機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
ザビ家。地球連邦政府に対し、スペースノイドの自治独立のために戦争を仕掛けた一族である。
ライセイはネージュの告白に困惑し、返す言葉が見つからなかった。
「驚くよね。だって、私も聞いたときは驚いたもん。あんな戦争を引き起こした人達と同じ血が流れているなんて」
一年戦争のことをネージュは言っていた。人類の半数を死に至らしめた戦争。その中で行われた非道な戦略であるコロニー落とし。
自分にザビ家の血が流れているとしたら、このことについてどのように思うだろうか。ライセイは慎重に言葉を選んだ。
「でも、ネージュはネージュだよ。ザビ家にだって、悪くない人はいると思うよ?」
「ありがとう、ライセイ。でも、そう思ってくれる人は少ないと思う。だって、戦争を引き起こしたのは間違いないから。それに……」
一度口を閉じたネージュは、ぼそりと言う。
「今も戦争をしているもの」
ネオジオンにいる、ミネバ・ラオ・ザビのことを言っているのだろう。
ザビ家の遺児として、旧ジオン軍残党をまとめ上げる象徴となっているミネバ。
本人の意思がどうかは分からないが、ザビ家が戦争に関わっているのは間違いない。
コロニー侵攻、地球侵略、コロニー落としと、数々の戦いを繰り広げたネオジオンは、サイド3を譲渡されることで兵を地球から引いた。
戦争の火は一時的に消えたかもしれないが、まだ依然として火種は残っている。
いつまた再燃するか分からない状況は戦争中といっても間違いではないだろう。
ライセイの頭の中に浮かぶ言葉はどれもチープな慰めしかなく、ネージュの心を打つようなものは見いだせなかった。
黙っているとネージュが微かに笑う。
「色々と考えてくれて、ありがとう。ごめんね。変な話をしちゃって。私も自分の血筋を聞いたのはちょっと前だったから。誰かに打ち明けたかったのかも」
「僕、誰にも言わないから。それは信じてほしい」
「そう言ってくれると思ってた。ねぇ、ライセイ。あなたは今でも私のことを仲間だと思ってくれる? 守ってくれる?」
ネージュのまっすぐな瞳が、ライセイの心を確かめようとしている。
返す言葉は最初から決まっていた。変わらぬ思いをライセイは伝える。
「守るよ、君のことを。絶対に」
嘘偽りのない思いを告げられたネージュの瞳にうっすらと涙がにじんだ。
見つめ合ったままの2人はゆっくりと引かれるように顔を近づけていく。
と、こつんとヘルメット同士がぶつかった。
「あっ、ヘルメット邪魔だったね」
照れ笑いを浮かべるネージュと同じく、ライセイも笑みを浮かべた。
ヘルメットを取った2人は、体を引き寄せてきゅっと抱きしめる。
「ネージュ、好きだよ」
「……私も好き。ライセイのこと、大好きだよ」
想いを伝えあった2人は顔を突き合わせ、ゆっくりと唇を重ねた。
甘い時間に酔いしれ、何度も口づけを交わす。
「離さないでね、ライセイ。信じてるから」
「うん、離さないよ」
ネージュの頬に涙が一筋流れた。ライセイはそれをそっと拭って言う。
「何かがあったら、僕を呼んで。絶対に助けに行くから」
更に涙を流すネージュは、笑みを浮かべ頷いた。
ネージュの血筋がなんであろうと関係ない。好きになった人を守り通すのだ。
ライセイの決意は固かった。だが、ザビ家の血筋の呪いは簡単に解けるものではないことを、後に知る。
宇宙世紀0088年12月。ネオジオン内でザビ家の血筋を巡る戦いが起こるのは、もう少し後であった。