機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
ザクⅢ改は海ヘビに電流を流したまま、ビームサーベルを構えるとスラスターを噴射しガンダムMk-Ⅲに接近する。
感電するゲイルには迫りつつある死を認識することすらできなかった。
焼き殺されるのが先か、ビームサーベルによって蒸発させられるのが先か。死を待つ身となったゲイルにライセイの声が響く。
「やめろぉ!」
プロトデルタのビームライフルから射出されたビームがザクⅢ改とガンダムMk-Ⅲの間を貫いた。
減速したザクⅢ改に突撃するプロトデルタ。ビームサーベルを抜き放つと、海ヘビのワイヤーを切断した。
電撃から解放されたゲイルは朦朧(もうろう)とする意識の中、ライセイの名を呼ぶ。
「ライ……セイ……。やめ……ろ」
「やらせない! 兄さんは僕が守るんだ!」
直情的にビームを撃つライセイの戦い方は普段のものとは違った。
冷静さを欠いた攻撃はローマンに通じることはなく、逆に反撃を食らうこととなる。
ザクⅢ改のビームライフルから放たれたビームがプロトデルタの左肩に突き刺さった。
「ぐっ!?」
爆発の衝撃に苦痛の声を上げたライセイだが、目には熱い魂が宿ったままだった。
ビームライフルを乱射するが回避行動を取ったザクⅢ改を捉えることはできない。
ザクⅢ改の口に光が灯る。口から放出されたビームはプロトデルタの左足を焼き切った。
姿勢制御を失いつつあるプロトデルタだが、それでもライセイから戦う意思を奪うことはできない。
兄のために命を投げ出す。その覚悟の言葉を発する。
「兄さんは僕の命に代えても守る!」
その言葉を無線で聞いたローマンはふふっと笑う。
「素敵な兄弟愛だねぇ。じゃあ、ここで仲良く死のうか」
スラスターの輝きが増すと、ザクⅢ改が攻めに転じた。
プロトデルタに猛進するザクⅢ改はビームサーベルで切りかかろうとする。
そのとき、プロトデルタの背中にリックディアスⅡが取りつくと、ビームを収束する前のビームサーベルを突き付けた。
「そこまでだ。これ以上は見過ごせない」
「クラウス大尉! 邪魔をしないで!」
「良いか、よく聞け。お前はアヴァロンを見捨てる気か?」
「くっ!?」
ライセイに戸惑いが生まれた。ザクⅢ改は速度を緩めると、プロトデルタのコクピットにビームサーベルを向ける。
「言い残したい言葉があるなら聞くよ?」
「……兄さん、生きて」
「最後まで兄弟思いだねぇ。お兄ちゃんにはすぐにまた会えるからさ。安心して逝っちゃいなよ」
ビームサーベルを徐々にコクピットに近づけるローマン。じわじわと装甲が焼かれていく。
死神の足音を聞くライセイの耳に希望の声が聞こえた。
「ゲイル! 返事をしろ! ゲイル!」
ダンのシュツルムディアスがガンダムMk-Ⅲを抱えるようにして、ライセイ達から遠ざかっていく。
ライセイがローマンと戦っている隙を突いて、ゲイルを救出したのだ。
去っていくダンのシュツルムディアスをカバーするように動いた、アオイのシュツルムディアス。
追撃の構えを取ろうとしたザクⅢ改を高出力のビームが襲う。
ローマンが素早い反応で避けたビームは、ネモスナイパーのロングスナイパーライフルから放たれたものだった。
出鼻をくじかれたローマンはゲイル達を追うようなことはせず、視線をリックディアスⅡに向ける。
「なんか気分が変わっちゃったなぁ。その子のことは、そっちでお仕置きしといてよ」
「分かった。しかるべき処分はする」
「はいは~い。えっと、ライセイだっけ?」
ローマンの問いかけに、ライセイは険しい顔をし返事はしなかった。
「素敵な兄弟愛だったよ。家族ってのは大事にしないとね。んじゃ、俺は帰るから」
そう言うと、ザクⅢ改はハイドラへと帰投した。
その後姿を見たライセイはシートにもたれ掛かり、ゲイル達の母艦であるウイントフックに視線を動かす。
ウイントフックは回頭して後退しているようだ。無事だろうか。ゲイルの身を案じるライセイにクラウスが言う。
「ライセイ少尉。覚悟はできているだろうな?」
「はい」
「ならば良い。アヴァロンに戻るぞ」
プロトデルタを掴んだリックディアスⅡは、そのままアヴァロンへと向かう。
ライセイの視線はウイントフックが見えなくなっても、その姿を追い続けた。