機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
ガトリングガンから大量の銃弾がばら撒かれるが、ライセイの反応が一枚上手であった。プロトデルタは銃弾を避けて飛ぶ。
「くそったれ!」
毒づくジェイムスは、ビルの陰から姿を見せ、次はシンリーのジムⅢに目をつける。
「落ちろや!」
再び火を噴いたガトリングガン。銃弾を必死で避けるジムⅢだが、射線は確実に迫っていた。
そのとき、上空から一筋のビームが放たれ、銃弾を吐き出していたガトリングガンを貫いた。
爆発するガトリングガン。ビームを撃ったのは回避行動を取りながら感覚で銃口を向けたプロトデルタであった。
「シンリー、大丈夫!?」
ライセイは問いかけた。瞬間、ぞっとするものを感じ、思わずスラスターを噴射する。
その刹那、プロトデルタのすぐ横をビームが抜けていった。発射したのはマラサイのフェダーインライフルだ。
「外したか」
バリーは冷静だった。すぐさま、ビルの陰から飛び出して、別のビルの陰に身をひそめる。
同じようにビルの陰に隠れたバーザムに乗るジェイムスに言う。
「ジェイムス、無事か?」
「ああ。クソッタレめ。お気に入りをよくも壊しやがったな」
バーザムは腰に取り付けていたマシンガンを手にする。
火力はガトリングガンと比べて格段に落ちるが、ないよりはマシであった。
ジェイムスはビルの陰から上空を伺う。
上空ではライセイがビームの発射位置から、敵の潜んでいる場所を特定しつつあった。
離れてしまったシンリーの傍までプロトデルタを飛ばす。
ジムⅢの盾になるようにピタリとついたライセイは言う。
「敵は少なくとも2機。1機のガトリングガンは壊したけど、もう1機のビームが厄介そうだ」
「では、どうしますか?」
「僕が引きつけるよ。敵が動いたら撃って。大丈夫、シンリーならできるから」
「分かりました。お気をつけて」
ライセイはジムⅢから離れると、ビルの並ぶ一角にビームを発射した。
ビームに貫かれ、崩れ落ちるビルの陰から飛び出たのはバーザムだ。
マシンガンを構えると、プロトデルタ目掛けて撃つ。
敵の動きを予測していたライセイは、銃弾を回避しつつビームライフルを向ける。
単調な動きだ。そう思ったとき、ライセイの直感が警鐘を鳴らした。
慌ててスラスターを瞬かせると、プロトデルタがいた空間をビームが貫く。
射手はビルの陰に隠れたマラサイであった。回避したプロトデルタに向け、更にビームを撃つ。
バーニアを噴かして少ない動きで避けるプロトデルタ。
撃ったビームがかすりもしないことに、バリーは表情を渋くさせる。
プロトデルタの次の動きを予測しビームを再度発射するが、それをひらりと躱すだけでなく、ビームライフルで反撃をされた。
慌てて飛び退いたマラサイを、プロトデルタのビームが追う。
右足の傍をビームが掠めると、バリーに焦りが生じた。
ティターンズであったバリーとジェイムスは、パイロットとしてエリートである。
機体の性能差があったとしても早々引けは取らないはずだ。だが、ライセイの成長は著しいものであり、すでにエースパイロットとしての技量は有している。
じわりじわりと追い詰められたバリーがジェイムスに言う。
「ジェイムス! 援護を頼む!」
「任せろ!」
応じたジェイムスは、シンリーのジムⅢにマシンガンを発射する。
撃ちかけられた銃弾をジムⅢはシールドで防ぎながら距離を取ってビームライフルで反撃をした。
しかし、回避行動を取りながらの反撃ではまともに狙いが定まっていない。ジェイムスはビームに臆することなく、マシンガンを打ち続ける。
ジムⅢが防御のためにシールドで身を完全に隠したとき、ジェイムスはにやりと笑い、バーザムの腰にぶら下げていたハンドグレネードを投擲した。
ハンドグレネードは一直線に飛ぶと、ジムⅢの頭上で爆発する。
「きゃあっ!」
突然の爆発に悲鳴を上げるシンリー。機体に深い損傷は受けてはいないが、爆発の衝撃でカメラがダメージを負ったようで、モニターが一部ブラックアウトしてしまった。
亀のように防御に徹したジムⅢを捨て置いて、ジェイムスのバーザムはプロトデルタに向け飛翔する。
ビームサーベルを握ったバーザムは、プロトデルタの真後ろに位置しており、絶好のタイミングであった。
「もらったぁ!」
バーザムがビームサーベルが振り上げた瞬間、プロトデルタが振り返りざまビームライフルを向ける。
目を見開いたジェイムスの瞳に映ったのは眩いビーム光だった。
コクピットを射抜かれたバーザムは爆散する。
「ジェイムス!」
バリーの慟哭が響く。
バーザムを落としたライセイは続けてマラサイにビームを発射した。放たれたビームはマラサイの左肩をえぐると爆発を起こす。
左手を失ったマラサイは、片腕で照準の定まらないフェダーインライフルを構えて撃つ。
必死の一撃はプロトデルタを捉えることはできなかった。バリーとは逆に、しっかりと狙いを定めたライセイはビームライフルを発射する。
銃口から吐き出されたビームはマラサイの胸部を貫通した。爆炎を上げるマラサイは、その後四散した。
瞬く間に2機を撃墜したライセイは汗が噴き出るのを感じ、ヘルメットのバイザーを上げる。
危なかった。バーザムの気配を感じなければ、落とされていたのは自分だったかもしれない。
ライセイは研ぎ澄まされていく自分の感覚に、少しだけ違和感を覚えた。
どうして、敵の気配を捉えることができたのか。偶々そういうこともあるのかもしれないが、妙に生々しくハッキリとした気配だった。
自分の中の変化を感じ取っていると、シンリーから通信が入る。
「ライセイ少尉、ご無事ですか?」
「こっちは大丈夫。シンリーも無事?」
「はい、おかげさまで。さすがはライセイ少尉ですね。1人で2機をほぼ同時に」
「偶々だよ。他に敵がいるかもしれない。警戒しないと」
そう言った瞬間、ライセイは強烈なプレッシャーを肌で感じた。
何かが来る。凶暴な悪意を持った何かが迫ってきている。
ライセイが視線を向けた先には工場の建屋があったが、直後に地面から幾筋もの伸びる光によって蒸発した。
ビームの光だ。建屋の下から姿を見せたのは、濃紺色のMSであった。
だが、データベースで見たことのない姿をしている。ガンダムフェイスに近い顔立ちをしているがモノアイで、額の左右から獣の耳のように伸びるアンテナが特徴的であった。
次に目を引くものが大型のバックパックを背負っていることだ。MSの全長ほどはあるバックパックは2つに分かれると、肩の上で巨大な腕へと変化した。
異形な腕を生やしたMSのモノアイが怪しく光ると、巨大な手の指先にビームが収束される。
放たれるビームがグリプス内の建物を焼き払った。
獣の咆哮のようにビームを撃ち続けたMSのモノアイが、ライセイ達に向く。
MSの名はヴェアヴォルフ。人の形をした獰猛な獣が牙を剥き、ライセイ達に襲い掛かる。