機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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対峙

 緊急警報が鳴り響くウイントフックのMSデッキでは、発進の準備が行われていた。

 艦上に姿を見せたガンダムMk-Ⅲはカタパルトに足を乗せると、前傾姿勢になる。

 モニターを見るゲイルの表情は強ばっていた。緊張ではない。困惑によるものであった。

 

 通信によれば、アヴァロンはネオジオンのエンドラ級巡洋艦と並走しているということだ。

 アヴァロンはこちらの通信には応じないらしく、ゲイル達に下された命令は偵察任務であった。

 アヴァロンの今の状況が分からないからであろう。

 

 アヴァロンがネオジオンに拿捕された可能性もあれば、逆にエンドラを拿捕していることもありえるのだ。

 ゲイルは最悪なケースである、裏切りについては考えないようにしていた。

 連絡ができない状況なだけだと自分に言い聞かせていたが、今の状況を見せられると、嫌でも裏切りという言葉が頭にチラついてしまう。

 

 きっと大丈夫だ。裏切りなんかあるはずがない。

 自分に言い聞かせたゲイルは、オペレーターからの発進の指示に従う。

 

「ゲイル・クガ。ガンダムMk-Ⅲ、出る」

 

 カタパルトのロックが外れると、ガンダムMk-Ⅲは猛烈に加速した状態で宙に飛んだ。

 本来であれば後続を待たなければならないが、ゲイルはスラスターを噴射させ、アヴァロンへと急行する。

 オペレーターからの通信が入るが知ったことではない。

 

 今、アヴァロンに何が起きているのか。浮かぶ裏切りという言葉を必死に振り払いながら、ガンダムMk-Ⅲは更に加速をした。

 

 ◇

 

 アヴァロンに響き渡る緊急警報を、ライセイはプロトデルタのコクピット内で聞いていた。

 MSに乗っているのはライセイとクラウスだけで、シンリー、ウォレン、ロックは待機を指示されている。

 ライセイとクラウスがMSに乗っているのは、フォルストの命令によるものであった。

 

 接近する艦を追い払え、という命令で、下手な行動をすればアヴァロンに危険があるというものだ。

 その命令にライセイは従うしかなかった。どうしてこんなことに。

 何度も自問するが答えは出ないままMSデッキのハッチが開くと、ライセイはカタパルトデッキへと向かう。

 

 横を見れば併走するエンドラ級巡洋艦ハイドラの姿があった。

 主砲は全てアヴァロンに向いており、何かあればすぐに撃沈することができる状態である。

 艦全体が人質になっている状況で、ライセイにはこの事態を好転させる案は思いつかないでいた。

 

 オペレーターからの発進指示に従い、プロトデルタは宇宙を舞う。

 後方から迫る艦から光が飛び立つのを捉えたライセイは、後続のクラウスを待たずに加速した。

 味方を追い払う方法など考えたこともなかったライセイには、対話以外の選択肢が浮かばなかったのだ。

 

 相対距離が縮まると、次第に機影がハッキリしてきた。

 そして、モニターに識別コードが表示されると、ライセイは驚愕する。

 ガンダムMk-Ⅲ。ゲイルの乗っていたMSであった。

 

 ◇

 

 ゲイルはモニターに捉えたプロトデルタを見て、通信のチャンネルをオープンにした。

 

「ライセイ! 聞こえているなら、返事をしろ!」

 

 返答がないまま、更に距離が縮まっていった。

 焦りが顔に滲むゲイルは声を大にする

 

「ライセイ! ライセイなんだろう!?」

 

 必死に問い掛けるとか細い声が返ってきた。

 

「兄さん」

 

「ライセイ! 無事なのか!? 何があったんだ!?」

 

「兄さん、こっちに来てはダメだ!」

 

 思わぬライセイの言葉にゲイルは急制動を掛ける。

 プロトデルタは手を大きく広げて、これ以上ゲイルが近づくのを拒む。

 戸惑うゲイルが言う。

 

「ライセイ? どういうことだ? 一体、何があったんだ?」

 

「兄さん、引き返して」

 

「何を言っている? 何があったか教えてくれ!」

 

 声を荒らげるゲイルに、ライセイは訴えかけるように返す。

 

「お願いだよ、兄さん! このままじゃ、皆が不幸になってしまう!」

 

「だから、何を言っている! 訳が分からない!」

 

「アヴァロンはネオジオンに亡命したんだ!」

 

 ライセイは涙混じりの声で叫ぶと、声を殺して泣く。

 一番予想したくなかったことが事実だと知ったゲイルは言葉を失った。

 そのとき、2筋の大きなビーム光がガンダムMk-Ⅲの横を走る。我に返ったゲイルはビームの射線を辿ると、そこには2連装メガビームガンを構えたリックディアスⅡがいた。

 

「ライセイ少尉、余計なことは言わなくていい。ゲイル中尉、今のは警告だ。引いてもらいたい」

 

 冷静な声音で言うクラウスにゲイルが噛みつく。

 

「余計なことだと!? 分かっているのか? 亡命だぞ!?」

 

「分かっているから警告をしているんだ。昔の仲間を撃ちたくはない」

 

「分かっているだと? まさか、お前?」

 

 確信めいたゲイルの言葉に、クラウスが言い放つ。

 

「ああ。俺も亡命の賛同者だ」

 

「貴様!」

 

 スラスターを煌めかせて、リックディアスⅡに迫るガンダムMk-Ⅲ。

 ビームライフルの照準を合わせようとすると、射線上にプロトデルタが立ちふさがる。

 

「ライセイ!?」

 

「兄さん、ダメだ!」

 

「裏切り者だぞ!?」

 

「分かってる! でも、アヴァロンには裏切者じゃない人がいっぱいいるんだ! 兄さん達が引かないと、撃たれるかもしれないんだ」

 

 アヴァロンの乗組員が人質にされていることを知ったゲイルは、アヴァロンと並走するハイドラを見た。

 至近距離から狙われているアヴァロン。もし撃たれれば、なすすべもなく落ちるのは確実だ。

 ネオジオンがどのような手に出るか分からない状況に、ゲイルも迂闊に動けなくなった。

 

 歯噛みするゲイルにクラウスが言う。

 

「そうだ。それがお互いのためだ。後続の者にも伝えろ。俺達には人質がいるとな」

 

「くそっ!」

 

 裏切者は一部の者達だけで、他の大勢は亡命に巻き込まれた味方だ。

 その味方を殺すようなことはできない。身動きが取れないゲイルにライセイが言う。

 

「兄さん、ここは引いて。そうしたら、アヴァロンは大丈夫なんだ」

 

 説得に折れたようにガンダムMk-Ⅲはビームライフルを下げた。

 うなだれたゲイルは拳を握って、コンソールに怒りをぶつける。なんでこんなことに。

 何もできない自分に悔しさがこみ上げる。

 

 嘆きの言葉をゲイルがこぼそうとしたとき、センサーが急接近する熱源に反応した。

 識別信号はネオジオンのものだ。高速で接近する機影を捉えたゲイルは反射的に距離を取った。

 モニターにズームで映し出されたのは、ダークグレーで塗装されたザクⅢ改。

 

 ローマン・ローランドの愛機だ。

 

「見つけたよ! ガンダム!」

 

 無線から入ったローマンの声は嬉々としたものであった。

 

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