機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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アヴァロンを追え

 アヴァロンが月を発ってから、2週間が経とうとしていた。

 

 月面都市グラナダ近郊でのMS隊の訓練を終えたゲイルは、MSハンガーで訓練の成績を眺めていた。

 自分の成績は過去最高のものを記録しており、着実に腕前が上昇していることが見て取れる。

 個人別の成績をランキング形式のものに変更した。エゥーゴのパイロットの名前がずらりと並ぶ。

 

 ネオジオンへの反攻作戦が本格的に始動しようとしていた。

 宇宙艦隊の再編もほぼ終わり、あとはMS隊の総仕上げといったところだ。

 ゲイルは宇宙艦隊の旗艦である、アイリッシュ級巡洋艦のMS隊の一員である。

 

 同じ艦にはダンとアオイ、シマンがおり、抜群の連携を見せていた。

 普段はいがみ合うダンとアオイだが、戦闘では背中を任せあっている節がある。

 不思議な信頼関係を持つダンとアオイも訓練を終え、ゲイルの傍に来ていた。

 

 モニターに表示されるランキングを見てダンが頭を抱える。

 

「くそっ! 負けてる!」

 

 忌々しい表情を浮かべるダンの横でアオイがすまし顔をみせる。

 

「ま、こんなもんかなぁ」

 

 アオイの発言で、ダンが顔を真っ赤にする。

 

「もう一度だ!」

 

「いやよ。私、疲れたし。今日は切り上げ」

 

「はあっ!? おいおい、敵さんはそんなこと言っても許してはくれないぜ?」

 

「あら? 負けた敵がすぐに再戦できるのかしら?」

 

 更にヒートアップするダンの肩にゲイルが手を置いた。

 

「今日はもう良いだろう。明日、頑張れば良い」

 

「ったく。仕方がねぇ。明日、白黒ハッキリつけてやるからな」

 

 ビシッとアオイに指をさしたダンだが、今日はハッキリ黒であるとはゲイルは言わなかった。

 反省会を続けていると、一足先に訓練を終えていたシマンが駆け寄ってきた。

 

「ゲイル中尉、ダン中尉、アオイ少尉!」

 

「どしたぁ、シマン? 俺はすこぶる機嫌が悪いぞ?」

 

「召集が掛かりました。全員、執務室に来るようにと」

 

 シマンの言葉で、空気が張り詰めた。

 ついにこの時が来たのだ。ネオジオンとの全面戦争。

 これから始まる戦いがゲイル達の表情を険しいものにした。

 

 執務室に向かう間も言葉少なめである。

 廊下を歩くゲイルは、アヴァロンに乗るライセイのことを思い浮かべた。

 話によれば、アヴァロンは極秘任務に当たっているとの事だ。

 

 おそらくはネオジオンに対してのものだと思われる。

 ライセイとは戦場で出会えるのであろうか。無事であれば良いのだが。

 ゲイルは不安を胸に抱きながら、執務室のドアをノックする。

 

 中から招く声が聞こえると、ゲイル達は中に入った。

 執務室には2人の男がいる。1人は執務用の机の奥におり、もう1人はその机の前に立っていた。

 2人の視線を受けたゲイル達は敬礼をし名乗ろうとしたが、それを椅子に座った男が遮る。

 

「余計な話は省こう。君達、4人には特別な任務についてもらうこととなった」

 

「特別な任務とは?」

 

 ゲイルの問い掛けに答えたのは、机の前に立った男だ。

 口周りに蓄えた髭が雄々しいが、人の好さが滲みだしているのか柔和な顔立ちをしており、好感の持てる人物であった。

 髭の男が言う。

 

「アヴァロンの追跡だ」

 

「追跡? アヴァロンに何があったのですか?」

 

「分からんから追跡なのだよ」

 

「極秘任務に当たっているという話を伺っていたのですが?」

 

 髭の男が椅子に座る男に目配せをする。椅子に座った男が軽く頷くと、髭の男が続ける。

 

「あれは嘘の情報だ。訓練の為の出港との話だったが、途中で連絡が取れなくなった」

 

「では、アヴァロンは?」

 

「何をしているのか掴めていない」

 

「そんな……」

 

 ゲイルは絶句した。アヴァロンに何かがあれば、ライセイの身に危険が迫るからだ。

 嫌な想像が頭を過る中、椅子に座る男が言葉を発する。

 

「我々が一番危惧しているのは、アヴァロンがネオジオンに寝返ることだ」

 

「そんなこと、あるわけが!」

 

 否定したゲイルを髭の男が制す。

 

「ゲイル中尉、やめないか。あくまでも最悪なパターンの話をしているだけだよ」

 

「しかし」

 

「アヴァロンの艦長のフォルスト中佐は元ジオン軍人だ。エゥーゴの中には、またデュークのような離反者が出てもおかしくはないと思っている者達がいるのだよ」

 

「上層部はまだジオン出身者を疑っているのですか?」

 

「残念ながらな」

 

 髭の男が嘆かわしいというように首を左右に振った。

 エゥーゴ内ではデューク達の事件がまだ尾を引いているということだ。

 そう考えると、アヴァロンの艦長がジオン出身者ということで、亡命を画策しているのではと考えるのも仕方がないことかもしれない。

 

 だが、ゲイルにはフォルストが寝返るような人物に思えなかった。

 何か理由があって、連絡ができなくなっているだけだ。もしかしたら、ネオジオンと遭遇して隠れているだけかもしれない。

 それならば、追跡は一刻も早くすべきだ。

 

「任務はアヴァロンの追跡だけなのですか?」

 

「うむ。それ以上については、現場判断に任せるそうだ。お陰で胃に穴が開きそうだよ」

 

 軽く笑う髭の男。ゲイルは髭の男に問いかける。

 

「あなたが現場の指揮を?」

 

「そうだ。私の名はドルフ・メーメル。サラミス級巡洋艦ウイントフックの艦長だよ」

 

「では、我々は?」

 

「私の艦に乗ってもらうことになった。強者揃いと聞いているから、心強いよ。ゲイル中尉、君にはウイントフックのMS隊隊長の務めてもらう。頼んだぞ」

 

「はっ! 了解いたしました!」

 

 ゲイルにならって、ダン達も敬礼をする。

 姿を消したアヴァロン。ライセイ達を乗せてどこに行ったというのだろうか。

 不安と心配を胸にいただいたまま、アヴァロンの追跡が始まろうとしていた。

 

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