機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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極秘任務

 人払いを済ませたエンドラ級巡洋艦ハイドラのメインデッキにはお馴染みの2人がいた。

 ローマンとヘックスの前のモニターには、ディクセルが映し出されている。

 珍しいこともあったもんだと、ヘックスは思った。

 

 何かしらの連絡事項がある場合は、基本ギルロードを通して行われてきたため、ディクセルとこうして通信をすることは滅多にない。

 ギルロードではなく、ディクセル本人でなければ言えない何かだとしたら、これは面倒な話になる。

 聞く前から気が滅入りそうなヘックスの横で、ローマンは暢気な笑みを浮かべていた。

 

「ディクセル様から通信するなんて久しぶりだねぇ。ギルちゃんは、どうかしたの?」

 

 上官に向かって馴れ馴れしい口の利き方をするな。と怒鳴りたくなるが、初めからこれなので今更修正しても仕方がないとヘックスは諦めている。

 それにこのディクセルのことは、どうも好きになれない。ザビ家親衛隊の隊長を務めていたとのことだが、親衛隊がらみの噂はろくなものがなかった。

 上の気分を害したからといって、鉄拳制裁は当たり前。ひどい話では、ミスをした隊員に対して同じ部隊の隊員達で袋叩きにさせるなんて胸糞悪いものもあった。

 

 幸い、ヘックスとローマンはそのような被害にはあってはいないため恨みを抱いてはいないが、ハイドラの中に被害者がいるかもしれない。

 もし、そうだとしたら、ディクセルの下で働くのは複雑な気分であろう。

 悪名高いザビ家親衛隊の隊長であった者が冷笑を浮かべた。

 

「相変わらずの口の利き方だな、ローマン?」

 

「生まれつきこんなんだからさぁ、許してよ?」

 

「まあ、良い。私はお前の腕を買っているのだから、多少の不敬には目をつぶろう」

 

「だってさ、ヘックス?」

 

 俺じゃないだろう、この野郎。とヘックスは怒鳴りたくなったが、そんなことをしても3文芝居を見せるだけなので、憮然とした表情を浮かべるに留まった。

 低く笑うローマンにディクセルが言う。

 

「前置きはこれぐらいにしておこう。お前達に極秘任務を与える」

 

 ピクリと眉を反応させたのは、ヘックスであった。

 極秘任務。その言葉を聞くだけで先が思いやられる。

 

「どんな極秘任務?」

 

 ヘックスとは違って、顔色の全く変わらないローマンが問う。

 

「エゥーゴのアーガマ級巡洋艦アヴァロンの確保だ」

 

「確保? 撃墜じゃなくて?」

 

「そうだ。心配するな。噛みつかれたりはしない」

 

 くつくつと笑うディクセルにヘックスは嫌悪感を抱いた。

 悪い笑みというのは気持ちがいいものではない。

 

「じゃあ、簡単な任務じゃん。ヘックスの心労が心配だったんだよねぇ」

 

「簡単とは言えない。何があるか分からんから、お前達を向かわせるのだ。いいな、なんとしてもアヴァロンを確保せよ」

 

「了解~。任せちゃってくださいよ」

 

 ローマンが言うと通信が打ち切られた。

 

「アヴァロンっていえば、あのガンダムが乗っていた艦だよな?」

 

「そうだねぇ。確保かぁ……。な~んか、胡散臭い話が出てきたね」

 

「デューク達のような裏切りかもしれん。注意だけはしないとな」

 

「だねぇ。あ~、残念だなぁ。ガンダムとやり合いたかったのに」

 

 おもちゃを取り上げられた子供のような顔をするローマンにヘックスが言う。

 

「バカなことを言うな。危険なことに自分から突っ込んでいくなんて、どうかしてるぞ?」

 

「どうかしちゃってるのが俺達じゃないかぁ。ま、どうなるか分からないけどね、実際のところは」

 

 薄く笑みを浮かべたローマンを見てヘックスが首を傾げたとき、秘匿回線で通信が入った。

 通信をオンにすると、初老の紳士がモニターに映し出される。

 

「あれ? 久しぶりじゃん、元気にしてた?」

 

 ローマンが人懐っこい声で言う。ヘックスも見知った顔を見て、軽く声を上げた。

 

「おお、あんたか。久しぶりだな」

 

「ローマンさん、ヘックスさん、お久しぶりです。お元気そうでなによりです」

 

「あんたが通信をしてきたってことは、何か仕事だろう? 悪いが俺達はネオジオンで働いているんだ。そっちの仕事はできないぞ?」

 

「存じております。知っていて、お願いしたいことがあるのです」

 

 微笑みを浮かべたまま言う初老の紳士にローマンが返す。

 

「良いよ。聞いてあげる」

 

「バカか、お前!?」

 

「だって、今までお世話になった間柄じゃん? そんな人が折り入って頼みたいことがあるって言うんだよ? 聞いてあげるのが筋って思うけどねぇ」

 

 ローマンの言うことは一理あったので、ヘックスは黙り込む。

 宇宙海賊時代に仕事を回してもらったことが何度かあった。報酬の払いも良かったし、こっちの都合も割と考えてくれた依頼主だったので悪い印象はない。

 だが、自分達がネオジオンにいることを知っての頼みということに危険を察知したのだ。

 

 何を考えているのか知る前に了承するのは危険すぎる。まずは話を、と切り出そうとしたヘックスをローマンが遮った。

 

「ヘックス、俺を信じてくれないかい?」

 

「ローマン……。勝手にしろ」

 

「ありがとね。じゃあ、話を聞こうじゃないか、スペクター」

 

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