機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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海賊の流儀

 急接近するザクⅢ改に気づいたゲイルは、スラスターを噴射して後方へと下がりつつビームライフルを構える。

 それと同じくザクⅢ改も最高速度で突き進みつつ、ビームライフルの銃口をガンダムMk-Ⅲに向けた。

 同時に発射されたビームはぶつかり合うと、眩い光を放ち微粒子となって宇宙に散る。

 

「やるじゃないか!」

 

「邪魔をするな!」

 

 距離を取ろうとするゲイルに対し、ローマンは限界ギリギリまで速度を上げて接近する。

 ザクⅢ改の足を止めるべく、ゲイルはビームライフルを2射した。

 走るビームはザクⅢ改に迫る。だが、バーニアを調整して軌道を変えられるとビームはザクⅢ改の傍を抜けていった。

 

 距離を取ろうと動くガンダムMk-ⅢをザクⅢ改が追う展開となる。

 ゲイルは時折振り返りながらビームを発射するが、的を絞らせないザクⅢ改の動きによって捉えることができないでいた。

 徐々に距離が詰まってくると、ゲイルは攻めに転じたい気持ちが生ずる。

 

 ゲイルは己の欠点が顔を出そうとしていることに気づけないでいた。

 それだけ、ザクⅢ改に乗るローマンのプレッシャーが強いのだ。

 ジリジリと追い詰められる感覚がゲイルの平常心を奪おうとした。

 

「やめろ!」

 

 ライセイの叫びと共にビームが一筋宙を穿った。

 制動を掛けたザクⅢ改と、距離を取ることができたガンダムMk-Ⅲ。両パイロットの視線がプロトデルタへと向いた。

 

「兄さん! 逃げて!」

 

 プロトデルタがビームライフルの照準をザクⅢ改に向けると、無線からローマンの低く笑う声が聞こえた。

 

「美しき兄弟愛だねぇ。でも、良いのかなぁ? アヴァロンがどうなるか分かってる?」

 

「そうだ。ライセイ少尉、アヴァロンを守る使命を忘れるな」

 

 クラウスの言葉にライセイは発射ボタンに掛けつつあった力を抜く。

 悔しさで顔を歪めるライセイ。その時、通信が入った。

 

「ゲイル! 何をやっているんだ!」

 

 ウイントフックから発進した後続のダンの声であった。

 

「あ~あ、来ちゃったかぁ」

 

 ダンのシュツルムディアスに気づいたローマンが肩をすくめて言う。

 更に、その後方からはアオイの乗るシュツルムディアスが迫って来ていた。

 

「さぁて、どうしようかなぁ」

 

 ローマンの視線がガンダムMk-Ⅲへと向く。

 まだまだ遊び足りない。もっと俺の力をぶつけさせろ。

 内から湧き上がる熱に身を焼かれる思いのローマンは言う。

 

「ガンダムのパイロットさん、聞こえる?」

 

 応答を求められたゲイルは躊躇しつつ応える。

 

「ああ、聞こえる」

 

「1つ提案があるんだけどさぁ?」

 

「提案?」

 

「俺と決闘しようよ。そっちが勝ったらアヴァロンを解放してあげるよ」

 

 言葉を失うゲイル。だが、ローマンの表情は真面目そのものであった。

 決闘などこのご時世聞いたこともない。その上、ゲイルが勝ったらアヴァロンを解放するなど何故ローマンは提示したのか。

 確認するように問いかける。

 

「決闘だと?」

 

「俺はガンダムと戦いたいんだよ。邪魔がいると楽しめないじゃん?」

 

「戦争を楽しんでいるのか、お前は?」

 

 理解が及ばない相手にゲイルは苛立ちを募らせた。

 命のやり取りの場を楽しむなど、どうかしている。ゲイルの考えはまっとうなものだ。

 だが、それはローマンには通じなかった。

 

 ローマンの口角がニッと上がる。

 

「俺は楽しいと思うことしかしないよぉ。楽しくないことをしても人生詰まんないじゃん?」

 

 くっくっと笑ったローマンにゲイルは言い知れぬ感情を覚えた。

 一体、この男はなんなのだ。理解の範疇を超えている男が確認の言葉を発する。

 

「で、どうするの? まあ、嫌だってんなら、ハイドラに積んでいるMS全機出していいよ。あと弟くん達も合わせたら、数ではそっちが圧倒的に不利だけど?」

 

「くっ」

 

 ゲイルは苦渋の表情を浮かべる。ハイドラから現れたのは、このザクⅢ改のみで他の戦力があると考えて間違いないだろう。

 それにアヴァロンを人質に取られたライセイは敵側に回らずを得ず、クラウスは敵側の人間であるため更に形勢は悪い。

 後続のダンとアオイ、シマンが戦闘宙域に入ってきた。3機に向けてゲイルは言う。

 

「ダン、アオイ、シマン、戦闘はまだするな。ここは俺が戦う」

 

「ゲイル!? 何を言ってるんだ? 敵の言うことを信じるのか?」

 

「今の状況では、逃げるか決闘を受けるしか道がない。可能性がある方に俺は賭ける」

 

 的を得た言葉だったのか、ダンは口を閉じて顔を渋くした。

 

「ゲイル、絶対に勝ってね」

 

 アオイは言うと、指を組んで祈るようにガンダムMk-Ⅲを見る。

 

「ああ、俺は勝つ。勝って帰るから安心しろ」

 

 言うと視線をライセイのプロトデルタへと向ける。

 

「ライセイ。俺が勝ってアヴァロンの人達を助ける。お前を助けてみせるから安心しろ」

 

「兄さん……。信じてるよ」

 

「任せろ」

 

 ゲイル達の会話を黙って聞いていたローマンが催促の言葉を放つ。

 

「そろそろ良いかな?」

 

「待たせて悪かったな。決闘に応じる」

 

「良い答えだよ。さて、始めようとするか。んじゃ、カウントは弟君に頼むとしようか?」

 

 話を振られたライセイは眉間にしわを寄せた。ローマンの嫌がらせと感じたのだ。

 だが、兄はきっとローマンに勝つ。こんな奴に負けない。兄の勝利を信じ、カウントを始めた。

 

「スリー、ツー、ワン、ゴー!」

 

 ゲイルとローマン。両者目を見開き、スラスターを輝かせて互いの間合いへと入る。

 アヴァロンを賭けた決闘が今、始まる。

 

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