機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
ヴェアヴォルフとの死闘を終えたライセイは一度アヴァロンに帰投していた。
ウィングバインダーを失った状態ではまともに戦えないからだ。
アヴァロン内でウィングバインダーの予備を装着していると、シンリーのジムⅢがMSデッキに戻ってきた。
シンリーのジムⅢも戦闘で消耗していたからだろう。一足先に帰っていたライセイが出迎える。
「シンリー、お疲れ様。何かあった?」
「はい。グリプス内を調査中に、1隻の輸送艦が封鎖されたドッグから飛び立っていきました」
「それって、あのMSに乗っていた人達の仲間かな?」
ライセイの質問にシンリーはこくりと頷いた。
「おそらくは。ですが、クラウス大尉の判断で追撃はしませんでした」
クラウスは恐らく、敵の罠があるかもしれないと踏んだのだろう。
無理に危険を犯す必要は無い。ライセイもクラウスの考えを支持した。
「それで良かったと思うよ。無駄な戦いは避けたいしね」
「そうですね。今、クラウス大尉達はグリプスを見張っていますので、準備が整ったら探索に向かいましょう」
「分かった。探し物が見つかると良いけど」
ライセイは先程戦ったヴェアヴォルフを思い出した。あれが戦争に投入されたら大きな損害が出たのは間違いない。
見たことがないMSだったことから試作MSの可能性が高いが、そうであれば目的の物を手にはできないことになる。
ネオジオンに渡さないことが目的でもあるので、それなりの結果ではあるが。
思案するライセイを乗せたアヴァロンは、グリプスのドッグに接舷した。
◇
グリプス内での戦闘から、数時間が経った。
今、ライセイ達の前には、先程戦ったヴェアヴォルフと同型機がMSハンガーに収まっている。
違うのは色だ。戦ったのは濃紺色だったが、この機体は白を基調としたものであった。
MSを見上げるライセイが言う。
「さっきのMSと同じだ。もう1機あったなんて」
ライセイの呟きに答えたのはクラウスだ。
「そのようだな。だが、ここを調べてみたが、あの巨大な腕の兵装は見つからなかった。あれはどうやら1機分だけだったようだな」
「では、目的は一応、達成でしょうか?」
「十分に達成だ。こっちに来てくれ」
そう言うと、クラウスはMSハンガーとは別のエリアに向かう。
後をついて行ったライセイは、そこでMSよりも大きな蜂の巣のようなものを見た。
蜂の巣に見えたのは、大小様々なコンテナを繋ぎ合わせたものである。
蜂の巣を想起させる物を見たライセイは率直な疑問を投げかける。
「なんですか、これ?」
「拠点防衛用兵装、ヘカトンケイル。そう呼ばれていたようだな」
手にした紙を見るクラウスは続ける。
「あの真ん中に空いたスペースにMSをドッキングさせて、巨大MAとして使うようだ」
「MAですか? じゃあ、これも目的の1つですか?」
「ああ。さっきのやつと同等の危険な代物だ。このままにはしておけない。我々で回収する」
「回収ですか?」
これだけ巨大な物を回収するのは、それなりの労力がいる。
いつネオジオンに襲われるか分からない状況で、悠長にやっていて良いのだろうか。
「クラウス大尉、こいつを破壊してはダメなんでしょうか?」
「任務の目的は回収だ。壊しては意味が無い」
「意味が無い?」
「そうだ。これは艦長命令だ。我々はそれに従う。いいな?」
反論の余地を持たせない物言いに、ライセイは黙って頷いた。
何故、そこまで回収に拘るのだろうか。疑問を持ちながらも、問うことはできなかった。
クラウスは艦長の意図を知っているのかもしれないし、知らないかもしれないからだ。
「ライセイ少尉。あのMSの起動チェックをしてほしい。動かせそうなら、先に回収する」
「分かりました」
そう言うと、ライセイは白いヴェアヴォルフのコクピットへと向かった。
コクピットに着座をし、コンソールを叩いて機動の準備をする。
モニター類に光が宿るのを見ていると、ライセイは違和感を覚える。
周りにいる人達の気配を感じるのだ。
モニターに映っている人だけでなく、MSの陰に回っている人達の気配も感じ取ることができた。
自分を取り囲む気配に少し気分を悪くしたライセイは、コクピットから外に出る。
すると、先程までの感覚は無くなった。
一体、なんなのだろうか。得体のしれぬ感覚にライセイは身震いした。
ティターンズのサイコミュ技術の粋を結集した兵器、ヴェアヴォルフ。
白き人狼の目覚めは、もうすぐであった。