ってもいい。ただの人間には手に負えない代物だとさ」

 

「げぇ~。じゃあ、あいつを乗せるのか?」

 

 露骨に嫌がるジェイムスは続ける。

 

「てか、あいつ使えんのか?」

 

「命令をすれば素直に従うからな。MSの操縦についても訓練済みらしい」

 

「ちっ。ニュータイプとか強化人間とかやべぇ奴しか乗れねぇMSには興味がないぜ」

 

「愚痴るな。それだけ希少価値のあるMSということだ。さて、ここは切り上げるとしよう」

 

 物色を終えた者達が部屋を出たとき、宇宙服の男が慌てた様子で近づいてくる。

 

「た、大変です! エゥーゴと思われる艦が、グリプスに近づいてきていると」

 

 男の言葉に反応したのはジェイムスだった。

 

「んだと!? なんでエゥーゴが!?」

 

「分かりません! 見張りの話では、アーガマ級だということでした」

 

「アーガマだと?」

 

 バリーの片方の眉がピクリと動いた。険しい表情で言う。

 

「ジェイムス、すぐにMSに乗るぞ」

 

「おい、エゥーゴとやり合うってのか? こっちは2機しかないんだぞ?」

 

「あれに奴を乗せればいい。そうしたら、やれないことはない。上手くやれば、アーガマを奪えるかもしれん」

 

「へへっ、なるほど。おい! 整備班に伝えとけ! すぐにあれを動かせってな」

 

 ジェイムスが大声で伝えると、男は敬礼をして去っていった。

 男が去っていった方向とは逆の方に、バリーとジェイムスは向かう。

 研究所を後にすると、2人は建物の陰に隠すように置いているマラサイとバーザムに乗り込んだ。

 

 バリーの乗機はマラサイで、ジェイムスはバーザムであった。

 マラサイは銃身の長いビームライフルであるフェダーインライフルを持っており、バーザムは大型のガトリングガンを手にしていた。

 2機は同時に飛びあがると、ビルの立ち並ぶ一角へと向かう。

 

「ジェイムス、あそこで待ち構えるぞ」

 

「OKだ。見てろよ、エゥーゴめ」

 

 ビルの陰に身をひそめる、マラサイとバーザム。その時、グリプスの外を飛ぶ光が2つ見えた。

 声を潜めたバリーが言う。

 

「2機だな。仕掛けるか?」

 

「いや、数が少なすぎる。まだやる時ではない」

 

「そんなこと言ってたら、囲まれるかも知れねぇだろ?」

 

 2人が会話をした直後、グリプス内に侵入するMSが2機。ライセイのプロトデルタと、シンリーのジムⅢだ。

 ジェイムスはバリーとの会話を切り上げ、ビルとビルの隙間から2機の動きに注目する。

 

「おい、ジェイムス」

 

 止めるバリー。迫るプロトデルタに狙いを定めたバリーは、バーザムのガトリングガンを掃射した。

 マズルフラッシュの輝きが、彼らの儚い栄光の光のように見えた。

 

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