機動戦士ガンダムZZ外伝 亡命のアヴァロン   作:アラタナナナシ

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悲劇

 ディクセル艦隊の旗艦、グワンバン級戦艦グワンザムをモニターで捉えたヘックスは隣であごひげを擦るローマンに言う。

 

「やっと着いたな。厄介な仕事だったぜ、まったく」

 

「そうだねぇ。まあ、アクシデントは付き物だから」

 

「俺はまだ許してないからな?」

 

 ギロりとローマンを睨んだヘックスは、先日のガンダムMk-Ⅲとの決闘のことを言っていた。

 そんな視線など何処吹く風と言った具合にローマンは軽く笑い声を上げる

 

「まあ、勝ったから良いじゃない。俺が負けるって思っちゃったわけ?」

 

「お前が負けるところなんて想像できないが、万が一ってことがあるだろう?」

 

「嬉しい言葉、言ってくれるじゃない。万が一ってのが余計だけどね」

 

 低く笑うローマンに冷めた視線を送ったヘックスにオペレーターが声を掛ける。

 

「艦長、グワンザムから通信です」

 

「繋げ」

 

 モニターに映ったのはギルロードではなく、ディクセルであった。

 ハイドラにアヴァロンの確保を命じたのがディクセルであったことから、おかしなことでは無いが何か引っ掛かりをヘックスは覚える。

 

「予定よりも1日遅くなったようだが、何があったのだ?」

 

「エンジンが不調だったんだよ。酷使してきたからねぇ。これでも急いだ方なんだよ?」

 

 答えたのはローマンであった。

 相変わらずの物言いだが、それをディクセルは気にしている様子はなく、早々に話題を変える。

 

「アヴァロンの確保は上手く行ったようだな」

 

「ちょっとアクシデントはあったけどねぇ。ま、被害は出てないよ」

 

「それならば良い。ハイドラはアヴァロンをグワンザムに誘導した後、艦隊に合流せよ」

 

「はいは~い。了解だよぉ」

 

 通信を終えるとヘックスが首を傾げて言う。

 

「なんで、こんなに早く誘導するんだ?」

 

「ディクセル様がお急ぎなようだから、何かあるんだろうけど」

 

「何か、か。じゃあ、俺達の仕事はアヴァロンをグワンザムに届けるまでって、ことか」

 

「そうだね。さっさと終わらせて次の仕事に取り掛からないと」

 

「次の仕事か。お前にしては、珍しくやる気じゃないか?」

 

 ニヒルな笑みを浮かべて言ったヘックスに、ローマンは笑みを見せるだけで返事はせず、遠くに目を向ける。

 ハイドラの行先にはグワンザムを始めとして、エンドラ級が2隻、ムサイ級が3隻というディクセル艦隊があった。

 MS総数40機という大艦隊のトップであるディクセルが何を目論んでいるのか。

 

 ローマン達には知る由もなかった。

 

 

 ギルロードはグワンザムのMSデッキにいた。

 MS2機分はあろうほどのスペースを取っている、巨大MSに目を向けていた。

 白を基調としたMSは並ぶガザDよりも2倍近い全長をほこり、肩と背中に大きな翼のようなものが付けられていた。

 

 MSの名はクィンマンサ。

 ニュータイプ専用機として作られた、このMSは全身に多数のメガ粒子砲を備えているだけでなく、ファンネルも多数搭載されており、1機で戦局を変えうる力を有していた。

 だが、求められる技量はその分高く、並のパイロットでは扱いきれないものである。

 

 このMSに乗ることとなったギルロードであるが、クィンマンサの力を十分に発揮できないでいた。

 ギルロードの強化人間としての限界なのか、ファンネルを十分に活かしきれないのだ。

 ファンネルを完璧に扱えないようでは、クィンマンサの戦力は半減してしまう。

 

 焦れば焦るほどクィンマンサに振り回されるギルロード。

 訓練を切り上げると自室に籠り、マニュアルに目を通す。

 もう何度読んだことか。読んだところで、ファンネルを使いこなせるものでは無い。

 

 それはギルロード自身も分かっていた。

 だが、それでも何か掴めるかもしれないという淡い期待を捨てきれずにいる。

 そうして、マニュアルを見つめていると、部屋にブザー音がなった。

 

「ギル、開けてもらえますか?」

 

 セティの声を聞き、ギルロードは部屋のドアのロックを解除した。

 部屋に入ってくるセティは、手を後ろで組んでいる。

 

「ギル、時間がありません。私の言う通りにしてください」

 

「急にどうしたんだ、姉さん?」

 

「いいから聞いてください。あなたはこれから、ディクセル様から何を言われても全てに、はい、と答えてください。他に喋ってはなりません」

 

 矢継ぎ早に言うセティにギルロードは困惑気味に返す。

 

「私はディクセル様の命令ならば、何でも聞くつもりだ。別に言われなくとも」

 

「違います。あなたは物言わぬ人形の振りをするのです。でなければ、あなたは」

 

 セティは辛そうな表情を見せると、後ろで組んでいた手を離す。

 その手には注射器が握られていた。

 

「私はあなたにこれを打つように命令をされました。これはあなたの意識を奪い、あやつり人形にする恐ろしい薬です」

 

「命令? 一体、誰が?」

 

「ディクセル様です。時間がないのです。私はあなたにこれを打ったと報告します。あなたは私の指示に従って」

 

 そう言いかけたとき、ドアが開いた。

 そこに立っていたのは、ディクセルと2人の兵士だ。

 

「セティ、ここの部屋の音声は筒抜けなのだよ。非常に残念だ。君のような有用な部下に裏切られるとは」

 

「ディクセル……」

 

 悔しさで顔を歪めるセティは腰に手を回すと、銃をホルスターから抜く。

 その瞬間、兵士の1人が持つライフルが火を噴いた。

 セティの胸を銃弾が貫くと、パッと鮮血が舞う。その血がギルロードの頬に当たった。

 

「姉……さん?」

 

 無重力空間のため、セティの体は宙に浮いたまま力なく漂う。

 

「ギ……ル……」

 

 消え入りそうな声で言うと、ゴホッと血を吐く。

 そうして動かなくなったセティから死を感じ取ったギルロードが慟哭した。

 

「姉さん! 何で!? ディクセル様、何故、このようなことを!?」

 

「私を裏切った者の末路だよ。ギルロード、お前は私を裏切らないと信じている」

 

「姉さんを殺しておいて、何を!」

 

 ギルロードがセティの握る銃に手を掛ける。

 それを見越したように2人の兵士がギルロードを取り押さえた。

 暴れるギルロードを冷たい視線で見るディクセルが言い放つ。

 

「セティはお前の姉ではない。姉の役目を演じていたにすぎない」

 

「うるさい! 姉さんを、よくも!」

 

「やれやれ。強化人間はこれだから、扱いづらい」

 

 そう言うと、セティの手から注射器を抜き取るって、ギルロードの首筋に当てた。

 

「これからの活躍を期待しているよ、ギルロード」

 

 突き立てられた針から薬が注入されると、ギルロードは徐々に意識を失っていく。

 

「ね……え……さん」

 

 薄れいく視界に映ったのは最愛の姉の死に顔であった。

 

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