機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン 作:アラタナナナシ
コロンブス級輸送艦がウイントフックに接舷すると、乗組員総出で補給任務に取り掛かった。
輸送艦に乗り込んだゲイルとアオイはMSデッキへと向かうと、そこには大型のビーム兵器であるメガ・バズーカランチャーが立て掛けられている横に、トリコロールカラーのMSが1機。
そのMSを見たアオイが息を呑んだ。
「ZⅡ(ゼッツー)。量産されていたのね」
ZⅡはZガンダムの発展型として開発された機体である。
コストの高いZガンダムと比べて、単純な変形機構を採用したZⅡはコスト面が優れていたこともあり、少数生産されたのだ。
火力もZガンダムに劣らず、高出力を誇るメガビームライフルを装備しており、クレイバズーカを装備できるなど単機での戦闘能力はガンダムMk-Ⅲを上回るものである。
ハイスペックなMSであるZⅡの、その1機がゲイル達の目の前にあるのだ。
「すごい機体なのか?」
「今のトップクラスの性能と言えるわ。変形機構があるから機動力も、そんじょそこらのMSでは対抗できないでしょうね」
「MA形態があるということか」
アオイの話を聞いたゲイルは、拳をギュッと握りしめた。
機動力の面で、あのザクⅢ改に後れを取っていたからだ。火力も高ければ機動力も高い。欠点のないMSのように思えるが、問題が1つあった。
「MA形態の操縦は難しいのか?」
エゥーゴのMSでは可変機は量産されておらず、一般の兵士が乗ることは滅多になかった。
MSシミュレーターでも使用したことがない機体にゲイルは不安を抱く。そんなゲイルにアオイが優しく言う。
「私が経験あるから大丈夫。シミュレーターも使えば、ゲイルならすぐに乗りこなせるはずよ」
「そうか。このZⅡには俺が乗って良いのか?」
「あなたが乗らなくて誰が乗るのよ? あなた以外に、あの化け物と戦えるパイロットはいないわ」
ローマンの操縦技術とザクⅢ改のスペックの高さに対抗できるMSは他にない。
新たな愛機を見るゲイルの瞳に熱い思いが宿る。次は負けない。アヴァロンの元へ向かえば、あのザクⅢ改は必ず出てくる。
それを倒さなければ、アヴァロンの乗組員を助け出すことはできないのだ。
「ねぇ、ちょっとZⅡに乗ってみない? どんな感じなのか見てみたいの」
「コクピットに入るだけなら、問題ないだろうな」
そういうと、ゲイルとアオイはZⅡのコクピットを開けて2人で中に入った。
シートに座ったゲイルの上にアオイが乗っかると、ヘルメットを取って髪をほどく。
髪をかき分けるしぐさにゲイルは珍しく女の色気を感じた。
すると、アオイがゲイルのヘルメットに手をかけて、ゆっくりと取る。
「なんだ、急にヘルメットを取ったりして?」
「良いじゃない。こっちの方が、より近い感じがするでしょう?」
「まあ、そうだな」
納得したゲイルに、アオイがもたれ掛かった。
息遣いだけがコクピットの中に響く。言葉を発しない2人。アオイがゲイルを見上げると、ゆっくりと顔を近づけた。
それが何を意味しているのか。ゲイルは拒否することはなく、アオイの口づけを受け入れた。
長い口づけが終わると、アオイが小さく笑う。
「逃げるかと思ったわ」
「断る理由がない。だが、本当に俺なんかで良いのか?」
「もう、朴念仁なんだから。あなただから良いの。女にここまで言わせるのもどうかと思うけど?」
不満そうに頬を膨らませたアオイを見て、今度はゲイルから口づけをした。
そのとき、コクピットのハッチが開く。
「おい、ゲイル。中で何を。んん!?」
ダンが驚きの声を上げると、その後ろからシマンがコクピットをのぞき込んだ。
「ちょっと、何2人でイチャついているんですか?」
慌ててアオイとの口づけを切り上げたゲイルが言う。
「なんでもない。本当になんでもない」
「ちょっと? なんでもないって、どういうことよ?」
「あ、いや、なんでもない、訳じゃない」
慌てふためくゲイルにアオイが不満そうに言うと、ダンがからかい始めた。
「ゲイル中尉は部下をたらしこんだのか。シマン君、どう思う、これ?」
「はっ! 上官の地位を乱用したもので、非常にけしからんことだと思います!」
「黙れ、2人とも! さっさと持ち場に戻れ」
ゲイルが一喝すると、2人はニヤニヤ笑いながらZⅡのコクピットから離れていった。
安堵の息を吐くゲイルの頬をアオイがつねる。
「なんでもなくないわよね?」
「ああ、なんでもなくないな」
「じゃあ、私達って、どんな関係かしら?」
アオイの意地悪な質問に逡巡したゲイルは穏やかに言う。
「恋人。ってのはどうだ?」
「分かってるじゃない。じゃあ、もうちょっとだけ2人でいましょう?」
そういうと再びZⅡのコクピットのハッチが閉じられる。
2人が戻ったときには、ウイントフック中に話が広まっていたのは言うまでもなかった。