機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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亡命のアヴァロン

 アヴァロンがグリプスを発ってから3日が経過した。

 グリプスで回収した拠点防衛用兵装ヘカトンケイルについては、MSデッキに入る代物ではないため艦底に係留されている。

 ヘカトンケイルのコンテナには、様々な兵器が満載されており、拠点防衛用の名にたがわぬ武装っぷりであった。

 

 コンテナの中にはミサイルやバズーカだけでなく、ランチの役目をこなせるコンテナまである。

 武装の多様さによって絶大なる火力を誇るが、乗るパイロットに対してかなりの負担を強いるものだった。

 操作系統が複雑すぎるのだ。まともに動かすにはかなりの訓練を要するのは間違いない。

 

 ライセイは心の中で愚痴りながら、ヘカトンケイルと連結したヴェアヴォルフのコクピット内で悪戦苦闘していた。

 これはクラウスからの指示であり、グラナダに持ち帰ったとき動かせるパイロットが欲しいというものだ。

 半ば強制的に乗ることになったライセイ。ただでさえ薄気味悪いヴェアヴォルフを動かすのでさえ、気乗りしないのに更にしんどいことを任されてしまった。

 

 この3日間は寝食を除けば、そのほとんどをヘカトンケイルの操作方法の習得に捧げている。

 命令だから仕方がないが、本音を言えばネージュと話がしたかった。あの日のことを思い出しては、時々赤面している。

 好きと伝えあったもの同士なので、恋人になったのは間違いない。ネージュの顔を思い浮かべるだけで幸せがこみあげてくる。

 

 同時に、会える時間が限られており寂しさも、その分募っていた。言葉を交わせるのが食堂で食事の受け渡しのときだけだというのが、また辛さを引き立たせる。

 今、ネージュは何をしているのだろうか。ぼーっと考えていたライセイに通信が入る。

 

「ライセイ少尉、聞こえるか?」

 

 クラウスの声であった。

 

「はい。どうかしましたか?」

 

「そろそろ飯の時間だ。切り上げていいぞ」

 

「分かりました。キリが良くなったら上がります」

 

 やっとコクピットから解放される。

 いや、嬉しいのは食堂でネージュと顔を合わせることができることだ。

 さっさと機体の電源を落として、アヴァロンに戻ろう。ライセイはコンソールを叩いて、ヴェアヴォルフを停止させた。

 

 アヴァロンに戻ったライセイは一目散に食堂へと向かう。

 唯一の楽しみと癒しを堪能しようとしたライセイの耳に、緊急警報が鳴り響いた。

 

「第一種戦闘配置、繰り返す、第一種戦闘配置」

 

 オペレーターの声が艦内に鳴り響く。

 ライセイは踵を返すと、MSデッキへと向かった。

 すると突然、警報が鳴りやむ。

 

「各員、その場で待機したまま聞いてもらいたい」

 

 フォルストの声である。先ほどの警報が誤りだったと伝えるのだろう。

 周りの乗組員の表情と同じようにライセイもほっと胸を撫でおろした。

 

「我々はこれより、ネオジオンと共に行動する」

 

 その言葉にライセイは呆気に取られた。ネオジオンと行動を共にするとは、どういうことなのだろうか。

 乗組員達の間でざわめきが広がる。

 

「下手な抵抗はしてはならない。アヴァロンはすでにネオジオンの艦の主砲で捉えられている。軽挙妄動は控え、各員はこのまま航行を維持するように。以上だ」

 

 艦内放送が打ち切られると、誰も唖然として言葉を失っていた。

 次第に声が上がると、艦内は混乱し始める。艦長の放送が本当なのか。ネオジオンの艦に狙われているのは本当なのか。

 答えを持たない乗組員達の元に姿を見せたのは、副艦長のカイムであった。

 その後ろに控えている兵士4人は自動小銃を手にしており、険しい視線を乗組員達に向ける。

 

「艦長の指示に従え。命令に従えば、無事に帰ることができる」

 

「ちょっと待ってください!」

 

 ライセイは声をあげると、一歩前に踏み出した。

 

「ネオジオンと行動を共にするって、どういうことですか? エゥーゴを裏切るということですか?」

 

「その通りだ。我々はアヴァロンと共にネオジオンに亡命する」

 

「なんで、そんなことを!?」

 

 さらに一歩前に進んだライセイに銃が向けられる。

 

「ライセイ少尉、控えろ。他の者もだ。身の安全は保証されている。いつも通り命令に従え」

 

「本気ですか?」

 

「でなければ、このようなことはしない。ネオジオンへの亡命者は、この艦内に複数いる。下手な動きを見せれば、すぐに分かるぞ?」

 

 カイムは周りをぐるりと見て言うと、最後にライセイを真っ直ぐ見据えた。

 

「ライセイ少尉。艦長がお呼びだ。艦長室に行くように。他の者は持ち場に戻れ」

 

 銃をチラつかせた兵士には抵抗はできないと判断したのか、乗組員達は持ち場へと戻っていった。

 ライセイも指示に従い、艦長室へと向かう。通路ですれ違う者達の表情には不安の色が浮かんでいた。

 ネージュもきっと不安に思っているだろう。どうしてこんなことになってしまったのか。

 

 アヴァロン内の多くの者達が考えているであろう疑問に悩まされながら、艦長室のドアのブザーを鳴らす。

 

「ライセイ少尉か?」

 

「はい」

 

「中に入りたまえ」

 

 ドアのロックが解除されると、ライセイは艦長室の中へと入った。

 艦長室の中は非常に質素なものだ。執務用の机に、応接用の机とソファがある程度で調度品の類はない。

 その応接用ソファにフォルストは座っていた。

 

「かけたまえ」

 

 フォルストが自分の対面のソファに座るように促す。

 ライセイは頷いて、ソファに座った。艦長と2人きりの状況。

 もしここで艦長を捕らえることができたら、この亡命劇は終わるのか。

 

 考えたが、答えはNOであった。カイムの言ったことが正しければ、他にも裏切り者がいると言うことだ。

 今、下手に動いても事態を悪化させるだけだろう。

 ぐっとライセイは堪える。

 

「ネージュから聞いた。君に自分の血筋のことを言ったそうだな」

 

「……はい」

 

「ネージュの言ったことは事実だ。そして、ネージュは私の子供ではない。自分語りになるが、少し聞いてもらえるかな?」

 

 聞く他にない状況にライセイは頷いた。

 フォルストは遠い目をして語り出す。

 

「あの子の母親と出会ったのは、一年戦争でジオンが敗北した直後だ。私は当時、輸送艦の艦長をしていた。地球連邦に負けた日、私はサイド3を離れようとするもの達を大勢乗せたのだが、その中にあの子の母親がいた」

 

 フォルストは襟元を緩めて、続ける。

 

「私は早くに妻を亡くしていてね、子供も一年戦争て失ってしまっていた。そんな私の気持ちをどうやって察したのか、優しく声を掛けてくれたのが彼女だった。だが、彼女もまた先立ってしまったがね」

 

「その方がザビ家の方だったんですか?」

 

「いや、違う。彼女は名家の末娘ではあったが、ただの女性だよ」

 

「では、本当の父親がザビ家の?」

 

 ライセイの問い掛けにフォルストは口を重くした。

 

「あの子の父親は……。いや、君に語りたかったのは、そんなことでは無い。私が話したいのは、ネージュの事だ」

 

「ネージュ。そうですよ、ネージュはこの事を知っているんですか? ネオジオンに亡命するだなんて?」

 

「知っている。知っていて協力してくれているのだ。あの子をジオンの新たな旗印とする計画にな」

 

 そう言ったフォルストの目は冷静なものであった。

 

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